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グルコサミンの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
グルコサミンの心血管疾患予防効果.jpg
2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
関節痛に広く使用されているサプリメントが、
心血管疾患の予防になるのではないかという、
「意外に効くじゃんグルコサミンって!」
という感じの論文です。

グルコサミンとコンドロイチンは、
膝などの関節の軟骨を形成する成分で、
そのためサプリメントとしてその補充を行なうことが、
膝の痛みの改善や関節症の進行予防に繋がるのでは、
という期待から、
サプリメントの一大市場を形成しています。

毎日そのCMがテレビで流れない日はありませんし、
あらゆるメディアがその宣伝を行なっています。

しかし、実際にその効果がどの程度のものか、
という点については、
まだ議論があり、
一定の結論に至ってはいません。

グルコサミンについては2000年代の初め頃に、
一流の医学誌にその使用により膝の痛みが改善したとする、
複数の論文が掲載されました。
今でも一部のグルコサミンの宣伝には、
その時のデータが使用されています。

しかし、その論文の多くが、
特定のグルコサミンの販売業者と癒着した、
研究者によるものだったことが判明し、
その信頼性は大きく損なわれました。

その後、アメリカでGAIT研究と呼ばれる大規模な臨床研究が行われ、
グルコサミンとコンドロイチンの半年間の効果が検証されました。
その結果は、2006年と2008年に論文化されました。
トータルには明確な効果は確認されませんでしたが、
特に有害ではなく、症状の改善したケースも認められました。
サブ解析で中等度から高度の痛みのある患者さんでは、
痛みの改善効果があるかも…
というくらいの結果です。

その後2014年のAnn Rheum Dis.に新たな臨床試験の結果が発表されました。
その後に発表された臨床試験の中では、
例数もまずまずで厳密な手法を用い、
偽薬と比較していて、2年という長期の効果を見ている、
という点で、それまでにない画期的なものです。

オーストラリアにおいて、
45から75歳の変形性膝関節症の患者さん、
トータル605名を、
本人にも治療者にも分からないように、
4つのグループに分け、
第一グループはグルコサミンを1日1500ミリグラム、
第二グループはコンドロイチンを1日800ミリグラム、
第三グループはグルコサミンとコンドロイチンの併用、
そして第四グループは偽薬を使用して、
その後2年間の経過観察を行います。

その結果…

偽薬を含めた全てのグループで、
治療の1年後には膝の痛みは改善を示しましたが、
グループ間の差は有意なものはありませんでした。
有害事象にも差はありません。
そして、グルコサミンとコンドロイチンの併用群では、
膝関節症の進行度の指標1つである、
関節裂隙の狭小化が、
2年間で0.1ミリ(0.002から0.20)偽薬より有意に予防されていました。

つまり、
痛みなどの症状には差は付かなかったけれど、
グルコサミンとコンドロイチンを併用すると、
二年間で関節の軟骨の減りが、
平均で0.1ミリ少なくて済んだ、
ということになります。

同じ雑誌に翌2015年、
次のような論文も発表されました。
これは別個の研究で、
フランス、ドイツ、ポーランド、スペインで、
患者さんが登録されています。

変形性膝関節症のある40歳以上の606名の患者さんを、
グルコサミン1500ミリグラムとコンドロイチン1200ミリグラムを併用する群と、
セレコキシブという消炎鎮痛剤を200ミリグラム使用する群の2つに分け、
半年間の経過観察を行なっています。
どちらのグループかは、
患者さんにも主治医にも知らされません。

その結果、
矢張り痛みはどちらの群でも減少していて、
しかし両群での効果の差は認められませんでした。

この研究は偽薬との比較ではないので、
その点はちょっと見劣りがするのですが、
膝関節症の痛みに対して、
痛み止めを使うべきか、
それともグルコサミンやコンドロイチンで様子を見るべきか、
というのは、
臨床において医者も患者さんも、
日々直面する問題ですから、
その意味では意義のある試験だと言って良いと思います。

膝関節症は、
物理的なストレスと老化が原因であっても、
その進行には一種の自己炎症のメカニズムが絡んでいて、
その意味では消炎鎮痛剤の使用が、
理に適っている側面があります。

