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納豆アレルギーとそのメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
納豆アレルギー.jpg
2004年のJ Allergy Clin Immunol誌に掲載されたレターですが、
納豆による遅発性のアナフィラキシーを、
初めて発表した1例報告です。

症例は36歳の男性で、
原因不明の重症のアレルギー反応である、
アナフィラキシーを繰り返していました。

アナフィラキシーというのは、
通常はその原因となるアレルゲンへの曝露から、
30分以内に生じることが一般的です。
しかし、食物アレルギーにおいては、
ごく稀に急性反応なしに、
数時間以上の時間が経ってから生じることが報告されています。

この事例では、
早朝の目覚める前の時間帯に、
アナフィラキシーの症状が繰り返されていました。
通常はそれを夕食と結びつけて考えるということはしません。
夕食後10から12時間が経っていたからです。

しかし、アナフィラキシーを起こす前日の夕食では、
必ず納豆を食べていたことが分かり、
その関連が疑われるようになりました。

納豆の主成分は大豆ですが、
大豆の抗原に対する特異的IgEの増加は認められず、
皮膚反応も陰性でした。
ところが、納豆自体からの抽出物を使用して、
皮膚反応を施行すると、
今度はアレルギーの陽性反応が認められました。

つまり、大豆には含まれず、
その後の発酵などの行程による生成物が、
アレルゲンであった可能性が高いと思われたのです。

それでは、
何故通常はすぐに起こるアナフィラキシーが、
この納豆アレルギーでは10時間も経ってから起こったのでしょうか?

現状の仮説は次のようなものです。

納豆には特有の粘りけがあり、
これはポリガンマグルタミン酸という粘調成分によるものですが、
このポリガンマグルタミン酸が、
納豆由来のアレルゲンを包み込んで、
薬の徐放剤のように、
ジワジワとアレルギー反応を生じさせるのではないか、
と考えられているのです。

この納豆アレルギーについては、
最近更に興味深い知見があります。

納豆アレルギーの患者さんには、
サーフィンなどのマリンスポーツをしている人が多く、
その原因としてクラゲによる刺傷が、
影響しているという仮説があります。

これはどういうことかと言うと、
クラゲの触手内で、
納豆の粘液成分に似たポリガンマグルタミン酸が産生され、
その抗原に反応することが前段階となり、
次に納豆を食べた時に、
アナフィラキシーが誘導されると想定されるのです。

この考えでは、
納豆アレルギーの抗原は、
ポリガンマグルタミン酸の構造の一部にあって、
それがゆっくり体内で分解されることにより、
遅発性のアナフィラキシーを引き起こすのでは、
というメカニズムが想定されています。

この現象は大変興味深いものですが、
実際には納豆はほぼ日本のみの食品なので、
海外での研究はない、ということと、
日本においても一部の研究グループのみで、
報告されているので、
現状そのメカニズムも抗原の正体も、
まだ1つの仮説に過ぎない、
という点には注意が必要です。

今後のより幅広い検証に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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