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コーヒーの生命予後改善効果とカフェイン代謝(UKバイオバンクの解析) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
コーヒーとカフェイン代謝と健康.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
コーヒーの生命予後への効果と、
カフェイン代謝に関わる遺伝子変異との関連を検証した論文です。

コーヒーを飲む習慣が、
総死亡のリスクを減少させ、
心血管疾患や一部の癌のリスクも減少させることは、
世界各地で行われた大規模な疫学データから、
ほぼ実証された事実です。

その結果を受け、
2015年のアメリカの健康的な食事習慣のガイドラインでは、
1杯8オンス(ほぼ240ミリリットル)のカップで、
1日5杯までのコーヒーを飲む習慣を、
健康的な食習慣として推奨しています。

ただ、1日5杯を超えるコーヒーにおいても、
健康上の害はないのか、と言う点については、
まだ明確な結論は出ていません。

コーヒーはカフェインを多く含む飲み物で、
カフェインには常用性があり、
また交感神経を刺激して心臓にも負荷を掛けるので、
大量のカフェインが有害であることもまた事実です。

従って、コーヒーが健康に良いとは言っても、
飲み過ぎれば害になることは間違いがなさそうです。

ここで1つ問題なのは、
カフェインを身体で代謝する酵素には遺伝子のタイプがあって、
そのタイプによっては代謝が極端に悪く、
そうでない人と比べて、
血液のカフェイン濃度が高くなる可能性が想定されるということです。

実際にカフェインの代謝酵素の活性が低い人に限って、
カフェインの摂取量が多いと心筋梗塞のリスクの増加に繋がった、
というような報告も過去には発表されています。

その遺伝子のタイプによる影響というのは、
どの程度のものなのでしょうか?

そうした点を検証する目的で、今回の研究では、
UKバイオバンクという、
世界的に有名な医療情報のデータベースを活用して、
50万人近い対象者の、
コーヒーの摂取量と健康状態、
そしてカフェインの代謝酵素のタイプとの関連を検証しています。

10年を超える観察期間における総死亡のリスクは、
コーヒーを全く飲まない群と比較した時に、
1日1杯で8%(95%CI: 0.87から0.97)、
2から3杯で12%(95%CI: 0.84から0.93)、
4から5杯で12%(95%CI: 0.83から0.93)、
6から7杯で16%(95%CI: 0.77から0.92)、
8杯以上で14%(95%CI: 0.77から0.95)と、
それぞれ有意に低下していました。

同様の傾向はインスタントコーヒーでも、
カフェインレスのコーヒーでも認められ、
カフェインの代謝酵素に関わる遺伝子の多型は、
その死亡リスクの低下に影響を与えていませんでした。

このように、
今回の結果では1日8杯以上というコーヒーにおいても、
総死亡のリスクの低下は有意に認められていて、
どうやらカフェインとその健康効果との間には、
あまり関連はなさそうだ、という結果になっています。

ただ、これは相反するようなデータ
(カフェインの代謝物濃度と健康影響が相関した)
もこれまでに報告されていて、
カフェインの代謝産物の影響なども複雑に絡み合っているので、
今回のデータのみをもって、
コーヒーの効果はカフェインと無関係とは言い切れないのですが、
大規模データでこうした結果の出た意義は大きく、
コーヒーの健康影響への議論は、
まだまだ加熱することになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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