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ネクタイによる脳血流低下のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ネクタイによる首の圧迫.jpg
2018年のNeuroradiology誌に掲載された、
ネクタイを締めることによる脳への影響を検証した論文です。

これはまあ、肩の凝らない小ネタ、
的な性質のものです。

僕はネクタイはそう嫌いな方ではなく、
冬場以外はネクタイを締めて仕事をしています。
(冬場はほぼタートルネック)
緩く締めるのはあまり好きではなく、
固く締めていることが通常です。

ただ、ネクタイが嫌いという方は結構多くて、
その理由は主に、
「首が締め付けられて息苦しくなる」
ということにあるようです。

首を強く締めることにより、
頸静脈の血流が低下することは容易に想定が出来ます。
そのことにより脳内が鬱血することも可能性がありそうです。

これに関してはこれまでに幾つかの研究がありますが、
それほど厳密で実証的なものはあまりないようです。

今回の研究はMRIによる血流測定を使用したもので、
13人の男性ボランティアに、
きつくネクタイをした状態と、
しない状態、
またネクタイをしてからそれを取った状態での、
脳内の血流と頸静脈の血流の変化を計測しています。

その結果、
ネクタイをすることにより脳血流は7.5%低下し、
ネクタイを外しても更に5.7%の低下が持続しました。
一方で頸静脈の血流の低下は確認されませんでした。

脳血流量は脳の静脈圧や脳血管抵抗が高いほど、
低下すると考えられていますから、
首をネクタイで圧迫されることにより、
頸静脈圧が上昇し、頭蓋内圧が上昇するのであれば、
脳血流の低下は説明が可能です。

ただ、実際には今回の計測において、
頸静脈の血流の変化は確認されていません。
しかも脳血流の低下は、
ネクタイを緩めた後も15分は継続していました。

ネクタイによる脳血流低下のメカニズムは、
そう単純なものではなさそうです。

この試験ではネクタイは被験者が「ややきつい」
と感じる程度に締められていて、
血流の低下は最も大きくて10%程度ですから、
病的なレベルのものではありません。

従って、あまり今回の結果を重要視し過ぎる必要はないのですが、
ネクタイがきつく感じる人は、
無理にきつく締めない方が健康的にも良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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