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「ゴールデン・リバー」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ゴールデン・リバー.jpg
「ディーパンの戦い」などのフランスのジャック・オーディアール監督が、
初めての英語による映画として、
アメリカでもあまり製作されなくなった、
西部劇映画を作りました。

これは日比谷シャンテでしかやっていないし、
もう終わりそうだしどうしようかな、
と思っていたのですが、
何となく気になったので無理して観て来ました。

なかなか良かったです。

本当に本格的な西部劇をガチで作っているんですよね。

それも1960年代以降の、
食詰めた男同士が世界の果てに墜ちて行くような、
ニューシネマの洗礼を受けたような、
昔のシネフィルの皆さんが絶賛して、
「映画評論」で蓮見先生が褒めるような、
そんな感じのマニアックな西部劇です。

しかもこれはヨーロッパでロケしていて、
音楽のジャカジャカした感じや、
途中でちょっと登場人物の語りになったり、
酸で身体が爛れて腕を切断したりの過激な描写にしても、
かつてのマカロニウエスタンの雰囲気も、
濃厚にたたえています。

特に今作る意味を強く感じさせるような、
そうした映画ではないんですよね。
監督が愛するかつての西部劇を、
丁寧かつ端正に再現した、
という趣の映画です。

ただ、かつてのマカロニウエスタンと比べれば、
映画技術的には遙かに高度で、
完成度の高い作品に仕上がっています。
シネスコの画面の使い方や人物の掘り下げの深さなどは、
間違いなく今の映画でもある、
という気はします。

物語はシスターズ(姉妹)という名字の、
殺し屋の兄弟がいて、
それが英語題では「シスターズ・ブラザーズ」という、
人を食ったようなタイトルの由来です。
沈着で引っ込み思案の兄と、
粗暴で考えなしの弟がいて、
弟の暴走を兄がサポートする形で、
どうにか殺し屋稼業を続けているのですが、
その地方を支配する提督の指示で、
川底にある金を検出出来るという、
特殊な薬品を開発した科学者を、
探して殺すという仕事を引き受けた時から、
微妙に2人の関係は揺らぎはじめ、
そして2人の運命を大きく変えるような出来事が、
待ち受けているのです。

沈着な兄をジョン・C・ライリー、
粗暴な弟をホアキン・フェニックスが演じていて、
古典的な西部劇では悪党として、
主人公に殺される憎まれ役のような2人が、
この映画では主人公になっている訳です。

ライリーのキャラがね、
ともかく抜群にいいんですよね。

弟を守ることが自分の使命と思って生きているんだけど、
それが少しずつ揺らいで来て、
途中で敵味方がなくなって、
立場の違う4人が1つの集団になると、
兄弟は別々になってしまうんですが、
結局人間的に大きな欠陥のある弟を、
破滅させないことは兄にしか出来ないんですよね。

それで悲劇が訪れるのですが、
とてもとても切ないのです。

演技派のライリーの芝居も、
名演と言って良い素晴らしいものでした。

僕はもう途中からは、
感情移入しまくりでしたね。
なので、人によっては甘すぎると感じるラストも、
僕にはほっとして素敵に感じました。

西部劇と言えば銃撃戦ですが、
この映画のパターンは、
ドカンドカンと重量感のある音で拳銃をぶっぱなして、
次の瞬間には誰かが倒れている、
という感じのスタイルです。
殆ど瞬間すら見せないのですが、
映画としてはそれで悪くなかったですね。
この映画の拳銃は象徴的な殺戮兵器なのです。

最近はあまりないムードのある人間ドラマで、
2時間たっぷり映画の世界に浸ることが出来ました。

とても映画らしい映画として、
昔からの映画ファンの皆さんにはお薦めしたいと思います。

最近の映画しか観ていないという方には、
ちょっと合わないかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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