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アレルギー疾患と癌リスクとの関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アレルギー性疾患と癌リスク.jpg
2019年のCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌に掲載された、
アレルギー性疾患と癌リスクとの関連についての論文です。

花粉症が少しピークは過ぎたものの、
まだ症状に苦しんでいる人は多い状態が続いています。
スギ花粉だけでしたらもうじきですが、
ヒノキ花粉もあると連休以降も症状は続きますし、
通年性のアレルギーに苦しんでいる人も少なくありません。

このように今やアレルギーは国民病という感があります。
花粉症などのアレルギー性鼻炎に蕁麻疹、
喘息、アトピー性皮膚炎などは、
広い意味ではアレルギー性疾患として総称され、
世界的にその患者さんは増加していますが、
その理由については色々な説はあるものの、
まだ明確な結論は得られていません。

アレルギーは免疫反応の一部が過剰反応したものですから、
全身の免疫系にも少なからず影響を与える可能性があります。

それでは免疫とも密接な関連のある癌と、
アレルギー性疾患との間にはどのような関係があるのでしょうか?

アレルギーは粘膜などに慢性の炎症を起こしますから、
それが持続することによって遺伝子の傷が生じ、
それが積み重なることによって、
癌の発生に繋がるという可能性が示唆されます。

その一方でアレルギーは、
外部の異物に対する過剰な免疫反応という言い方が出来ますから、
免疫の作用により癌の発症も予防されるのでは、
という可能性もまた示唆されるのです。

このどちらが正しいのかについても、
まだ結論が出ていません。

今回の研究ではアメリカの大規模な疫学データベースを活用して、
アレルギー性鼻炎、気管支喘息、蕁麻疹の3種類のアレルギー疾患と、
各種の癌の発症リスクとの関連を検証しています。

癌と最初に診断された1744575名を、
癌を発症していない10万名と比較して、
アレルギーと癌の発症との関連を検証しています。
コントロール群では、8.4%にアレルギー性鼻炎が、
気管支喘息が3.45%、蕁麻疹が0.78%に認められています。

アレルギー性鼻炎は、
下咽頭癌、食道扁平上皮癌、
子宮頸癌、扁桃咽頭癌、膣外陰部癌の、
それぞれの発症リスクを有意に低下させていました。
(44%から21%のリスク低下)

喘息は肝臓癌のリスクを、
18%(95%CI: 0.75から0.91)有意に低下させましたが、
それ以外の種類の癌ではそうした予防効果は確認出来ませんでした。

蕁麻疹はT細胞リンパ腫のリスクを、
逆に4.12倍(95%CI: 3.43から4.95)有意に増加させていました。
他の癌については効果はまちまちでしたが、
少なくとも明確な予防効果は認められませんでした。

このようにアレルギー性鼻炎のあることは、
多くの癌において予防的に働く可能性があり、
喘息も肝臓癌においては予防効果のある可能性がありますが、
蕁麻疹はそれとは異なり、
血液由来の癌のリスクを増加させていました。

この現象が一体何を意味しているのか、
現時点では何とも言えませんが、
鼻炎のあることが粘膜周囲から発症する癌の、
リスク低下に結び付いていることは、
免疫の調節に関連している可能性を想像させますし、
蕁麻疹は他のアレルギー素因とは、
別個に発症することもありますから、
癌の発症リスクとの関連が別個である、
という知見は非常に興味深く、
今後の検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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