水分を多く摂ると腎機能は低下しにくいのか? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のJAMA誌に掲載された、
水分摂取を増やすことが、
慢性腎臓病の患者さんの予後改善に結び付くかどうかを、
検証した論文です。
水を沢山飲むと健康に良い、
というのは意外に良く耳にする健康情報ですが、
その根拠が明確にされることはあまりなく、
具体的な水分の摂取量についても、
曖昧であることが殆どです。
アメリカでは1日にグラス8杯の水を飲むと良い、
というように言われることが多く、
これは1945年に専門機関が、
1日の水分量は2.5リットルを推奨したことから来ています。
ただ、この推奨は水分量全体でということで、
その大部分は食事から摂取していることが前提となっています。
つまり、食事以外に2.5リットルを追加で飲め、
という意味ではありません。
こうした水分摂取の推奨の殆どは、
根拠となる臨床データなどはないものですが、
唯一腎機能の低下予防という観点では、
一定の根拠が存在しています。
腎不全のモデル動物においては、
より多くの水分を摂取することが、
腎機能低下の要因となる、
AVP(抗利尿ホルモン)を抑制し、
腎機能の低下を予防することが報告されています。
人間においても水分摂取量が多いほど、
腎機能が保たれ、尿路結石のリスクが減少することが、
報告されています。
ただ、実際に腎機能が低下した慢性腎臓病の患者さんで、
より水分を多く摂ることが予後の改善に繋がるかどうかは、
これまでに明確な結論が出ていませんでした。
そこで今回の研究ではカナダの複数の腎臓病クリニックにおいて、
ステージ3の慢性腎臓病の患者
(推算糸球体濾過量が30から60mL/min/1.73㎡)
で1日の尿量が3リットル未満の631名をくじ引きで2つの群に分け、
一方は通常の飲水量を維持し、
もう一方はより多くの水分摂取を促して、
1年間の経過観察を行っています。
水分の具体的な摂取量はこちらをご覧下さい。
これはこの量の水分を、
食事以外に摂るという意味ですが、
たとえば体重が70キロ以上の男性では、
1日に1.5リットルの負荷を目指し、
3回の食事で500ミリリットルずつ水を飲む、
ということになります。
これは1つの目安ですので変動はあるのですが、
実際には平均で登録時には各群とも、
1日尿量は1.9リットル程度で変わらないのですが、
それが水分摂取群では、
1年後には平均で0.6リットル増加しています。
この水分負荷を行なうことにより、
AVP(抗利尿ホルモン)の状態を反映するコペプチン濃度は、
未施行と比較して有意に低下し、
腎機能の指標の1つであるクレアチニンクリアランスにも、
有意な低下の抑制が認められました。
ただ、今回主な判定目標とした糸球体濾過量については、
両群で有意な差はありませんでした。
今回の結果はそういう訳で、
水分負荷を行なっても腎機能の低下には有意な差はなかった、
ということになるのですが、
数値によっては一定の差は認められ、
どうやら、そう悪くはない、
ということは言えそうです。
今後より試験のデザインを工夫して、
症例数も増やして観察期間も長く取った、
より精度の高い検証が行われる必要があると思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のJAMA誌に掲載された、
水分摂取を増やすことが、
慢性腎臓病の患者さんの予後改善に結び付くかどうかを、
検証した論文です。
水を沢山飲むと健康に良い、
というのは意外に良く耳にする健康情報ですが、
その根拠が明確にされることはあまりなく、
具体的な水分の摂取量についても、
曖昧であることが殆どです。
アメリカでは1日にグラス8杯の水を飲むと良い、
というように言われることが多く、
これは1945年に専門機関が、
1日の水分量は2.5リットルを推奨したことから来ています。
ただ、この推奨は水分量全体でということで、
その大部分は食事から摂取していることが前提となっています。
つまり、食事以外に2.5リットルを追加で飲め、
という意味ではありません。
こうした水分摂取の推奨の殆どは、
根拠となる臨床データなどはないものですが、
唯一腎機能の低下予防という観点では、
一定の根拠が存在しています。
腎不全のモデル動物においては、
より多くの水分を摂取することが、
腎機能低下の要因となる、
AVP(抗利尿ホルモン)を抑制し、
腎機能の低下を予防することが報告されています。
人間においても水分摂取量が多いほど、
腎機能が保たれ、尿路結石のリスクが減少することが、
報告されています。
ただ、実際に腎機能が低下した慢性腎臓病の患者さんで、
より水分を多く摂ることが予後の改善に繋がるかどうかは、
これまでに明確な結論が出ていませんでした。
そこで今回の研究ではカナダの複数の腎臓病クリニックにおいて、
ステージ3の慢性腎臓病の患者
(推算糸球体濾過量が30から60mL/min/1.73㎡)
で1日の尿量が3リットル未満の631名をくじ引きで2つの群に分け、
一方は通常の飲水量を維持し、
もう一方はより多くの水分摂取を促して、
1年間の経過観察を行っています。
水分の具体的な摂取量はこちらをご覧下さい。
これはこの量の水分を、
食事以外に摂るという意味ですが、
たとえば体重が70キロ以上の男性では、
1日に1.5リットルの負荷を目指し、
3回の食事で500ミリリットルずつ水を飲む、
ということになります。
これは1つの目安ですので変動はあるのですが、
実際には平均で登録時には各群とも、
1日尿量は1.9リットル程度で変わらないのですが、
それが水分摂取群では、
1年後には平均で0.6リットル増加しています。
この水分負荷を行なうことにより、
AVP(抗利尿ホルモン)の状態を反映するコペプチン濃度は、
未施行と比較して有意に低下し、
腎機能の指標の1つであるクレアチニンクリアランスにも、
有意な低下の抑制が認められました。
ただ、今回主な判定目標とした糸球体濾過量については、
両群で有意な差はありませんでした。
今回の結果はそういう訳で、
水分負荷を行なっても腎機能の低下には有意な差はなかった、
ということになるのですが、
数値によっては一定の差は認められ、
どうやら、そう悪くはない、
ということは言えそうです。
今後より試験のデザインを工夫して、
症例数も増やして観察期間も長く取った、
より精度の高い検証が行われる必要があると思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。