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スタチンの卵巣癌予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
スタチンの卵巣癌予防効果.jpg
2018年のInternational Journal of Cancer誌に掲載された、
コレステロール降下剤の卵巣癌予防効果についての論文です。

スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
その心血管疾患の予防効果は確立されています。

それ以外にスタチンには抗炎症作用や、
免疫調整作用などの作用があるとされていて、
それが抗癌剤の作用増強や癌の進行予防に、
一定の効果があるのではという考え方があり、
それを示唆するデータも発表されています。
ただ、この点についてはまだ、
確立されたものとは言えません。

今回の研究はアメリカにおいて、
卵巣癌を発症した患者さん2040名を、
年齢などをマッチさせた2100名のコントロールと比較して、
卵巣癌のリスクに対するスタチン使用の影響を検証しています。

その結果、
スタチンの使用は未使用と比較して、
卵巣癌の発症リスクを32%(95%CI:0.54から0.85)
有意に低下させていました。

ここでスタチンを、
組織移行などにおいて差のある、
水溶性スタチン(プラバスタチン、ロスバスタチン)と、
脂溶性スタチン(シンバスタチン、アトルバスタチン、
ピタバスタチン、フルバスタチン)とに分けて分析すると、
卵巣癌の有意な低下は脂溶性スタチンにおいて、
著明に認められ、水溶性スタチン単独では、
有意には認められませんでした。
また、このスタチンの予防効果は、
49歳以降で使用した場合で、
使用期間は2から4.9年において最も顕著に認められました。

このように、
スタチンの使用により、
今回の疫学データにおいても、
卵巣癌の有意な低下が認められました。

ただ、結果は使用期間が5年を超えると有意ではないなど、
明確な用量依存性がなく、
今回の検証でもその効果は、
明確に実証されたとは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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