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ビスフォスフォネートが寿命を延ばす、は本当か?(2019年メタ解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ビスフォスフォネートの寿命延長効果.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
骨粗鬆症治療薬の寿命延長効果についての論文です。

骨粗鬆症の治療薬、
特にこれまでのデータが最も豊富に存在している、
ビスフォスフォネートと呼ばれる種類の薬剤は、
閉経後の骨粗鬆症の女性に使用した場合の、
骨折予防効果は科学的に実証されています。

ただ、必ずしもこのタイプの薬は、
健康な骨を作るという薬ではなく、
人工的に骨をコーティングして、
骨が壊れることを抑えるという効果の薬なので、
一部の病的骨折や顎骨壊死などのリスクは増加して、
その長期使用を危惧するような見解もあります。

最近ビスフォスフォネートの臨床データにおいて、
骨折予防効果のみならず、
生命予後を改善したり、心血管疾患を減少させるといった、
付加的な効果があることを、
示唆するような報告があります。

2007年のNew England…誌に掲載された、
ゾレドロン酸(商品名ゾメタなど)というビスフォスフォネートの臨床試験では、
大腿骨頸部骨折の既往のある患者さんにおいて、
骨折リスクの低下のみならず、
総死亡のリスクを28%有意に低下させる効果が、
ゾレドロン酸に認められています。
一方で同時に行われた骨粗鬆症の患者さんに対するゾレンドロン酸の臨床試験では、
総死亡のリスクに差はついていませんでした。

2018年のNew England…誌に掲載された、
骨粗鬆症の基準には達しないレベルの、
軽症の骨量低下の女性を対象とした臨床研究では、
ゾレドロン酸の使用により心筋梗塞と乳癌のリスクが有意に低下していて、
総死亡のリスクは有意ではないものの、
35%低下する傾向を示していました。

このように、ビスフォスフォネート、
特にゾレンドロン酸には、
骨折予防の効果以外に、
心血管疾患や癌を予防したり、
生命予後を改善する効果があることを、
示唆するようなデータが存在しています。

ただ、この多くが製薬会社が主導する試験であり、
そのメーカーもノバルティス社ということになると、
「そう都合の良い話があるのかしら」と、
どうしても懐疑的にはなってしまいます。

今回の研究では、
これまでの骨粗鬆症の治療薬の効果についての、
主だった精度の高い研究データをまとめて解析するメタ解析の手法で、
この問題の検証を行っています。

これまでの骨粗鬆症の治療についての、
38の臨床試験に含まれるトータル101642名の患者データを、
まとめて解析したところ、
骨粗鬆症の薬による治療と、
総死亡のリスクとの間には、
有意な関連は認められませんでした。

このうちビスフォスフォネートの治療に関わる、
21の臨床データの解析では、
ビスフォスフォネートの使用と総死亡リスクとの間にも、
有意な関連は認められませんでした。

更には、このうちのゾレンドロン酸を対象とした、
6つの臨床データのみを解析しても、
トータルには総死亡リスクとの有意な関連は認められませんでした。

このように、
個別の臨床データでは、
確かにビスフォスフォネートの使用と、
総死亡リスクとの関連があるとするものもあるのですが、
今回のメタ解析では、
トータルにはそうした関連は認められませんでした。

従って、現状はビスフォスフォネートの効果は、
あくまで骨折予防において検討されるべきで、
それ以外の付加的な効果については、
現時点で立証されたものではないと、
そう考えておいた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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