しかし、こうして結果を見ると、
どうやらセレコキシブによる病状の改善効果は、
グルコサミンとコンドロイチンで、
充分代用は可能な水準のもののように思われます。
更には偽薬とどの程度違うかは、
神のみぞ知る、という感じです。

トータルに考えて、
グルコサミンとコンドロイチンの併用は、
2年間程度の使用における安全性はほぼ確立していて、
その効果は膝関節症の進行予防に、
僅かには関与しているようです。
ただ、その痛みなどの改善効果は、
多分にプラセボ効果を含んでいて、
それを除外するとかなり心許ない感じです。

このように、グルコサミンはサプリメントとしては優等生です。

一定の効果がある可能性があり、
一方で有害事象などのリスクが生じる可能性は極めて低いからです。

このため、アメリカやオーストラリアでは、
グルコサミンは日本と同じくサプリメントの扱いですが、
ヨーロッパでは処方箋の必要な処方薬の扱いとなっています。

こうしたことを知らずに、
「グルコサミンには何の効果もない」
と言い切っているような専門家と称する方もいますが、
実は知識がアップデートされていないのです。

最近グルコサミンの使用により、
心血管疾患のリスクが低下するのでは、
ということを示唆する報告が幾つか見られています。

今回の研究は大規模健康データである、
イギリスのUKバイオバンクのデータを活用して、
心血管疾患の既往のないトータル466039名に、
グルコサミンの使用の有無を聞き取りし、
中間値で7年の経過観察を行って、
心血管疾患の発症リスクを比較検証しています。

他の心血管疾患のリスク因子を補正した結果として、
グルコサミンの習慣的な使用は、
心血管疾患のトータルな発症リスクを15%(95%CI: 0.80から0.90)、
心血管疾患による死亡のリスクを22%(95%CI: 0.70から0.87)、
虚血性心疾患の発症リスクを18%(95%CI: 0.76から0.88)、
それぞれ有意に低下させていました。

このように、
今回の大規模な検証から、
グルコサミンの使用が心血管疾患のリスクを低下させる可能性が、
示唆されました。

仮にこれが事実として、
どのようなメカニズムが想定されるでしょうか?

上記文献の考察では、
グルコサミンに抗炎症効果があり、
それが原因となっている可能性や、
グルコサミンに糖化を抑制するような作用があり、
低糖質ダイエットと似た作用があるのでは、
というような推論も記載されています。

グルコサミンの心血管疾患予防効果は、
まだ確定したものではありませんが、
グルコサミンはサプリメントとしては、
関節炎にも一定の有効性があり、
心血管疾患の予防効果もあるとすれば、
意外に優れものと言えるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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インフルエンザ感染と湿度との関係 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
インフルエンザと湿度の関係.jpg
2019年のPNAS(米科学アカデミー紀要)に掲載された、
インフルエンザ感染に対する湿度の影響についての論文です。

季節性インフルエンザの感染は、
北半球では11月から3月に多く、
南半球では5月から9月に多いという特徴があります。

これは概ね気候の影響として説明されています。

インフルエンザウイルスの感染は、
温度と湿度が共に低い環境で、
より活発化することが知られています。

ただ、2019年のApplied and Environmental Microbiology誌に掲載された論文では、
カナダの疫学データを解析した結果として、
通常湿度として表現されている相対湿度は、
確かにB型インフルエンザは低いほど感染が活発化しますが、
A型インフルエンザはむしろ高いほど感染が活発化する、
という結果になっていました。

つまり、湿度が低いほどインフルエンザ感染が活発化する、
という「常識」も、
実際にはそれほど確実と言える知見ではありません。

仮に湿度が低いとインフルエンザが流行し易いとして、
その原因は何なのでしょうか?

