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「アルキメデスの大戦」(2019年実写映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アルキメデスの大戦.jpg
人気漫画の「アルキメデスの大戦」が、
VFXを得意とする山崎貴監督により実写映画化されました。

これは天才数学者で帝大を退学した青年が、
ひょんなことから海軍将校となり、
独自の視点で軍を改革し戦争を阻止しようとする、
太平洋戦争前夜の時代を舞台とした物語です。

それを山崎監督は大幅にリライトし、
戦艦大和の建造を巡る海軍内部の抗争劇に的を絞って、
「戦艦大和」が主役の物語としてまとめ上げています。

これは何より原作を巧みに作り変えた脚本が良く、
VFXも尺は少ないながら迫力があって、
キャストも充実した、
日本の最近の娯楽映画としては、
出色の1本で、
それは勿論ハリウッドの大作と比べれば、
スケール感は見劣りがしますが、
そのアイデアや構想力は決して遜色のない力作でした。

最近の日本の戦争映画としても随一だと思います。

最近の山崎監督の仕事はどうもなあ、
と思われる向きにも、
いやいや今回はなかなか歯応えがありますよ、
とお薦めしたいと思います。

映画館に足を運んで、
決して損はないですよ。

以下少しネタバレを含む感想です。

これね、巻頭5分強で戦艦大和が沈むスペクタクルシーンがいきなりあり、
その後で昭和8年の海軍の巨大戦艦建造計画に、
時間が巻き戻るのですが、
その後ラストまで一切戦闘シーンはありません。

かなり、勇気のある構成ですが、
それがこの映画の場合成功していて、
余韻のあるラストに至ると、
もう一度最初から見たくなってしまうのです。

作戦勝ちですね。

巻頭の大和沈没以降は、
ほぼほぼ原作通りに話は進むのですが、
原作ではあまり目立たない山本五十六を前面に出し、
主役の数学者役の菅田将暉さんも、
その部下役の柄本佑さんも、
財閥令嬢の浜辺美波さんも、
かなり原作とは違う性質に変えられていて、
それがキャストにフィットして、
原作とは違う雰囲気をしっかり作っています。
この辺りも脚本が非常に巧みです。
また、原作ではとっかかりに過ぎない戦艦の選定会議を、
クライマックスに設定して、
そこに池井戸潤のテイストを注入して、
娯楽性を増しています。
これだけだと、ただの戦前版池井戸潤になってしまうのですが、
その後に田中泯さん演じる平山中将と、
主人公ととの対決場面を作り、
戦艦大和の完成を見せることで、
ラストは綺麗に戦争映画に帰着しているのです。
この辺りの意外性のある構成も、
とても巧みです。

キャストは、
原作より飄々とした数学オタクとして、
主人公を熱感豊かに演じた菅田将暉さんが良く、
対する平山中将役の田中泯が、
怪物的な軍人科学者を演じて出色です。

田中泯さんはこれまでに多くの映像作品に出演していますが、
おそらくこの作品が代表作と言って、
言い過ぎではないものだと思います。
個人的には舞踏家の割には、
動きの表現に冴えがないなあ、と思っていたのですが、
今回の自分の非を認め、一瞬で虚脱するような演技など、
舞踏家としての本質が垣間見える見事な芝居でした。
この映画の田中泯さんは凄いです。

そんな訳でかなり質の高い、
アイデアのユニークな、
最近出色の日本戦争映画の快作として、
多くの皆さんに是非観て頂きたいと思います。

なかなかですよ。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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