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ペットと肺癌死亡リスクとの関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ペットと癌リスク.jpg
2019年のEnvironmental Researchに掲載された、
ペットの飼育がその後の肺癌の死亡リスクに与える影響を、
検証した論文です。

肺癌は大気汚染や塵肺、タバコなどとの関連が指摘されているように、
環境要因との関連が大きな癌の1つです。

そして生活習慣として時々指摘されることがあるのが、
ペットで鳥を飼っている場合の肺癌リスクの増加です。
これは鳥の糞などに含まれる真菌由来の毒素などを、
吸引することが原因ではないか、
という見解がありますが、
明確に証明されたものではありません。

今回の検証はアメリカにおいて、
19歳以上の13725名の住民データを解析することにより、
ペットの飼育歴と、
長期の経過観察期間における、
肺癌死亡リスクとの関連を検証しています。

その結果、女性においては、
ペットを飼っていない場合と比較して、
ペットを飼っていると、
その後の肺癌による死亡リスクは、
2.31倍(95%CI; 1.41から3.79)有意に増加していました。
このペット飼育と肺癌死亡リスクとの関連は、
主に鳥と猫の飼育によるもので、
鳥の飼育では2.67倍(95%CI: 0.68から10.5)、
猫の飼育では2.85倍(95%CI: 1.62から5.01)、
のリスク増加が認められました。

一方で男性においてはペット飼育と肺癌の死亡リスクとの間に、
有意な関連は認められませんでした。

このように、
喫煙やアルコールなどの他のリスクを補正した上で、
ペット飼育と肺癌死亡リスクとの間に、
かなり明確な関連が見られたことは非常に興味深く、
何故性差がここまではっきりあるのかなど、
明確ではない点は多く、
ある種のバイアスが潜んでいる可能性もありますが、
今後より詳細な検証と原因の検索が、
必要であることは間違いがないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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