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手術はランキング上位の病院で受けるのが良いのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ランキングと手術成績.jpg
2019年のJAMA Surgery誌に掲載された、
雑誌の病院ランキングと実際の手術成績を比較した、
面白い内容の報告です。

名医や病院のランキングが、
テレビや雑誌、ネットでも盛んに行なわれています。

テレビの神通力も、
昔と比べれば随分と小さなものになりましたが、
それでも一度バラエティ番組や情報番組などで、
「名医」や「名病院」として取り上げられると、
しばらくは「予約の取れない医師や病院」に、
なってしまうのは今でも普通のことです。

医療というのは公的な側面のあるもので、
誰にも等しく供給される体制になっているというのが、
皆保険制度における国の建前ですから、
本来はこうした人気による順位付け自体、
問題があるように思いますが、
誰も表立って文句を付けるということはないようです。

本に関して言えば、
名医を紹介するようなグラビア本の大部分は、
紙面の大きさによって法外な掲載料を取られるという仕組みのもので、
僕も何度か掲載のお薦めを受けたことがありますが、
丁重にお断りをしています。

ランキングというのは、
勿論それが公正かどうかはともかくとして、
何らかの基準によって選ばれていることは確かです。

ただ、たとえば手術数や患者数のようなものであれば、
一定の客観性はありますが、
それがあまりに少なければ良い病院とは言えないにしても、
多ければ多いほど良い病院、
というのもちょっと違うのではないか、
という気がします。

アメリカのUSニューズ&ワールド・レポートという雑誌は、
今ではネットのみの刊行ですが、
1983年から行っている大学ランキングが有名で、
最近ではこれも毎年行っている病院ランキングが人気です。

今回の研究はこの雑誌のランキングにおいて、
消化器内科と消化器外科におけるトップランクの病院と、
ランク外との病院をリストアップして、
腹腔鏡を活用した消化器手術の例数や予後を、
Vizient社という、医療施設と医療メーカーとの間で、
価格調整などを行うGPOと呼ばれるアメリカ特有の企業形態の、
トップ企業の1つのデータを活用して検証しています。

その結果、
有名雑誌のランキングでトップランクの病院は、
ランク外の病院と比較して、
年間症例件数は平均で3倍以上と多かったのですが、
院内死亡率や手術の合併症の頻度については、
有意な差は認められませんでした。
一方でトップランクの病院はランク外の病院と比較して、
入院期間は有意に長く、
掛かった医療費も有意に高くなっていました。

要するに人気のある病院では患者さんは多く集まり、
そのため症例数は多くなるのですが、
少なくともデータ上はランク外の病院と比較して、
良い手術が行われたとする根拠は乏しく、
入院も長くむしろ割高である可能性が高い、
ということになります。

これは医療の1つの側面を見ているだけのものですが、
ランキング自体トータルな評価とは言い難く、
僕の経験から言っても、
こうしたランキングに振り回されることは、
百害あって一利なし、
と言って過言ではないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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