湿度特に絶対湿度が高いと、
インフルエンザウイルスを含む飛沫粒子が安定せず、
感染が起こりにくい、
とする複数のデータが存在しています。

ただ、高温多湿の地域ではインフルエンザ感染は、
湿度の高い時期に流行しているので、
そのことの説明にはなっていません。

2012年のPLOS One誌に掲載された論文では、
相対湿度が100%に近いような状況においては、
塩分濃度などの関係で、
ウイルス粒子は安定して感染も起こりやすくなるけれど、
それを下回る相対湿度においては、
湿度が低いほど感染が起こりやすい、
という複雑な関係があることが報告されています。

以上はウイルス粒子の安定性から見たメカニズムです。

その一方で厚生労働省のサイトには、
人間の気道の粘膜の防御機能が、
相対湿度が低いと低下する、
という趣旨の説明がありますが、
その根拠はあまり明確なものがありません。

上記論文の記載をみても、
粘膜の防御機能などが湿度によってどう変化するかについては、
その根拠となる知見は限られているようです。

今回の研究はアメリカのエール大学などの研究チームによるもので、
ネズミによる動物実験ですが、
相対湿度が10から20%と低い環境と、
50%と通常の環境とで、
気道の防御機能の違いを比較検証しています。

その結果、
湿度が低いと気道粘膜の繊毛運動が低下し、
インフルエンザウイルス感染時に障害された、
粘膜の機能回復も遅れることが確認されました。

つまり、厚労省のサイトにあることも嘘ではなく、
インフルエンザ感染に対抗する粘膜の防御機能は、
湿度が10から20%では低下することが、
動物実験のレベルではありますが、
確認されたのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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「アベンジャーズ エンドゲーム」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
アベンジャーズエンドゲーム.jpg
アベンジャーズシリーズの一応の最終編として、
これまでの全てのキャラクターが総出演するという、
お祭り的な大作が、
今ロードショー公開されています。

前作の「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」では、
サノスという敵が世界を支配出来る6つの宝石の力で、
ヒーローも人類も半分にされてしまうのですが、
そのどん底からヒーロー達の逆襲が始まります。

これはまあ看板には偽りなしで、
3時間によくぞここまで詰め込んだ、
という内容になっていて、
巧妙な仕掛けによって、
これまでのシリーズ全てを振り返るという趣向になっています。
更に個別のストーリーがさんざん展開された後で、
最終決戦はあらゆる物量を、
これでもかと詰め込んだ凄まじいものになっていて、
観客の膨れ上がった期待を裏切るまいという、
このシリーズの凄みを感じさせます。

キャストもこれまでのキャラクターが、
ほぼ総出演するのですから、
その圧力たるやもの凄いのですが、
ちゃんと個々のドラマにも締め括りを作っていて、
ラストの余韻もなかなかのものです。

僕自身はそれほど沢山このシリーズを観ていないので、
細部は分からないところも多いのですが、
「アントマン」や「キャプテンマーベル」のような、
最近公開された映画がストーリーの肝になっているので、
それほどストレスなく観ることが出来ました。
シリーズのファンであれば、
楽しみどころは満載だと思います。

不満を言えば敵キャラに魅力が乏しいですよね。
悪の軍団のビジュアルは平凡ですし、
ボスも何か苦悩している感じでお年寄り感もあるので、
正義と邪悪の最終対決という感じには、
何となくならないのが物足りないところです。
キャプテンマーベルは強すぎるよね。
ちょっとバランスを欠いている感じもしました。

人類の半分が消失するという趣向については、
ダン・ブラウンの「インフェルノ」もそんな話でしたし、
人間は半分くらいにした方が世の中は良くなる、
というある種の階層の願望のようなものが、
多分あるのかなあと感じました。

東京は出て来るけどしょぼくてガッカリですね。
でもまあ、あんなポジションですね。
仕方のないことです。

あとアメリカ人のユートピアがね、
湖のほとりのコテージで、
家族と釣やキャンプを楽しむという感じの、
結局それですか、という感じが、
何となく極東の島国のドロドロ世界から観ると、
素直に素晴らしいと思えない部分もあります。

いずれにしても今の映画のある種の到達点的な大作なので、
一見の価値はある超弩級の作品であることは確かです。
ある意味必見ではあります。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

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「キングダム」(2019年映画版) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
キングダム.jpg
原泰久さんによる大人気コミックが、
漫画原作の実写映画の名手である佐藤信介さんの監督で、
実写映画化されました。

