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多発性硬化症におけるだるさに対するココアの有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ココアのだるさへの効果.jpg
2019年のJ Neurol Neurosurg Psychiatry誌に掲載された、
多発性硬化症の患者さんにおける、
ココアのだるさ改善効果についての論文です。

多発性硬化症というのは、
神経を守る髄鞘と呼ばれる部分が障害される神経難病で、
視力低下や手足のしびれや痛み、言葉がしゃべりにくくなるなど、
多彩な症状が再発と寛解を繰り返しながら進行します。
そのため、初期には診断が付かず、
不定愁訴のように言われることもしばしばです。

この病気の症状の1つとして、
高頻度に見られるのが疲労感や疲れやすさです。

多発性硬化症の症状としてのだるさは、
原因が必ずしも明確ではなく、
有効な治療がないという問題があります。
ステロイドやインターフェロン、免疫抑制剤などの治療は、
このだるさに対しては無効と考えられています。

唯一効果が確認されているのは、
薬ではなく運動療法です。

そこで今回このだるさへの治療として、
試みられているがココアです。
ダークチョコレートやココアに多く含まれるココアフラボノイドには、
だるさを改善するような効果のあることが確認されていて、
慢性疲労症候群に有効であったという報告もあります。

そこで今回の研究では、
多発性硬化症に対するココアの効果を検証しています。

対象となっているのは多発性硬化症と診断されている40名で、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は毎朝通常のココアを飲み、
もう一方は味は同じでココアフラボノイドを減らしたココアを飲んで、
6週間の経過観察を行なっています。

その結果、
ココアフラボノイドを減らしたココアと比較して、
通常のココアを飲んだ方が、
だるさの指標が僅かながら有意に改善し、
疲れやすさの指標にも有意な改善が認められました。

このように、
ココアがだるさや疲れやすさに有効であることは、
ほぼ事実と考えて良く、
今後そのメカニズムの探求と共に、
有効な飲み方を含めた使用法の検討にも期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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