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「マクガワン・トリロジー」(2018年小川絵梨子演出版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

台風が近づいていますので、
受診予定の方はくれぐれもご注意下さい。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
マクガワン・トリロジー.jpg

アイルランドを舞台に、
IRAの殺し屋を主人公にした2014年の海外戯曲を、
翻訳芝居の演出に長けた小川絵梨子さんが演出し、
主役を人気者の松坂桃李さんが演じた舞台が、
今世田谷パブリックシアターで上演されています。

これは3幕のお芝居で、
それぞれ別の場面で、
結果として登場人物全てを、
主人公が殺してしまう、
という趣向になっています。

それ自体はなかなか面白いのですが、
台詞で心の揺れ動きをレトリックで表現する、
という感じのお芝居で、
ジェイムズ・ジョイスが出て来たり、
パンクロックもシェイクスピアも出て来たりするので、
翻訳劇としてはかなりハードルが高く、
とても日本で上演して楽しめる、
という作品ではありませんでした。

IRAの殺し屋というと、
マクドナーの「ウィー・トーマス」が印象深いのですが、
長塚圭史さんによる翻訳上演は、
外連味たっぷりで、
前半殺し屋がいつ銃を撃つのか、
それだけでワクワクする感じがありました。
またストーリー自体にもひねりがあり、
予期せぬ展開やブラックユーモア、
風変わりなキャラなどに満ちていて、
それが翻訳劇の退屈さをすくい取っていました。

そうしたワクワクが、
今回の上演には全くありません。

小川さんの演出は堅実なもので、
オペラを彷彿とさせるような欧米的なセットが美しく、
休憩のない2幕から3幕への転換を、
それ自体見せ場にするという趣向など、
さすが、と感じる部分はあったのですが、
いかんせん素材が地味過ぎて、
とても娯楽劇として成立してはいませんでした。

キャストも皆熱演ではあるのですが、
台詞で心理を語るという感じのお芝居なので、
元々翻訳調で不自然な台詞を、
喋るだけで精一杯という感じがあって、
台詞の堅さを超えた生の実感のようなものを、
舞台に漂わせるまでには至っていませんでした。

主役の松坂さんは熱演で、
これまでとはまた違った側面を見せていましたから、
ファンの方には見る価値のある作品だったと思いますが、
翻訳劇の上演としては、
「どうして、こんなものを選んでしまったの?」
という違和感が最後まで抜けませんでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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