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加工肉の摂取と慢性閉塞性肺疾患(COPD)リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COPDと加工肉.jpg
2019年のE Clinical Medicine誌に掲載された、
慢性閉塞性肺疾患(COPD)と、
加工肉の摂取量との関連についての論文です。

COPDというのは、
以前の肺気腫と慢性気管支炎を併せたような概念で、
主に喫煙によって起こる進行性の肺の変化のことです。
ただ、喫煙以外を原因とするものも、
一部含まれてはいます。

COPDの最大のリスクは勿論喫煙です。

ただ、喫煙者の5割以上は、
喫煙を続けていてもCOPDが進行していないので、
喫煙以外にも、
COPDを進行させるリスクは存在している筈です。

生活習慣的に考えると、
喫煙者が○○の習慣を持っていると、
よりCOPDが進みやすい、
という相加的な効果が想定されるのです。

そうしたリスクの中で、
上記文献の著者らによって、
これまでにも報告されているリスクが、
ソーセージやサラミなどの加工肉の摂取です。

加工肉は動脈硬化性疾患などとの関連も多く指摘されています。

何故加工肉が通常の赤身肉より健康上のリスクが高いのか、
という点については、
明確に実証されたメカニズムがある訳ではありませんが、
発色剤などとして使用されている亜硝酸塩などの窒素化合物が、
胃や小腸で吸収される際にアミノ酸と結合し、
炎症を惹起したり発癌作用のある、
有害なN‐ニトロ化合物に変化するためではないか、
という仮説が有力とされています。

さて、今回の研究では、
Nurses’s Health Studyという、
アメリカの有名な看護師を対象とした大規模疫学データを活用して、
中年女性が加工肉を多く摂ることが、
その後のCOPDの発症にどのように影響するかを検証しています。

加工肉はベーコンが13グラム(2枚)、
ホットドッグが45グラム(1本)、
サラミやソーセージは28グラム(1本)が、
1サービング(1人前)として計算されています。

87032名の中年女性(登録時の年齢の中間値36.8歳)を、
長期間観察した結果として、
加工肉を1人前以上食べている人は、
食べていない人と比較して、
その後のCOPDのリスクが29%(95%CI:1.00から1.65)、
増加する傾向が認められました。

これを喫煙者と非喫煙者で解析すると、
喫煙者においてはCOPDのリスクは37%(95%CI:1.01から1.86)、
より明確に増加していて、
非喫煙者群では有意な増加は見られませんでした。

また、加工肉以外の食生活が、
動物性脂肪や砂糖加糖飲料が多いなど、
不健康であるかどうかで分けて解析すると、
食生活が不健康である場合のCOPDのリスクが、
これも39%(95%CI:1.04から1.85)と、
より明確に増加していました。

つまり、中年期の女性が加工肉を多く摂取すると、
それはCOPDの将来的なリスクにつながり、
特に喫煙者や不健康な食生活をしている場合には、
相乗効果でよりそのリスクは高まる、
という結論になっています。

加工肉が身体に悪いことは、
ほぼ確定的な事実と言って良く、
少なくとも習慣的な摂取については、
健康のためには避けるのが賢明であると、
そう言い切ってもいいように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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