「アベンジャーズ エンドゲーム」との同時期公開ですが、
ひけをとらない人気とヒットをしているようです。

これは予告を観ると凄い大作のようですが、
本編は意外にしょぼい感じもあります。
バーンと俯瞰するような群衆シーンや大規模なCGカットは、
予告にあるのが全てと言っても良いからです。

ただ、色々な意味でかなり頑張っていて、
そのショボさに目を瞑ればなかなか楽しめます。

とても楽しい映画です。

原作の5巻までの内容をほぼ忠実に映像化していて、
原作者も参加した台本は内容に無理がなく、
王宮の奪還に的を絞った作劇が、
134分という長さにしっかり合っていたのが良かったと思います。

佐藤信介監督は、
こうした無理をしないところがとても巧みです。

この映画は、
舞台は古代の中国なのに、
キャストは日本人で日本語を話していて、
如何にも漫画というデフォルメされたキャラも、
原作そのものに登場しますから、
インチキ無国籍活劇とでも言うべきものです。

ただ、これは世界的にも良くあるジャンルで、
ハリウッドの一時期のスペクタクル大作というのは、
概ねこうした史実無視のインチキ映画でしたし、
日本でも「釈迦」とか「秦の始皇帝」のような映画がありました、
ちなみに始皇帝役は勝新太郎です。

この映画はそうした作品と比較するべきもので、
劇団☆新感線の舞台みたいでもありますし、
指輪物語を彷彿とさせるような部分もあります。

大味ではありますが、
細かい事は気にせずに楽しめれば良いのです。

その意味では、
こうしたジャンル作としては、
日本映画史上でも最も成功した部類だと思います。

キャストは皆素晴らしくて、
とても楽しそうに芝居をしているのが、
観ているこちらも楽しくなります。

原作を読まれていないで映画を観ると、
違和感のあるキャストもあると思いますが、
それは原作の漫画的なキャラを、
リアルに再現しているからで、
その限界を考えればとても頑張っていると思います。

特筆するべきは、
矢張りアマゾネスの女王を堂々と演じた長沢まさみさんで、
その惚れ惚れするようなビジュアルは、
眼福の極みです。
山崎賢人さんは違和感はあるのですが、
トータルには良くやっていたと思いますし、
吉沢亮さんの漫画から抜け出したような存在感も文句なしです。
坂口拓さんの悪党ぶりも、
さすがのクオリティでした。
新感線の橋本じゅんさんが、
とても実写化は無理と思える殺し屋を、
踏ん張って演じていたのもツボでした。
マメ山田さんの起用などもニヤニヤさせられました。

そんな訳で、
文句なく今年の邦画一番の娯楽作で、
その胡散臭さも含めて、
楽しい映画をご希望の方にはかなりのお薦めです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アスピリンは大腸癌検診の感度を上げるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンと大腸癌リスク.jpg
2019年のJAMA誌に掲載された、
大腸癌検診の感度を上げるために、
検診前にアスピリンを使用する方法の、
効果を検証した論文です。

実際に国際的にその有効性が確認されている癌検診は、
僅かしかありませんが、
そのうちの1つが便の潜血反応を使用した大腸癌検診です。

これは日本の市町村でも広く行われていますが、
便を通常2回日を変えて取ってもらい、
そこに微量の血液の成分が、
検出されるかどうかを検査するものです。

もしこの検査で陽性反応があった場合には、
大腸内視鏡検査など、
大腸癌診断のための精密検査に進みます。

この検査は大腸癌に限って言うと、
その70から80%で陽性となり、
この検査が陰性であれば大腸癌は90%で否定されます。

ただ、大腸癌は前癌状態の腺腫から進行しますが、
その腺腫の段階で検査が陽性となることはあまりありません。

それでは、前癌状態の腺腫において、
この検査の感度を上げるような方法はないのでしょうか?

報告によると、
低用量のアスピリンを長期使用している患者さんでは、
未使用の患者さんより前癌状態の腺腫の発見率が高かった、
というデータが存在しています。
これはアスピリンの使用により出血が止まりにくい状態となるので、
腺腫からの微量な出血が、
それだけ感知されやすくなった可能性が想定されています。

それでは、
アスピリンを普段使用していない人でも、
便潜血の検査の前にアスピリンを使用することで、
検査の感度を上げることが出来るのではないでしょうか?

