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多価不飽和脂肪酸と糖尿病との関連について(2019年のメタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
オメガ3系脂肪酸と糖尿病との関係.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
食事由来の多価不飽和脂肪酸と糖尿病との関連についての論文です。

この2日間の記事でご紹介したように、
多価不飽和医脂肪酸、特に青身魚の脂の成分である、
オメガ3系多価不飽和脂肪酸を多く摂ることは、
血液中の中性脂肪を低下させ、
心血管疾患のリスクを低下させます。

この中性脂肪の高値と心血管疾患リスクの増加は、
同時に2型糖尿病の特徴でもあります。

それでは、多価不飽和脂肪酸を多く摂ることで、
糖尿病の予防に繋がったり、
病尿病のコントロールの改善に繋がる効果が、
期待出来るのでしょうか?

その点については、
あまり明確なことが分かっていません。

糖尿病と心血管疾患との関連は深く、
多価不飽和脂肪酸の摂取が糖尿病の発症リスクの低下に結び付いた、
という報告は存在しています。
その一方で多価不飽和脂肪酸は、
高カロリーの脂質であることも事実であり、
そのため糖代謝を悪化させ、
空腹時血糖を増加させるという報告も、
また存在しているのが実際です。

果たしてどちらが正しいのでしょうか?

今回の研究では、
これまでの臨床データを俯瞰してまとめて解析する、
システマティックレビューとメタ解析という手法で、
この問題の現時点での検証を行っています。

これまでの83の主だった臨床試験のデータを解析した結果として、
オメガ3系多価不飽和脂肪酸の摂取は、
糖尿病の発症リスクには有意な影響を与えず、
インスリン抵抗性や空腹時血糖などの糖代謝の指標に対しても、
有意な影響を与えていませんでした。
ただ、摂取量が1日4.4グラムを超えると、
血糖上昇のリスクは高まる傾向が認められました。

αリノレン酸、オメガ6系多価不飽和脂肪酸、
トータルの多価不飽和脂肪酸の摂取と糖尿病と診断されるリスクとの間には、
明確な関連は認められませんでしたが、
データの精度はそれほど高いものではなく、
糖代謝との関連については、
αリノレン酸の摂取量の増加が、
空腹時のインスリン濃度の増加と関連が見られる以外は、
明確な関連は認められませんでした。

また、良く指摘されることのあるオメガ3系と6系の脂肪酸の比率と、
糖尿病や糖代謝との関連についても、
明確な相関は認められませんでした。

このように、
多価不飽和脂肪酸の摂取量と、
糖尿病や糖代謝との間には、
少なくとも1日4グラムを超えない範囲においては、
明確な影響は認められないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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