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BMIと死亡リスクとの関連について(心血管疾患の状態による解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。

BMIと死亡リスク.jpg
2018年のthe American Journal of Cardiology誌に掲載された、
体格の指標であるBMIという数値と、
生命予後との関連を、
心血管疾患のリスクなどで解析した論文です。

BMIというのはキログラムで表示した体重の数値を、
メートルで表示した身長で2回割り算して得られる数字で、
この数値が25以上であると過体重と判断され、
世界的にも30を超える状態は肥満と診断されます。

一般住民や心血管疾患の既往のない集団での疫学データにおいては、
BMIが20から24.9の間が最も死亡リスクが低く、
25を超えると総死亡のリスクも、
心血管疾患の発症リスクもいずれも増加に転じます。

しかし、その一方で心血管疾患を持つ患者さんの集団では、
BMIが20から24.9より高い、過体重や軽度の肥満の方が、
死亡リスクが低いという、
かなり意外な結果が複数報告されています。

これをBMIパラドックスと呼ぶこともあります。

何故、心血管疾患の患者さんでは、
体重が重い方が予後が良いのでしょうか?

今回の研究はこれまでの疫学データをまとめて解析する手法で、
心血管疾患の既往のない集団と、
心血管疾患で治療中の安定した状態にある集団、
そして急性冠症候群の状態にある集団の、
3種類の集団毎に、
生命予後とBMIとの関連を比較しています。

その結果、
心血管疾患のない集団では、
最も死亡リスクが低いのは27.2であったのに対して、
安定した心血管疾患の集団では28.1、
急性冠症候群の集団では30.9となっていました。

このように個々の集団において、
心血管疾患との関係の違いにより、
死亡リスクを低下させるBMIの数値には明確な違いが認められました。

またこの集団を全て併せた上で、
喫煙や既往歴などから死亡リスクを推計し、
そのリスクの高さによって3つの分類を行っても、
高リスクである方が、
総死亡のリスクを最も低下させるBMIは上昇していました。

それを図示したものがこちらになります。
BMIと死亡リスクの図.jpg
このように、
どうやら心血管疾患に関わらず、
病気のリスクが高く元々死亡リスクが高い集団では、
そうでない集団より、
やや体重が多くBMIが高い方が、
生命予後が良いという傾向が、
トータルに認められると考えて間違いはないようです。

その原因は不明ですが、
上記文献の著者らは、
生命保持における内臓脂肪などの持つ役割が、
リスクの高い集団では大きいのではないか、
というような推測をしています。

いずれにしても、
その人にとっての健康的なBMIには違いがあり、
それを無視して20から24.9を至適とする、
というような考え方は、
適切ではないと考えた方が良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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