今回の研究ではその点を検証する目的で、
検査前にアスピリンを単回使用して、
その効果を比較検証しています。

ドイツの複数施設において、
40歳から80歳のアスピリンなどの抗血小板剤や抗凝固剤を未使用で、
大腸の内視鏡検査を予定している2422名を登録し、
対象者にも検査の担当者にも分からないように2つの群に分けると、
一方は便潜血の採便の2日前に300ミリグラムのアスピリンを使用し、
もう一方は偽薬を使用して便潜血検査を施行し、
その結果をその後の大腸内視鏡検査の結果と比較して、
アスピリン使用の有効性を検証しています。

その結果、
前癌病変の腺腫と癌を併せた病変の検出感度は、
偽薬群では30.4%にあったのに対して、
アスピリン群では40.2%で、
一定の感度の上昇が認められました。
しかし、予め設定した有効と判断される水準には、
達していませんでした。

従って、今回の結果としては、
アスピリンの使用は当初想定したような効果が得られなかった、
要するに失敗であったということになります。

ただし…

これはより例数を増やせば、
有意な差に達するという可能性はあります。
また、デザインとして1回のみのアスピリンの使用を行なっていますが、
それでは充分な効果に至らないという可能性もあります。
たとえば1週間くらい持続して使用すれば、
より効果は明確になった可能性はあります。

従って、まだこの問題は結論が出ているとは言えません。

今後の更なる検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脈拍数と生命予後について(2019年スウェーデンの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
脈拍と生命予後.jpg
2019年のBMJ Open Heart誌に掲載された、
脈拍数と生命予後と心血管疾患リスクとの関連についての論文です。

安静時の脈拍数が早いほど、
生命予後に悪影響を与えたり、
心血管疾患のリスクになるというのは、
これまでに疫学データで複数報告されています。

こうした情報が一般にも広まっているので、
僕も時々外来で患者さんから、
「脈が早いと早死にすると聞いたのですが大丈夫ですか」
のような質問を受けることがあります。

確かにある時点で脈拍が早いことが、
その後の死亡リスクの増加と関連する、
というようなデータは複数存在しています。

しかし、
その殆どは1回しか脈拍を測定していないので、
脈拍が早いことが生命予後の悪化の、
原因であるのか結果であるのかは明確ではありません。

今回の研究はスウェーデンにおいて、
1943年に生まれた798名を対象として、
50歳の登録時の安静時の脈拍を測定して、
その後21年に渡る経過観察を行い、
60歳時にも脈拍数を測定して、
その変化と生命予後や心血管疾患との関連を検証しています。

長期の観察を行っている点と、
脈拍の変化を検証している点が今回のポイントです。

その結果、
50歳の安静時脈拍数が55回以下と比較して、
75回を超えていると、
その後の総死亡のリスクは2.3倍(95%CI: 1.2から4.7)、
心血管疾患の発症リスクは1.8倍(95%CI: 1.1から3.0)、
虚血性心疾患の発症リスクは2.2倍(95%CI: 1.1から4.5)、
それぞれ有意に増加していました。

次に50歳時と60歳時の安静時脈拍数が、
5以上変動したかどうかで検証すると、
脈拍が増加した場合と比較して、
脈拍が安定していると、
心血管疾患のリスクは44%(95%CI: 0.35から0.87)
有意に抑制されていました。

この10年間に脈拍が1回増加する毎に、
総死亡のリスクが3%、心血管疾患のリスクが1%、
虚血性心疾患のリスクが2%、
それぞれ増加すると算定されました。

このように、
安静時の脈拍が75回以上である場合と、
脈拍が10年で5以上増加した場合に、
総死亡のリスクや心血管疾患のリスク、
また虚血性心疾患のリスクのいずれもが増加していました。

これは脈拍自体のリスクと言うより、
交感神経の緊張状態や、
心機能の低下などを反映している可能性が高く、
特に経過の中で脈拍数が増加した時には、
何か心血管系の異常の兆候がないか、
一度は検討する必要があるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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アルコールとタバコの癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルコールと癌リスク.jpg
2019年のBMC Public Health誌に掲載された、
アルコールとタバコの癌リスクを、
男女で比較した、
一般向けとしては受けそうな内容の論文です。

