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アガリスクエンターテイメント「発表せよ!大本営!」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アガリスク 大本営.jpg
シチュエーションコメディを一貫して上演し続け、
熱烈なファンも多いアガリスクエンターテイメントの新作公演が、
今下北沢の駅前劇場で上演されています。

作・演出の冨坂友さんは、
学校での君が代斉唱問題も、
ナチスドイツのユダヤ人問題も、
平気でシチュエーションコメディにしてしまい、
何らそこに特定の思想性を持ちこまない、
という離れ業を涼しい顔で行う新時代の劇作家です。

今回は日本が惨敗して、
その後の太平洋戦争の行く末を決定付けた、
ミッドウエイ海戦の結果を、
強引に改ざんして報道した、
悪名高い「大本営発表」の史実を、
これまた大胆にシチュエーションコメディ化しています。

一体どんなことになるのかしらと、
ちょっと危惧する思いもあったのですが、
実際に鑑賞してみると、
いつも以上に互いに反発する、
異なった意見をもつキャラクター達が、
「大本営発表」という1つのゴール(?)を目指して、
悪戦苦闘する姿が活き活きと描かれ、
人間の愚かしさと愛らしさと切なさとが、
いつも以上に感じられる作品に仕上がっていました。

まあ、大本営発表がゴールでいいのか、
というのはちょっとあるのですね。
三谷幸喜さんの「笑の大学」でも、
その辺はちょっと逃げてるでしょ。
最後に「戦争は良くないよ」という、
ステレオタイプなことを言うことで、
無難にまとめている、というようなところがありますね。
あの作品も、制約があるだけ、苦労があるだけ、
それをかいくぐろうと人間は燃える、
というところが肝にある訳で、
その背景はどうでもいいというのが、
「喜劇」としての立場だと思います。
笑えないものは喜劇としては余計なのです。
ただ、なかなかそこは徹底するのは難しいところだと思います。
冨坂さんはその辺りの割り切りが凄くて、
最初に前説で「戦争で日本が負けた、ということだけ覚えておいて下さい」と言い、
作品のオープニングで後の反省をチラと見せるだけで、
後は批評性や思想性を持ち込むことなく、
「大本営発表」を喜劇にすることだけを目指して、
徹底してその世界を遊んでいます。

批判的な意見もあるでしょうが、
個人的にはシンプルに凄いと思いました。

数年前と比べると役者さんのレベルが上がっていて、
安心してその世界に身を委ねることが出来るようになっています。
セットも巧みな配置に出来ていてセンスがありますし、
後半テンポを上げてクライマックスの大本営発表本番に向け、
グイグイ盛り上がる辺りは小劇場演劇の快感がありました。
役者さんは皆さん良かったのですが、
特に今回主役と言って良い活躍の津和野諒さんが、
抜群の力量と存在感で舞台をまとめていました。

以前は大倉孝二さんのコピーみたいな感じもあった、
津和野諒さんですが、
今回の熱演に関しては、
間違いなく今の大倉孝二さんを超えていました。

そんな訳で非常に見応えのあった本作ですが、
正直なところを言えば、
かなり窮屈な設定であったことは確かで、
もっと自由度の高い設定であった方が、
冨坂さんの劇作とこの劇団の楽しさは、
もっと開放されるのではないか、
というようにも感じました。

次回も期待を込めて待ちたいと思います。

頑張って下さい!

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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