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腎機能低下時のメトホルミンの安全性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メトホルミンと乳酸アシドーシス.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
2型糖尿病の世界的な第一選択薬であるメトホルミンの、
腎機能低下時の安全性についての論文です。

メトホルミンはインスリン抵抗性を改善する作用を持つ、
飲み薬の血糖降下剤で、
血糖を低下させると共に、
糖尿病の患者さんの長期予後にも良い影響を与えることが、
精度の高い多くの臨床試験で実証されていることから、
2型糖尿病の基礎薬としての位置が、
世界的に確立されている薬です。

ただ、その副作用である乳酸アシドーシスのリスクが増加する懸念から、
腎機能の低下している患者さんに対しては、
慎重投与という対応が取られています。

腎機能は血液のクレアチニンという数値から推算される、
糸球体濾過量(eGFR)という指標で臨床的には区分けされます。

アメリカのFDAは、
現在ではこの指標が30mL/min/1.73㎡未満は、
メトホルミンの禁忌で、
45未満の時は新規導入は不可としています。

別のガイドラインにおいては、
30から60は慎重投与という扱いであったり、
30から45では低用量で使用する、
というように記載されているものもあります。

ただ、実際にはその根拠は、
それほど科学的なものではありません。
実臨床でのデータは不足しているのです。

そこで今回の研究では、
アメリカの有名な医学研究施設である、
ゲイシンガー・ヘルスシステムの医療データを活用して、
推算糸球体濾過量とメトホルミンの使用の安全性との関連を検証しています。

67578名の新規メトホルミン使用者と、
14439名のSU剤という経口糖尿病薬の使用者などを比較して、
乳酸アシドーシスの発症リスクを検証したところ、
推算糸球体濾過量が30以上の場合には、
他の治療と比較して有意な乳酸アシドーシスの増加は認められませんでしたが、
30未満では2.07倍(95%CI: 1.33から3.22)と、
有意な副作用の増加が認められました。

今回の実臨床のデータによる検証では、
メトホルミンの乳酸アシドーシスのリスクは、
推算の糸球体濾過量が、
30mL/min/1.73㎡で増加し、
それ以上では明確な増加はないことが確認されました。

この知見も踏まえて考えると、
現状のFDAの見解は、
まずは妥当なものとそう考えて良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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