タバコが食道癌や肺癌など、
多くの癌の発症リスクであることは、
一般の方にも広く知られている事実です。
上記文献の記載によれば、
癌による死亡の22%は、
タバコが原因と推定されるそうです。

一方でアルコールについては、
適正な範囲の飲酒習慣は、
健康を大きく害することはない、
という考え方が一般的です。
その適正量にも色々な意見がありますが、
概ね1日に20グラム以下のアルコールであれば、
大きな問題は生じないと言って良いと思います。

ただし、癌についてはそのニュアンスは少し異なります。
アルコールに明確な関連のある癌のうち、
喉頭癌、食道癌、乳癌などについては、
より少ないアルコール量でも、
そのリスクの増加に繋がるというデータが存在しています。

今回の研究はイギリスの疫学データを元にして、
アルコールとタバコの癌リスクに与える影響を、
一般への啓蒙目的に算出しているものです。

その結果、
1週間にボトル1本のワインを飲むと、
その生涯における癌発症リスクは、
絶対リスクで男性では1.0%、女性では1.4%増加すると算出されました。

この男女差は、
主に乳癌のリスクが絶対リスクで0.8%増加することから、
生じていました。

そして、
1週間にボトル1本のワインを飲むことの癌発症リスクは、
男性では1週間に5本の喫煙に相当し、
女性では1週間に10本の喫煙に相当すると算出されました。

これはかなり単純化されたものなので、
リスクを分かり易く示すための目安に過ぎませんが、
女性の飲酒のリスクに一般の警鐘を鳴らすという意味で、
一定の意義があるものではないかと思います。

アルコールも時には、
タバコに匹敵するリスクになるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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脊髄損傷に対する間葉系幹細胞の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
間葉系幹細胞と脊髄損傷.jpg
2019年のJournal of Neurotrauma誌の論文ですが、
治療法のなかった脊髄損傷に対して、
間葉系幹細胞を大量に注射することにより治療するという、
世界初のこの分野の再生治療として、
今非常に話題になっている知見に関わるものです。

2019年の2月に、
脊髄損傷治療用の自己骨髄間葉系幹細胞「ステミラック注」
の薬価収載が決定しました。
1回分の薬価が1500万円弱という、
ビックリするような高額の注射薬です。
これが条件付きで健康保険の適応となったのです。

この薬を1回使用するだけで、
1000万円以上の健康保険料が使用されることになる訳です。
(実際には高額医療の還付があるので公費負担は更に大きい)

勿論画期的な治療にお金が掛かるのは当然のことなのでしょう。

それは理解出来ます。

脊髄損傷というのは本当に深刻な事態ですから、
この治療によりその回復が望めるのだとすれば、
むしろ安いと言えるのかも知れません。

ただ、正直医療費が危機的だ、
薬は皆ジェネリックにしろ、
不要な治療はするな、検査もするな、
と毎日言われ続けて仕事をしている身としては、
何となくモヤモヤする気分になることも事実です。

こうした治療がこれから沢山行われるようになるのでしょ?

今のシステムでそれが本当に可能なのですか?

そんなことは不可能ではないでしょうか?

ない袖は振れないのではないですか?

個人的な意見としては、
こうした高額医療は、
これまでの健康保険の枠組みとは、
別個の枠組みで処理するようにするべきだと考えます。

そうでないと医療費が危機的である原因が何処にあるのか、
全く分からないような事態になってしまいます。

別個にファンドみたいなものを作って、
そこから拠出するべきではないでしょうか?

そうしないのは、
これで健康皆保険の制度が崩壊しても、
「仕方ないでしょ」という言い訳を用意しているようにしか、
僕には思えません。

この治療は最近NHKスペシャルで、
「奇跡の治療、夢の治療、驚異の治療」のように取り上げられて、
大きな話題となりました。

NHKは本当に懲りないですよね。

いや、勿論この再生治療自体を批判したいということではないのです。

これは勿論素晴らしい治療なのだと思います。(多分ね)

ただ、どうしてNHKのこの番組は、
まだその効果が実証されていないような治療を、
いつもいつも「奇跡」とか「夢」とか「驚異」などと、
扇情的な表現で飾り立てて紹介するのでしょうか?

