「イル・トロヴァトーレ」(2018年イタリア・バーリ歌劇場来日公演) [オペラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
久しぶりのオペラという感じでしたが、
イタリア・バーリ歌劇場の来日公演として上演された、
ヴェルディの「イル・トロヴァトーレ」を聴きに行きました。
「イル・トロヴァトーレ」はヴェルディ初期の傑作で、
物語はゴシックロマンの気分漂う荒唐無稽なものですが、
テノール、バリトン、ソプラノ、メゾソプラノにそれぞれ名曲があり、
それぞれに聴かせどころがあって、
個人技と見事なアンサンブルの歌唱が魅力です。
この作品はヴェルディとしても古典的なオペラで、
ヘンテコな読み替えの演出はまず成功しません。
ゴシック的な美術と衣装で問題ないのですが、
最近は舞台美術などにはお金を掛けられない公演が殆どなので、
国籍も年代も地域も不明なような、
ただ何となく古めかしい感じがするだけ、
という得体の知れない演出になることが多いように思います。
また、幕の終わり際に唐突に戦ったりする場面があるのですが、
急にバタバタととってつけたように剣を振り回したりする演出が、
これも極めて多いので、
作品世界に浸ることが難しいという欠点があります。
僕はこの作品の全幕上演を聴いたことは比較的少なくて、
思い出す範囲では新国立劇場で最初に上演した時と、
ボローニャ歌劇場が来日した時の2回は確実ですが、
もう1回くらい聴いたかしら、という程度です。
ただ、ソプラノのアリアはコロラトゥーラを駆使した華麗な名曲が2つあり、
これはリサイタルなどで何度も聴いています。
今回の上演は予定ではレオノーラにバルバラ・フリットリ、
マンリーコにフランチェスコ・メーリ、
ルーナ伯爵にアルベルト・カザーレ、
アズチェーナにミリヤーナ・ニコリッチという、
なかなかの豪華版で期待が高まりました。
ベテランのフリットリにカザーレ、
今勢いのあるメーリとニコリッチと、
バランスもとても良い感じです。
ところが、何となく予想の通りと言えなくもありませんが、
肝心のフリットリは急性気管支炎の診断書と共にドタキャンとなり、
急遽スヴェトラ・ヴァシレヴァがレオノーラを歌いました。
ヴァシレヴァもそれなりのレベルのソプラノで、
僕は2001年にフィレンチェ歌劇場の「椿姫」を歌った時から聴いていますが、
それなりに歌えるものの、
ちょっと胸に来る感じはない、
というところが当時からあり、
今もそうした感じは変わっていませんでした。
それなりに頑張っているのでしょうが、
ソツのない感じだけがして、
熱のようなものが伝わって来ないのが残念です。
ただ、何となくですが、
ヴァシレヴァをすぐ呼べるという辺りに、
フリットリの降板というかドタキャンは、
想定内であったのかな、という気もします。
さて、今回はそれでもなかなかのキャストが揃い、
声の競演としてはまずまず聞き応えのある上演でした。
特にカザーレの頑張りと、
ニコリッチの勢いのある感じが良かったですね。
メーリは、良いのですが、
もう少し高音がバシッと出ると良いのになあ、
と感じました。
3幕ラストはちょっと脱力でしたね。
オケもそれほどミスタッチはなかったし、
今の日本の環境では、
望みうる最良に近いレベルの「イル・トロヴァトーレ」だったと思います。
ただ、装置はただの平面書き割りのみで、
それはそれで良いのですが、
戦いの場面などは、
歌手がただジタバタしているだけといった風情で、
どちらかと言えばお芝居としてオペラに接している立場なので、
演出はとても及第点とは言えませんでした。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
久しぶりのオペラという感じでしたが、
イタリア・バーリ歌劇場の来日公演として上演された、
ヴェルディの「イル・トロヴァトーレ」を聴きに行きました。
「イル・トロヴァトーレ」はヴェルディ初期の傑作で、
物語はゴシックロマンの気分漂う荒唐無稽なものですが、
テノール、バリトン、ソプラノ、メゾソプラノにそれぞれ名曲があり、
それぞれに聴かせどころがあって、
個人技と見事なアンサンブルの歌唱が魅力です。
この作品はヴェルディとしても古典的なオペラで、
ヘンテコな読み替えの演出はまず成功しません。
ゴシック的な美術と衣装で問題ないのですが、
最近は舞台美術などにはお金を掛けられない公演が殆どなので、
国籍も年代も地域も不明なような、
ただ何となく古めかしい感じがするだけ、
という得体の知れない演出になることが多いように思います。
また、幕の終わり際に唐突に戦ったりする場面があるのですが、
急にバタバタととってつけたように剣を振り回したりする演出が、
これも極めて多いので、
作品世界に浸ることが難しいという欠点があります。
僕はこの作品の全幕上演を聴いたことは比較的少なくて、
思い出す範囲では新国立劇場で最初に上演した時と、
ボローニャ歌劇場が来日した時の2回は確実ですが、
もう1回くらい聴いたかしら、という程度です。
ただ、ソプラノのアリアはコロラトゥーラを駆使した華麗な名曲が2つあり、
これはリサイタルなどで何度も聴いています。
今回の上演は予定ではレオノーラにバルバラ・フリットリ、
マンリーコにフランチェスコ・メーリ、
ルーナ伯爵にアルベルト・カザーレ、
アズチェーナにミリヤーナ・ニコリッチという、
なかなかの豪華版で期待が高まりました。
ベテランのフリットリにカザーレ、
今勢いのあるメーリとニコリッチと、
バランスもとても良い感じです。
ところが、何となく予想の通りと言えなくもありませんが、
肝心のフリットリは急性気管支炎の診断書と共にドタキャンとなり、
急遽スヴェトラ・ヴァシレヴァがレオノーラを歌いました。
ヴァシレヴァもそれなりのレベルのソプラノで、
僕は2001年にフィレンチェ歌劇場の「椿姫」を歌った時から聴いていますが、
それなりに歌えるものの、
ちょっと胸に来る感じはない、
というところが当時からあり、
今もそうした感じは変わっていませんでした。
それなりに頑張っているのでしょうが、
ソツのない感じだけがして、
熱のようなものが伝わって来ないのが残念です。
ただ、何となくですが、
ヴァシレヴァをすぐ呼べるという辺りに、
フリットリの降板というかドタキャンは、
想定内であったのかな、という気もします。
さて、今回はそれでもなかなかのキャストが揃い、
声の競演としてはまずまず聞き応えのある上演でした。
特にカザーレの頑張りと、
ニコリッチの勢いのある感じが良かったですね。
メーリは、良いのですが、
もう少し高音がバシッと出ると良いのになあ、
と感じました。
3幕ラストはちょっと脱力でしたね。
オケもそれほどミスタッチはなかったし、
今の日本の環境では、
望みうる最良に近いレベルの「イル・トロヴァトーレ」だったと思います。
ただ、装置はただの平面書き割りのみで、
それはそれで良いのですが、
戦いの場面などは、
歌手がただジタバタしているだけといった風情で、
どちらかと言えばお芝居としてオペラに接している立場なので、
演出はとても及第点とは言えませんでした。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。