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食べ物の種類と脳内報酬系との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
糖と脂質の脳への影響.jpg
2018年のCell Metabolism誌に掲載された、
食事の種類と脳内報酬系と言われる脳の機能との関連を検証した、
なかなか興味深い論文です。

肥満というのは現代の深刻な健康問題ですが、
スナック菓子や菓子パン、ケーキなどの、
見ると思わず食べたくなるような食品が販売され、
それを食べ過ぎてしまうことが、
その1つの大きな要因として考えられます。

そもそも動物というのは、
自分にとってその食べ物が、
どのくらいのカロリーを有しているのかを、
なかば本能的に理解をしていて、
食品の量ではなくカロリーで、
どのくらい食べれば良いのかを、
脳が判断していると考えられています。

人間を含む哺乳類において、
その仕組みは脳の中脳辺縁系という部分で、
コントロールをされていると理解されています。

ただ、この中脳辺縁系は脳内報酬系などと呼ばれているように、
ドーパミン系の神経を興奮させて、
その部位がある行動で刺激されると、
それをある種の快感と判断して、
その行動が繰り返されるという側面を持っています。

生存のために最適な食品を食べた時に、
それが中脳辺縁系を刺激して、
その食行動が習慣化されれば、
それはその生物の生存において意義のあることですが、
今の人間の環境のように、
周りに食べ物があふれていて、
不健康でカロリーも過多な食品が、
見た目をインスタ映え良く粉飾して、
味も甘く香りもそそるように魅力的な工夫が凝らされていると、
それに騙されてしまうという可能性も、
脳内報酬系の性質としては否定は出来ません。

今回の研究は健康なボランティアを対象として、
糖質(炭水化物)主体の食品と、
脂質主体の食品、
そして脂質と糖質とを両方多く含む食品の3種類に分け、
同じカロリーのポーションとして被験者に見せ、
どれを好むかという傾向と、
その時に脳に起こる変化を、
機能性MRIを使用して比較検証したものです。

これはカロリーは同一なので、
生物の本能としては、
3種類で同等の反応が出ることが正常なのです。

具体的には糖質主体の食品はキャンデーやパスタやパン、
脂質主体の食品はチーズやサラミ、
糖質と脂質を含む食品はケーキやビスケットなどが映像になっています。

その結果、
脂質や糖質主体の食品よりも、
多くの人が脂質と糖質を両方含む食品をより好み、
機能性MRIにおいて、
脳内報酬系が活発に反応していることが確認されました。

このように、
脂質と糖質を含む人工的な食品を、
人間はより脳で好むという性質があるので、
それが元々の適正なカロリー摂取の仕組みを狂わせて、
肥満などの原因の1つになっているのではないか、
というのが上記論文の筆者らの考えであるようです。

これは画像のイメージにも偏りがありますし、
食品の画像の好みの問題であって、
実際の食行動に結び付くかどうかは、
推測に過ぎないという気がしますが、
食品メーカーなどの過剰な宣伝によって、
人間の本来の食行動がゆがめられ、
その本質が脳内報酬系にあるのでは、
という推論は大変興味深く、
今後より踏み込んだ知見を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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