この前確か取り上げたのは、
認知症の新薬でしたよね。

あれは今どうなっていますか?

殆ど全て頓挫していますよね。

もっと前にSSRIが日本で発売される前には、
「夢の薬」として取り上げたのではないかしら。

あれは有用な薬ではありますが、
決して「夢の薬」などではなかったですよね。

こうした扇情的な取り上げ方で、
患者さんが利益を得ることがあったでしょうか?

なかったとは言いません。
でも、不利益を被ることの方が、
ずっと多かったのではないでしょうか?

そして今回ですが、
非常に高価な治療が、認められた後というタイミングで、
単独施設でしか行えないという状況の中で、
「夢の治療」として取り上げるのは、
如何にもきな臭い、何かの意図を感じてしまうのは、
うがち過ぎでしょうか?

すいません。
ちょっと余談が長くなり過ぎました。

この治療はどういうものかと言うと、
脊髄損傷のように神経が大きく障害された病態の急性期に、
骨髄の中にあって血液や神経に分化する性質を持つ間葉系幹細胞を、
自家培養して増やすと、
それを点滴で身体に戻してやるだけです。

それによって神経の再生が促されて症状が改善すると言うのです。

こうした考え方は癌治療では色々と試みられています。

ただ、特定の細胞を培養して戻すという方法については、
簡便である反面、
あまり着実な効果には結び付かない、
という考え方が多いように思います。

釈然としないのは明確なロジックがあるということではなく、
色々な未分化な細胞を試してみたところ、
間葉系幹細胞で上手く行った、という感じの流れで、
後付けで色々と理屈を付けているように思われるところです。

上記論文においては、
注入された幹細胞が、
障害された局所ばかりではなく、
ネズミの脳の運動野において、
神経系細胞の機能回復に作用している遺伝子の発現が、
増加していたというのです。

つまり、一回の注射をするだけで、
損傷部の神経再生が促されるのみならず、
中枢神経においても機能回復に繋がる活性化が起こる、
ということになります。

これがもし本当なら、
これこそ夢の治療であることは間違いがありません。

現状はただ、発表されている多くは動物実験で、
臨床試験においては著効例を含め、
13例中12例が有効と判断されたと記載されていますが、
まだ論文化はされていないようです。
これが第2相の臨床試験という位置づけで、
その時点でスピード承認されているのですから、
通常ではあり得ない早さです。

おそらく海外の需要なども見込んでいるのでしょうが、
この段階での薬価収載というのは、
如何にも早すぎるという気はします。

健康保険は火の車なのですから、
もう少し別の形での臨床研究の継続が、
あっても良かったのではないでしょうか。

そんな訳で色々と危惧の残る気がする今回の事態ですが、
患者さんに有効なのであればそれが福音であることは確かで、
この知見が果たして5年後にどのように展開しているのか、
冷静に待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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食品中のヒ素が心機能に与える影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ヒ素と心機能.jpg
2019年のCirculation: Cardiovascular Imaging誌に掲載された、
食事や水などからのヒ素の摂取が、
その後の心機能に与える影響についての論文です。

ヒ素というのは、
地殻に多く分布する元素で、
土や水などに多く含まれ、
体内にも微量ながら存在しています。
土や水に含まれるヒ素は無機ヒ素ですが、
魚介類や海藻などには有機ヒ素という形で存在しています。

ただ、大量のヒ素を一度に摂ると、
急性の中毒症状が起こり、
下痢や嘔吐、神経症状や内臓障害を来し、
最悪は死に至ります。

また慢性に多くのヒ素を摂取していると、
膀胱癌や皮膚癌、肺癌の発症リスクとなることや、
高血圧や心疾患、糖尿病などのリスク増加に繋がることも分かっています。

ただ、心血管疾患との関連については、
疫学データではそうした傾向は見られるものの、
それがどのようなメカニズムで生じているのかは、
まだ明確な知見はありません。

そこで今回の研究では、
アメリカの先住民(インディアン)を対象とした、
心疾患の疫学研究のデータを活用して、
心エコーを活用した心機能の測定値と、
尿中のヒ素濃度から換算したヒ素の摂取量との関連を検証しています。

