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糖尿病の心血管疾患リスクとシスタチンC [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療となります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
シスタチンCと心血管疾患.jpg
2018年のthe American Journal of Cardiology誌に掲載された、
2型糖尿病の予後と腎臓関連の検査値との関連についての論文です。

2型糖尿病の患者さんにとって一番の問題は、
この病気があると、
心筋梗塞や脳卒中などの、
動脈硬化に関わる心血管疾患の発症リスクが、
非常に増加することです。

糖尿病はまた、
慢性腎臓病のリスクでもあって、
3大合併症としての糖尿病性腎症は勿論のこと、
軽度の腎機能低下やその兆候であっても、
独立した心血管疾患のリスクとなって、
患者さんの予後に大きな影響を与えると考えられています。

糖尿病に関わる腎機能低下のマーカーとしては、
通常尿蛋白(特に初期の兆候としてのアルブミン排泄量)と、
血液のクレアチニン濃度から推測した、
糸球体濾過量が使用されています。

このいずれかの異常値を、
その後の腎機能低下や心血管疾患のリスクとしているのです。

しかし、
クレアチニンは筋肉量などの影響を大きく受けるので、
同様の目的で使用されるシスタチンCという指標の方が、
より有益ではないか、という説があります。
また、糸球体ではなく尿細管の障害の指標として、
尿中NGALや尿中KIM-1という検査値があり、
こうした指標の評価はまだ定まっていません。

そこで今回の研究では、
糖尿病治療薬の大規模臨床試験のデータを活用して、
複数の腎障害マーカーと、
2型糖尿病の患者さんの心血管疾患リスクとの関連を検証しています。

対象は登録時点で腎機能低下がなく、
心血管疾患のリスクは高い2型糖尿病患者5380名で、
観察期間中の心筋梗塞、脳卒中、及び心血管疾患による死亡を併せたリスクと、
シスタチンC、尿中NGAL、尿中KIM-1、尿中蛋白との関連を検証しています。

中央値で18ヶ月の観察期間中に、
11.5%に当たる621名が心血管疾患を発症し、
上記4種のマーカーはいずれも推計糸球体濾過量とは独立に、
心血管疾患の発症リスクと有意な関連を持っていました。

そして、全ての腎臓マーカーを併せて解析すると、
血中シスタチンC濃度のみが、
独立した心血管疾患のリスクとなっていました。

要するに他の腎機能低下の指標に、
明らかな異常のない段階であっても、
シスタチンCの上昇が、
その後の患者さんの予後を、
鋭敏に予測していた、ということになる訳です。

これはまだ現時点では仮説の域を出ませんが、
今後シスタチンCという指標が、
糖尿病の予後判定のために、
より重要な役割を担うようになるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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