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長期のマクロライド治療が細菌叢に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アジスロマイシンの重症喘息への効果.jpg
2019年のAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌に掲載された、
急性増悪を繰り返す喘息患者に対する、
マクロライド系抗菌剤の継続使用の、
気道の細菌叢に与える影響を検証した論文です。

気管支喘息というのは気道のアレルギー性の炎症により、
呼吸困難の発作を繰り返すという病気です。
その本態はアレルギー性の炎症であるという知見から、
抗炎症作用のあるステロイドの吸入剤が、
その発作の予防と治療のために、
広く使用されています。

ただ、吸入ステロイドは全ての喘息患者において、
著効を示すという訳ではなく、
充分量の吸入ステロイドを使用していても、
急性増悪と呼ばれる呼吸機能の急激な悪化を、
繰り返すような患者さんが少なからず存在しています。

最近、こうした不安定な喘息患者に対して、
アジスロマイシンというマクロライド系の抗菌剤を、
長期使用するという臨床試験が複数行われ、
一定の急性増悪の予防効果が確認されています。

アジスロマイシンに限らずマクロライド系の抗菌剤には、
その直接的な抗菌作用以外に、
身体の免疫の調整作用や抗炎症作用などがあり、
それがこうした現象のメカニズムとして想定されています。

しかし、
アジスロマイシンも抗菌剤であることには違いがありませんから、
その長期使用は薬の効かない耐性菌の増加など、
身体に悪影響を与える可能性も否定は出来ません。

そこで今回の研究では、
コントロールの不安定な気管支喘息の患者さん、
トータル61名を、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分け、
一方は標準的な治療に加えて、
毎週2回アジスロマイシンを500mg使用継続し、
もう一方は偽薬を使用して、
48週間(ほぼ1年)の治療を継続し、
その前後で痰を採取して、
患者さんの細菌叢を比較検証しています。

その結果、
アジスロマイシン群は偽薬群と比較して、
トータルな細菌数には変化がなく、
インフルエンザ桿菌(Haemophilus Influenzea)のみが、
有意に減少していました。
他の代表的な起炎菌である、
肺炎球菌、緑膿菌、モラクセラ・カタラーリス、黄色ブドウ球菌には、
変化が見られませんでした。

一方で、複数のマクロライド系抗菌剤の耐性菌は、
アジスロマイシン投与群で増加していました。

今回の検証においては、
アジスロマイシンはどうやら、
インフルエンザ桿菌を特異的に減少させることにより、
気管支喘息の急性増悪を減少させている可能性が浮上しました。
その一方で耐性菌はやはり増加させていることも確かで、
マクロライドの長期投与の是非については、
まだ結論は出ていないと、
そう考えておいた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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