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プロの運動選手は長生きなのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メジャーリーガーと生命予後.jpg
2019年のJAMA Internal Medicine誌のレターですが、
メジャーリーガーの寿命と病気を調べて、
一般男性と比較したユニークな研究です。

プロのスポーツ選手が健康かどうか、
というのはよく議論になるところです。

運動は健康習慣の柱の1つであることは間違いがなく、
その意味では運動を仕事にしているスポーツ選手は、
普通の人より健康的であると言えます。

この場合の健康というのは、
生活習慣病にならないということですから、
結果として健康長寿になる、
ということになります。

その一方でスポーツ選手は体を酷使するので、
怪我が多く、むしろそのために、
健康を害することが普通の人より多いのでは、
という可能性も指摘されています。

仮にこちらの要素の方が大きいとすると、
スポーツ選手は却って短命で病気も多い、
という可能性もある訳です。

果たしてどちらが正しいのでしょうか?

それは勿論、スポーツの種類やランクによっても、
違う事項であると想定されます。

今回の研究はアメリカのメジャーリーガーを対象としたもので、
歴代の16637名の選手を対象とした、
このジャンルでは非常に大規模なものです。

平均的なアメリカ男性とメジャーリーガーを比較したところ、
メジャーリーガーの総死亡のリスクは、
平均的アメリカ男性と比較して、
24%(95%CI; 0.73から0.78)有意に低下していました。

個別の病気による死亡リスクについても、
認知症などの神経変性疾患を除いては、
一般男性よりメジャーリーガーではリスクが低下していました。

メジャーリーガーとして活躍する期間が長いほど、
総死亡のリスクは低下していましたが、
肺癌、血液系の癌、そして皮膚癌については、
期間が長いほどリスクが増加する傾向を示していました。
これは排気ガスの吸引や、日光を浴びる時間が長いことが、
関連している可能性が示唆されますが、
明確な原因までは今回の検証からは分かりません。

ピッチャーやキャッチャーなどのポジションと、
死亡リスクとの関連を見てみると、
ピッチャーと比較した時、
ショートとセカンドの内野手は、
総死亡のリスクが19%(95%CI: 0.72から0.91)、
癌による死亡のリスクが22%(95%CI:0.62から0.98)、
呼吸器疾患による死亡のリスクが44%(95%CI: 0.37から0.84)、
それぞれ有意に低下していました。
また、キャッチャーはピッチャーと比較して、
泌尿生殖器系の疾患による死亡リスクが、
2.52倍(95%CI:1.19から5.35)有意に増加していました。

このように概ねメジャーリーガーは、
そのキャリアが長いほど、
多くの病気のリスクが低下しており、
長生きである傾向が認められました。
ただ、神経変性疾患に関してはそうした傾向はなく、
またキャリアが長いと一部の癌のリスクは増加していました。
ポジション毎の比較では、
比較的怪我の少ないポジションである内野手の死亡リスクが低く、
骨盤周囲の外傷を受けやすいキャッチャーでは、
泌尿生殖系の病気による死亡リスクが、
ピッチャーの2倍以上という高値を示していました。

このように習慣的な運動が生命予後に良いことは、
ほぼ間違いがないのですが、
ハードな練習や試合を行なうアスリートにおいては、
怪我なども多く、
ホコリなどの吸引や紫外線の曝露も多いために、
病気によっては一般の人よりそのリスクが増加する、
ということもあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(補足)
論文の画像が間違っていました。
コメントでご指摘を受け取り急ぎ修正しました。
(令和1年8月2日午後10時)
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