「女は二度決断する」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2017年製作のドイツ映画で、
ドイツ出身のダイアン・クルーガーが、
母国語で熱演する映画が、
今ロードショー公開されています。
これはトルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督による作品で、
ネオナチによる爆破テロ事件を素材とした、
かなりの問題作です。
ダイアン・クルーガー演じるドイツ人の女性は、
クルド人の男性と彼が麻薬売買で収監中に結婚し、
男の子をもうけるのですが、
ネオナチの無差別テロの標的となり、
夫と子供を失ってしまいます。
犯人と思われるネオナチの若いカップルが捕まりますが、
裁判は主人公の思うようには進みません。
そして、主人公はある決断をすることになるのです。
この映画は日本の観客の感想も、
だいぶ割れている感じなのですが、
それは1つにはラストの主人公の決断が、
倫理的には確実に許されないものなので、
そこに対するある種の拒否反応もあるのではないかと思います。
ただ、一昔前の日本映画など、
こんな感じの映画ばかりだったと思いますし、
映画の中ではそこに至るまでの主人公の心理が、
段階を踏んで説得力を持って描かれているので、
個人的には映画という虚構としては、
ありではないかと思いました。
普通こうした映画では、
主人公は善人で同情するべき存在として描かれるのですが、
この映画はそうではなくて、
主人公の夫は裏社会とも関係のある人物で、
結婚自体収監中ですし、
主人公も悲劇の後で麻薬を使用して取り調べを受けています。
夫の遺体を夫の両親には渡さないと、
一方的に身勝手な振る舞いもしますし、
直情的で後先のことも考えずに行動して、
あちこちでトラブルを起こしてしまいます。
ただ、こうしてディテールがリアルに描かれているので、
問題の複雑さがより露になっていると思いますし、
主人公の心情も、
より説得力を持って観客に届いているのだと思います。
ダイアン・クルーガーは、
精魂を込めたことの感じられる熱演で、
観客が感情移入することの難しい厄介な役柄を、
見事に演じていたと思います。
演出は緻密かつ的確で細部に緩みがなく、
特に中段の裁判シーンが迫力があり優れていました。
ただ、それだけで終わらないのがこの映画の凄みで、
後半はギリシャに舞台を移し、
明らかにゴダールの「気狂いピエロ」を意識した、
青い空と海とが混じり合う、
衝撃的なラストに結びつけた辺りも鮮やかだと思いました。
このようにハリウッド製や日本映画の規制だらけの世界からは、
一線を画した優れた映画で、
好き嫌いはあるかと思いますが、
劇場に足を運ぶ値打ちは間違いなくあると思います。
なかなか面白いですよ。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2017年製作のドイツ映画で、
ドイツ出身のダイアン・クルーガーが、
母国語で熱演する映画が、
今ロードショー公開されています。
これはトルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督による作品で、
ネオナチによる爆破テロ事件を素材とした、
かなりの問題作です。
ダイアン・クルーガー演じるドイツ人の女性は、
クルド人の男性と彼が麻薬売買で収監中に結婚し、
男の子をもうけるのですが、
ネオナチの無差別テロの標的となり、
夫と子供を失ってしまいます。
犯人と思われるネオナチの若いカップルが捕まりますが、
裁判は主人公の思うようには進みません。
そして、主人公はある決断をすることになるのです。
この映画は日本の観客の感想も、
だいぶ割れている感じなのですが、
それは1つにはラストの主人公の決断が、
倫理的には確実に許されないものなので、
そこに対するある種の拒否反応もあるのではないかと思います。
ただ、一昔前の日本映画など、
こんな感じの映画ばかりだったと思いますし、
映画の中ではそこに至るまでの主人公の心理が、
段階を踏んで説得力を持って描かれているので、
個人的には映画という虚構としては、
ありではないかと思いました。
普通こうした映画では、
主人公は善人で同情するべき存在として描かれるのですが、
この映画はそうではなくて、
主人公の夫は裏社会とも関係のある人物で、
結婚自体収監中ですし、
主人公も悲劇の後で麻薬を使用して取り調べを受けています。
夫の遺体を夫の両親には渡さないと、
一方的に身勝手な振る舞いもしますし、
直情的で後先のことも考えずに行動して、
あちこちでトラブルを起こしてしまいます。
ただ、こうしてディテールがリアルに描かれているので、
問題の複雑さがより露になっていると思いますし、
主人公の心情も、
より説得力を持って観客に届いているのだと思います。
ダイアン・クルーガーは、
精魂を込めたことの感じられる熱演で、
観客が感情移入することの難しい厄介な役柄を、
見事に演じていたと思います。
演出は緻密かつ的確で細部に緩みがなく、
特に中段の裁判シーンが迫力があり優れていました。
ただ、それだけで終わらないのがこの映画の凄みで、
後半はギリシャに舞台を移し、
明らかにゴダールの「気狂いピエロ」を意識した、
青い空と海とが混じり合う、
衝撃的なラストに結びつけた辺りも鮮やかだと思いました。
このようにハリウッド製や日本映画の規制だらけの世界からは、
一線を画した優れた映画で、
好き嫌いはあるかと思いますが、
劇場に足を運ぶ値打ちは間違いなくあると思います。
なかなか面白いですよ。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。