「町田くんの世界」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも中村医師が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
安藤ゆきさんの人気コミックを、
石井裕也監督が実写化した映画を観て来ました。
高校を舞台にした学園ものですが、
主人公の少年少女2人は、
それほど年齢の変わらない新人が演じ、
同級生などの脇キャラは、
主に30代くらいのスター俳優達が演じるという、
かなり特殊なキャスティングの映画です。
それほど観たいと思うジャンルではないのですが、
早朝にやっている作品ということで、
時間が合ったので観て来たというのが実際です。
朝一の映画館の客席は、
僕以外には60代以上の男性が2人だけでした。
意外に若者層は興味がないのかしら、
というようにも思いました。
これは発想もテーマもなかなか面白いのです。
主人公の高校生の町田くんは、
誰かが困っているのを見ると、
助けないではいられないという他者優先の少年なのですが、
同級生の少女を好きになってしまいます。
好きだという気持ちは独占的なものなので、
少女は自分だけを助けて欲しい、自分だけを見て欲しい、
と思うのですが、
町田くんは少女のことは好きな一方で、
周囲の全ての人が困っていると、
それを助けないではいられないので、
それをすると少女からは怒られて関係が悪くなる、
というジレンマに直面するのです。
恋愛というものはそもそも独善的で身勝手な感情なので、
「全ての人を幸せにしたい」という気持ちとは、
基本的に相いれない部分がある訳です。
それでいながら、
両方とも素晴らしいものとされているところに根本的な矛盾があり、
主人公はそれを求道僧のように追及するのです。
普通の恋愛ドラマでは、
誤魔化してしまう部分にフォーカスを当てている訳で、
なかなか面白い発想だと思いました。
ただ、他の多くの方も指摘をされているように、
この映画はせっかくそうした問題提起をしておきながら、
ラストは留学する少女を少年が追いかけ、
それをこれまで町田くんに助けてもらったクラスメートが応援する、
という「恋愛至上主義」のものに変貌し、
2人が一緒になれてめでたしめでたしになってしまいます。
2つの概念の根本的な矛盾は、
一体いつ何処で消滅してしまったのでしょうか?
おいおい!という感じです。
この映画は前半では、
少女の妄想の中でのみ、
超現実的なことが起こります。
それでいて、ラストでは、
少女の妄想の中にあった光景が、
現実のものになって終わります。
ただ、この流れも如何にも唐突で、
妄想がどのようにして現実を侵食するに至ったのか、
それとも現実と妄想が何処かで反転したのか、
そうした点が何ら説明されていないので、
この点もラストの処理には納得がゆきません。
中段まではなかなか面白く、
主役2人の演技も悪くありませんし、
左右や上下の画面上の動きとそのスピードを、
自然に感情に転化させるような映像演出も悪くないと思います。
年齢無視のキャスティングも、
全て成功とは言えませんが、
前田敦子さんの女子高生などは、
なかなかのクオリティで、
「俯瞰して未来から見た青春」的な狙いも面白いと思いました。
その意味で、
同年代より高齢者に、
楽しめるノスタルジックさがあるのです。
この辺りの方法論は、
かつての大林宜彦映画に、
ちょっと似たところがありますが、
大林監督より遥かに自然に、
そのロジックを達成していたと思いました。
ただ、高齢者にもラストはガッカリかな?
何故こんな最後に全てを投げ出すようなことをしたのか、
どうにも納得はゆかないのです。
まあ、頑張って見るほどのことはないかな…
という感じの映画でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも中村医師が外来を担当する予定です。
土曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
安藤ゆきさんの人気コミックを、
石井裕也監督が実写化した映画を観て来ました。
高校を舞台にした学園ものですが、
主人公の少年少女2人は、
それほど年齢の変わらない新人が演じ、
同級生などの脇キャラは、
主に30代くらいのスター俳優達が演じるという、
かなり特殊なキャスティングの映画です。
それほど観たいと思うジャンルではないのですが、
早朝にやっている作品ということで、
時間が合ったので観て来たというのが実際です。
朝一の映画館の客席は、
僕以外には60代以上の男性が2人だけでした。
意外に若者層は興味がないのかしら、
というようにも思いました。
これは発想もテーマもなかなか面白いのです。
主人公の高校生の町田くんは、
誰かが困っているのを見ると、
助けないではいられないという他者優先の少年なのですが、
同級生の少女を好きになってしまいます。
好きだという気持ちは独占的なものなので、
少女は自分だけを助けて欲しい、自分だけを見て欲しい、
と思うのですが、
町田くんは少女のことは好きな一方で、
周囲の全ての人が困っていると、
それを助けないではいられないので、
それをすると少女からは怒られて関係が悪くなる、
というジレンマに直面するのです。
恋愛というものはそもそも独善的で身勝手な感情なので、
「全ての人を幸せにしたい」という気持ちとは、
基本的に相いれない部分がある訳です。
それでいながら、
両方とも素晴らしいものとされているところに根本的な矛盾があり、
主人公はそれを求道僧のように追及するのです。
普通の恋愛ドラマでは、
誤魔化してしまう部分にフォーカスを当てている訳で、
なかなか面白い発想だと思いました。
ただ、他の多くの方も指摘をされているように、
この映画はせっかくそうした問題提起をしておきながら、
ラストは留学する少女を少年が追いかけ、
それをこれまで町田くんに助けてもらったクラスメートが応援する、
という「恋愛至上主義」のものに変貌し、
2人が一緒になれてめでたしめでたしになってしまいます。
2つの概念の根本的な矛盾は、
一体いつ何処で消滅してしまったのでしょうか?
おいおい!という感じです。
この映画は前半では、
少女の妄想の中でのみ、
超現実的なことが起こります。
それでいて、ラストでは、
少女の妄想の中にあった光景が、
現実のものになって終わります。
ただ、この流れも如何にも唐突で、
妄想がどのようにして現実を侵食するに至ったのか、
それとも現実と妄想が何処かで反転したのか、
そうした点が何ら説明されていないので、
この点もラストの処理には納得がゆきません。
中段まではなかなか面白く、
主役2人の演技も悪くありませんし、
左右や上下の画面上の動きとそのスピードを、
自然に感情に転化させるような映像演出も悪くないと思います。
年齢無視のキャスティングも、
全て成功とは言えませんが、
前田敦子さんの女子高生などは、
なかなかのクオリティで、
「俯瞰して未来から見た青春」的な狙いも面白いと思いました。
その意味で、
同年代より高齢者に、
楽しめるノスタルジックさがあるのです。
この辺りの方法論は、
かつての大林宜彦映画に、
ちょっと似たところがありますが、
大林監督より遥かに自然に、
そのロジックを達成していたと思いました。
ただ、高齢者にもラストはガッカリかな?
何故こんな最後に全てを投げ出すようなことをしたのか、
どうにも納得はゆかないのです。
まあ、頑張って見るほどのことはないかな…
という感じの映画でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。