妊娠性肝内胆汁うっ滞症に対するウルソデオキシコール酸の有効性 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のLancet誌に掲載された、
妊娠中に起こる肝臓の病気に対して、
経験的に使用されている薬の効果を、
厳密な方法の臨床試験で検証した論文です。
妊娠性肝内胆汁うっ滞症というのは、
妊娠の後期において、
胆汁が肝臓の中に溜まることによって、
血液中の胆汁酸が増加し、
それが早産や子宮内胎児死亡を引き起こすという病気です。
通常の肝機能の数値は比較的軽度の上昇に留まり、
皮膚のかゆみで気付かれることもあります。
血液の胆汁酸の測定が診断には不可欠ですが、
通常ルーチンで行う検査ではないので、
胎児の異常で初めて診断されることも多いという記載もあります。
この病気の治療のために、
国内外を問わず使用されているのが、
ウルソデオキシコール酸という、
胆汁の排泄促進や胆石溶解作用のある薬剤で、
人間の体内にも少量存在している胆汁酸の一種です。
副作用は少なく安全性の高い薬剤ですが、
その有効性についてはデータは少なく、
経験的に使用されている側面が多いのが実際です。
2012年に発表されたメタ解析の結果では、
胆汁酸の低下や皮膚のかゆみの改善については、
一定の効果が確認されましたが、
肝心の胎児の合併症や予後については、
明確な改善は確認されませんでした。
そこで今回の研究ではイギリスにおいて、
33カ所の専門病院で診断された妊娠性肝内胆汁うっ滞症の患者さん、
トータル605名をくじ引きで2つの群に分けると、
本人にも主治医にも分からないように、
一方はウルソデオキシコール酸を1日1000mg(日本の使用量は600mg)使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
お子さんの出生時まで継続してその効果を比較検証しています。
その結果、胎児死亡や早産、4時間以上の新生児集中治療室での治療、
を併せたリスクは、
ウルソデオキシコール酸使用群と偽薬群との間で、
有意な差は認められませんでした。
これをもってウルソデオキシコール酸によるこの病気の治療が、
有効性の全くないものとは言い切れませんが、
少なくとも全例に第一選択として使用している現状の治療指針は、
見直される必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医面談などで都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2019年のLancet誌に掲載された、
妊娠中に起こる肝臓の病気に対して、
経験的に使用されている薬の効果を、
厳密な方法の臨床試験で検証した論文です。
妊娠性肝内胆汁うっ滞症というのは、
妊娠の後期において、
胆汁が肝臓の中に溜まることによって、
血液中の胆汁酸が増加し、
それが早産や子宮内胎児死亡を引き起こすという病気です。
通常の肝機能の数値は比較的軽度の上昇に留まり、
皮膚のかゆみで気付かれることもあります。
血液の胆汁酸の測定が診断には不可欠ですが、
通常ルーチンで行う検査ではないので、
胎児の異常で初めて診断されることも多いという記載もあります。
この病気の治療のために、
国内外を問わず使用されているのが、
ウルソデオキシコール酸という、
胆汁の排泄促進や胆石溶解作用のある薬剤で、
人間の体内にも少量存在している胆汁酸の一種です。
副作用は少なく安全性の高い薬剤ですが、
その有効性についてはデータは少なく、
経験的に使用されている側面が多いのが実際です。
2012年に発表されたメタ解析の結果では、
胆汁酸の低下や皮膚のかゆみの改善については、
一定の効果が確認されましたが、
肝心の胎児の合併症や予後については、
明確な改善は確認されませんでした。
そこで今回の研究ではイギリスにおいて、
33カ所の専門病院で診断された妊娠性肝内胆汁うっ滞症の患者さん、
トータル605名をくじ引きで2つの群に分けると、
本人にも主治医にも分からないように、
一方はウルソデオキシコール酸を1日1000mg(日本の使用量は600mg)使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
お子さんの出生時まで継続してその効果を比較検証しています。
その結果、胎児死亡や早産、4時間以上の新生児集中治療室での治療、
を併せたリスクは、
ウルソデオキシコール酸使用群と偽薬群との間で、
有意な差は認められませんでした。
これをもってウルソデオキシコール酸によるこの病気の治療が、
有効性の全くないものとは言い切れませんが、
少なくとも全例に第一選択として使用している現状の治療指針は、
見直される必要がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。