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甲状腺機能異常と大腸癌発症リスクとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
大腸癌と甲状腺機能異常.jpg
2019年のJAMA Network Open誌に掲載された、
甲状腺機能と大腸癌リスクとを比較したちょっと不思議な論文です。

大腸癌のリスクが、
色々な環境要因によって影響を受けることはよく知られています。

甲状腺ホルモンには細胞の増殖や分化に関わる、
多くの作用があり、
その一部は大腸癌の発症や増殖に関わる経路と、
関連を持っていることが分かっています。

そのため甲状腺機能と大腸癌との間に、
関連があるのではないか、という考えが以前からあり、
これまでにも甲状腺機能亢進症で大腸癌が増える、
というような報告がありますが、
いやいや関連はなかった、という報告もあり、
その真偽はまだ定かではありません。

そこで今回の研究では、
台湾の健康保険のデータベースを活用して、
大腸癌を発症した69713名を、
年齢などの条件を一致させて対照させた、
同じ69713名の大腸癌のないコントロールとを比較して、
甲状腺機能と大腸癌の発症リスクとの関連を検証しています。

その結果、
甲状腺機能亢進症と診断された人は、
されていない人と比較して、
大腸癌の発症リスクが23%(95%CI: 0.69から0.86)、
甲状腺機能低下症と診断された人は、
されていない人と比較して、
大腸癌の発症リスクが22%(95%CI: 0.65から0.94)、
それぞれ有意に低下していました。

年齢を50歳以上か未満で2つに分けてみると、
甲状腺機能低下症の診断は、
50歳以上の年齢における直腸癌のリスクについては、
46%(95%CI: 0.39から0.74)有意に低下させていましたが、
50歳未満及び結腸癌については、
そうした有意なリスクの低下は見られませんでした。

甲状腺機能亢進症の診断は、
特に50歳未満の直腸癌のリスクを、
45%(95%CI: 0.36から0.85)有意に低下させていました。

このように、今回の大規模な住民データでは、
甲状腺機能低下症も甲状腺機能亢進症も、
いずれも大腸癌の発症リスクを低下させる、
というちょっと不思議な結果が得られています。

これは何らか甲状腺とは別個の因子が関連している可能性もあり、
今後また別個のデータが補完されるまでは、
まだその真偽は不明と考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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