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CGRP受容体拮抗薬の片頭痛発作への効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
CGRPと片頭痛.jpg
2019年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
全く新しいメカニズムによる片頭痛治療薬の、
第3相臨床試験結果をまとめた論文です。

片頭痛は習慣性頭痛の代表で、
セロトニンの1Bと1Dという種類の受容体を刺激する作用を持つ、
トリプタン製剤と呼ばれる薬が主に使用されています。

このタイプの薬は従来の痛み止めと比較すれば、
格段に片頭痛には効果の高い薬です。
ただ、片頭痛の患者さんの3分の1ではトリプタンは無効で、
3から4割の患者さんは使用後も発作を繰り返しています。
また、血管収縮作用のあることより、
心血管疾患のある患者さんではそれが悪化する可能性がある、
というリスクも持っています。

最近の考えではトリプタン製剤のターゲットである、
セロトニンの受容体は、
片頭痛の症状に関連はしていても、
その原因ではありません。
片頭痛というのは脳の一種の炎症で、
三叉神経の興奮により、
神経終末から遊離されるCGRP
(calcitonin gene-related peptide)
と呼ばれる炎症物質が、
そのきっかけであると考えられています。

そうであるなら、
このCGRPをブロックすることにより、
片頭痛をより根本から治療することが、
出来るのではないでしょうか?

そうした考えから開発された薬が、
今回ご紹介するリメゲパント(rimegepant)という飲み薬です。

この薬はCGRPの受容体の拮抗薬で、
これまでの第2相の臨床試験において、
1回75mgの用量で2時間以内に症状を改善し、
24から48時間効果が持続することが確認されています。

今回の第3相臨床試験では、
18歳以上で1年以上の片頭痛の既往があり、
1ヶ月に2から8回の発作が起こっている、
トータル1186名の患者さんを、
本人にも主治医にも分からないようにくじ引きで2つに分け、
一方はリメゲパント75mgを頭痛発作時に使用し、
もう一方は偽薬を同じように使用して、
その後の症状の変化を比較検証しています。

その結果、
使用後2時間で痛みが消失したのは、
リメゲパント群では19.6%であったの対して、
偽薬群では12.0%とリメガパント群で有意に改善していました。
(modified intention-to-treat analysis)

また2時間で最もつらい症状が改善したのは、
リメゲパント群では37.6%であったのに対して、
偽薬群では25.2%で、
こちらもリメゲパント群で有意に改善していました。

安全性については、
リメゲパント群でやや多かったのは、
尿路感染症と吐き気程度で、
それも偽薬群と比較して、
明確に多いとは言えないレベルでした。

このように、
CGRP受容体拮抗薬の使用により、
急性の片頭痛発作の症状が改善することが、
臨床試験において示されました。

ただ、その改善効果はやや微妙なもので、
特効薬と言うからには、
もっと高い比率で改善が見られても、
良いようには思われます。

問題は現行のトリプタン製剤との関係で、
トリプタンとリメゲパントとの直接比較による効果の確認や、
トリプタン製剤で無効の片頭痛において、
リメゲパントにどの程度の有効性があるのかなどの、
検証が行われて初めて、
この薬の評価が明確になるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(補足)
数値に誤りがあり、ご指摘を受け修正しました。
(令和1年7月18日午前6時修正)
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