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熱いお茶と食道癌リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
熱いものと食道癌リスク.jpg
2019年のInternational Journal of Cancer誌に掲載された、
熱いお茶の飲用と食道癌リスクとの関連を検証した論文です。

食道癌(扁平上皮癌)のリスクとしては、
飲酒(特にアルコール濃度の高いもの)と喫煙、
そして熱い物を飲んだり食べたりすることが知られています。

ただ、喫煙やアルコールと比較すると、
熱い物を摂る習慣のリスクについては、
あまり明確なことが分かっていません。
食道癌の患者に聞き取りをして比較した、
といったデータが殆どで、
対象者を登録して長期の経過を追って癌の発症を比較した、
というような研究は存在していませんでした。

今回の研究はイランで施行された、
大規模な疫学研究のデータを活用して、
登録時のお茶の好みの温度や飲み方と、
その後の食道癌の発症リスクとの関連を検証しています。

対象となっているのは、
40から75歳の50045名の一般住民で、
登録時にお茶の飲み方や温度を聞き取りし、
その後中央値で10.1年の経過観察を行っています。

その結果、
観察期間中に317件の食道扁平上皮癌が診断されました。

アルコールや喫煙など他の関連リスク因子を補正した上で、
好みのお茶の温度と癌リスクとの関連を見てみると、
温度が60度未満と比較して60度以上では、
食道扁平上皮癌の発症リスクは1.41倍(95%CI: 1.10 から1.81)、
有意に増加していました。

また、ぬるいお茶が好きな場合と比較して、
非常に熱いお茶が好きと答えた人では、
食道扁平上皮癌の発症リスクが2.41倍(95%CI: 1.27から4.56)、
これも有意に増加していました。

更に、お茶1杯を6分以上掛けてゆっくり飲む習慣と比較して、
2分未満で早く飲む人は、
食道扁平上皮癌の発症リスクが1.51倍(95%CI: .1.01から2.26)、
これも有意に増加していました。

このように、
初めて大規模な前向け研究で、
熱い飲み物を早く飲むことが、
食道扁平上皮癌の発症リスクとなることが、
示された意義はあり、
今後別の地域や集団においても、
同種の研究が積み重ねられることを期待したいと思います。

熱いものはほどほどに…

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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