若い時の高血圧が生命予後に与える影響について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のJAMA誌に掲載された、
40歳未満の高血圧の予後を検証した論文です。
2017年のアメリカの高血圧のガイドライン(ACC/AHAガイドライン)において、
高血圧の基準はそれまでの140/90mmHgから、
130/90mmHgに引き下げられました。
具体的には、
収縮期血圧が120mmHg未満で拡張期血圧が80mmHg未満が正常血圧となり、
収縮期血圧が120から129で、拡張期血圧が80から89(どちらかを満たす)は血圧上昇、
収縮期血圧が130から139で、拡張期血圧が85から89(どちらかを満たす)がステージ1高血圧、
従来の高血圧の基準である、
収縮期血圧が140以上で、拡張期血圧が90以上(どちらかを満たす)は、
ステージ2高血圧とされたのです。
ステージ1高血圧でその後10年の心血管疾患リスクが、
10%を超えると試算された場合には、
降圧剤を含む積極的な治療が適応となります。
ただ、これは原則として、
年齢が40から79歳に適応される基準です。
高血圧を治療するかどうかは、
その後の心血管疾患リスクの試算を元にして判断されるのですが、
その試算は元々40歳から79歳にしか適応されないからです。
それでは、40歳未満でステージ1の高血圧の基準を満たす時には、
どのような指標で治療の可否を判断するべきなのでしょうか?
特に信頼のおける指標はない、
というのが実状です。
何故指標が存在しないかと言えば、
40歳未満の高血圧の予後が、
はっきりと分かっていないからです。
そこで今回の研究では、
アメリカの4つの都市において、
18から30歳のアフリカ系及び白人のアメリカ人トータル5115名を登録し、
30年経過観察するという大規模な疫学データを活用して、
40歳未満の時点での血圧値が、
その後に与える影響を検証しています。
その結果、
正常血圧は53%で、
血圧上昇が9.2%、
ステージ1高血圧が24.6%、
ステージ2高血圧が13.2%でした。
中間値で18.8年の経過観察において、
正常血圧群と比較して、
心血管疾患の発症リスクは、
血圧上昇群で1.67倍(95%CI: 1.01から2.77)、
ステージ1高血圧群で1.75倍(95%CI: 1.22から2.53)、
ステージ2高血圧群で3.49倍(95%CI: 2.42から5.05)、
それぞれ有意に増加していました。
こちらをご覧下さい。
同様に総死亡のリスクを血圧値群ごとに図示したものです。
この場合血圧上昇群とステージ1高血圧では、
正常血圧と比較して有意なリスクの増加はありませんでしたが、
ステージ2高血圧では明確なリスクの増加が認められました。
このように今回のデータにおいて、
40歳未満という年齢においても、
血圧が正常を上回ると、
軽度であっても心血管疾患のリスクは増加しています。
ただ、そのリスクが明確となるのは、
矢張りステージ2の高血圧からでした。
今回のデータにおいては、
血圧測定は特に資格のないスタッフによっても行われていて、
全体のほぼ半数には血圧上昇がある、
という結果になっています。
この比率はあまりに高すぎるという気もします。
掲載誌の解説記事には、
自律神経の緊張や白衣高血圧のような病態が、
血圧値に影響した可能性が指摘されています。
今回の検証において、
40歳未満の年齢層においても、
血圧上昇には一定のリスクがあることが確認されました。
ただ、これは治療の有効性を確認したものではないので、
そうした対象者にどのような対応するべきかは、
まだ明確な方針がないという点には注意が必要です。
こうした検証は今後も行われる必要があると思いますが、
現状40歳未満の年齢においても、
特にステージ2の高血圧の基準を満たす場合には、
明確な心血管疾患のリスクの増加があることを想定して、
対応を検討する必要があるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のJAMA誌に掲載された、
40歳未満の高血圧の予後を検証した論文です。
2017年のアメリカの高血圧のガイドライン(ACC/AHAガイドライン)において、
高血圧の基準はそれまでの140/90mmHgから、
130/90mmHgに引き下げられました。
具体的には、
収縮期血圧が120mmHg未満で拡張期血圧が80mmHg未満が正常血圧となり、
収縮期血圧が120から129で、拡張期血圧が80から89(どちらかを満たす)は血圧上昇、
収縮期血圧が130から139で、拡張期血圧が85から89(どちらかを満たす)がステージ1高血圧、
従来の高血圧の基準である、
収縮期血圧が140以上で、拡張期血圧が90以上(どちらかを満たす)は、
ステージ2高血圧とされたのです。
ステージ1高血圧でその後10年の心血管疾患リスクが、
10%を超えると試算された場合には、
降圧剤を含む積極的な治療が適応となります。
ただ、これは原則として、
年齢が40から79歳に適応される基準です。
高血圧を治療するかどうかは、
その後の心血管疾患リスクの試算を元にして判断されるのですが、
その試算は元々40歳から79歳にしか適応されないからです。
それでは、40歳未満でステージ1の高血圧の基準を満たす時には、
どのような指標で治療の可否を判断するべきなのでしょうか?
特に信頼のおける指標はない、
というのが実状です。
何故指標が存在しないかと言えば、
40歳未満の高血圧の予後が、
はっきりと分かっていないからです。
そこで今回の研究では、
アメリカの4つの都市において、
18から30歳のアフリカ系及び白人のアメリカ人トータル5115名を登録し、
30年経過観察するという大規模な疫学データを活用して、
40歳未満の時点での血圧値が、
その後に与える影響を検証しています。
その結果、
正常血圧は53%で、
血圧上昇が9.2%、
ステージ1高血圧が24.6%、
ステージ2高血圧が13.2%でした。
中間値で18.8年の経過観察において、
正常血圧群と比較して、
心血管疾患の発症リスクは、
血圧上昇群で1.67倍(95%CI: 1.01から2.77)、
ステージ1高血圧群で1.75倍(95%CI: 1.22から2.53)、
ステージ2高血圧群で3.49倍(95%CI: 2.42から5.05)、
それぞれ有意に増加していました。
こちらをご覧下さい。
同様に総死亡のリスクを血圧値群ごとに図示したものです。
この場合血圧上昇群とステージ1高血圧では、
正常血圧と比較して有意なリスクの増加はありませんでしたが、
ステージ2高血圧では明確なリスクの増加が認められました。
このように今回のデータにおいて、
40歳未満という年齢においても、
血圧が正常を上回ると、
軽度であっても心血管疾患のリスクは増加しています。
ただ、そのリスクが明確となるのは、
矢張りステージ2の高血圧からでした。
今回のデータにおいては、
血圧測定は特に資格のないスタッフによっても行われていて、
全体のほぼ半数には血圧上昇がある、
という結果になっています。
この比率はあまりに高すぎるという気もします。
掲載誌の解説記事には、
自律神経の緊張や白衣高血圧のような病態が、
血圧値に影響した可能性が指摘されています。
今回の検証において、
40歳未満の年齢層においても、
血圧上昇には一定のリスクがあることが確認されました。
ただ、これは治療の有効性を確認したものではないので、
そうした対象者にどのような対応するべきかは、
まだ明確な方針がないという点には注意が必要です。
こうした検証は今後も行われる必要があると思いますが、
現状40歳未満の年齢においても、
特にステージ2の高血圧の基準を満たす場合には、
明確な心血管疾患のリスクの増加があることを想定して、
対応を検討する必要があるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。