登録時に14から50歳で、
糖尿病や心血管疾患のない1337名を平均5.6年観察したところ、
左室肥大の発症リスクは、
ヒ素の摂取量が2倍になると1.47倍(95%CI: 1.05から2.08)
有意に増加していて、
血圧が高めか高血圧に限ると、
そのリスクはより上昇し1.58倍(95%CI: 1.04から2.41)
となっていました。
また左室機能などの指標も、
ヒ素の摂取量の増加に伴い低下が認められました。

このようにヒ素の摂取量が多いことが、
心肥大や心機能の低下に結び付く可能性があるという指摘は、
非常に興味深く、
日本人は米や海藻類などを通して、
欧米よりもヒ素の摂取量は多いので、
今後こうした検証は、
日本人においても行われる必要があるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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曜変天目ニ椀 [身辺雑記]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

この間京都と奈良に行って、
丁度公開されていた国宝の曜変天目(ようへんてんもく)
茶碗を2椀鑑賞しました。

完品での現存が3椀のみで全て国宝という、
お茶碗好き以外にも広く知られている作品です。

まず最初に行ったのが、
京都から勢いでレンタカーを飛ばして、
滋賀のミホ・ミュージアムで鑑賞したこちらです。
ようへんてんもく1みほ.jpg
ミホ・ミュージアムは新興宗教の運営する美術館で、
その指導者の方のコレクションが母体となっているのですが、
一般にも公開されて観光地になっています。

山の中にあって、
トンネルを潜り、
巨大な吊り橋のようなものを渡って館内に入ります。
収蔵品そのものより、
その圧倒的な景色の美観が印象的です。

今回は特別展として、
大徳寺の子院に収蔵されている曜変天目が出品されています。

曜変天目のガラスケースまで長い列を並び、
30分ほどで鑑賞出来ました。
係り員の方が1分を測っていて、
その1分間のみは最前列で鑑賞出来るという方法です。
1分が過ぎてまた鑑賞したい方は、
再び列の後ろに並びます。

ストレスが掛かりますが、
仏像と違って茶碗にはそう執着はないので、
物見遊山的には1分で充分な感じです。

正倉院展の時やフェルメール展の時には、
そうした時間制限はないので、
同じ作品の前に、
同じ人が10分でも15分でも陣取って、
そのまま動かないのでいつまで経っても観ることが出来ません。
「こいつめ!」と思わず頭を叩きたくなります。
その人の後頭部を、
「ははあ、この辺りに少し問題がありそうね」
とじっくり鑑賞してため息を吐きます。
「早く去れ!」と念じますが、
どうやら僕にはそうしたスペックはないようです。
それと比べればこの形式の方が、
余程ましかな、と思いました。

茶碗は3椀の中で一番小さく、
外側には文様がありません。
清楚で楚々とした感じでした。

それから奈良に行って、
毎年3回以上は訪問している、
奈良国立博物館に足を運びます。

特別展がこちらです。
ようへんてんもく2なら.jpg
こちらは今リニューアル中で閉館している、
大阪の藤田美術館からの出張展示です。

矢張り曜変天目のみ列の後ろに並びます。
こちらも30分くらいで最前列に着きます。

らせん状の通路の真ん中にガラスケースがあるので、
そこまでの通路で並びながら解説のパネルを読むことが出来ます。

この博物館はライティングが良く、
陳列もセンスがあると思います。
同じ国立でも京都国立博物館はセンスもライティングも最低で、
これはもう人間の問題なのだと思います。

こちらは1分という制限はありませんが、
時計回りにケースの周りを一周し、
それでお終いという方法です。
前後に促されるので、
同じ親父が15分粘る、
ということは出来ないのです。

大徳寺のお椀より大ぶりで、
模様は外側にもありとても華やかです。
仏像と違って守備範囲ではありませんが、
それでも良いな、とは思いました。

肝心の仏像は、今の時期はあまり目玉がありませんでした。

今日は曜変天目の訪問記でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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