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3 種類の糖尿病治療薬の生命予後の比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
3種類の糖尿病治療薬の生命予後の比較.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
生命予後に良い影響を与えると想定されている、
3種類の糖如病治療薬の生命予後への効果を、
比較して検証したネットワークメタ解析の論文です。

2型糖尿病の治療の第一選択薬が、
メトホルミンであることは世界的に一致していますが、
メトホルミン単独で充分なコントロールに達しない場合の、
併用する第二選択の薬剤は、
多くの候補があって、
国や地域によってガイドラインの内容も異なるなど、
まだ一致した見解には至っていないようです。

以前には血糖をより強力に下げる薬が、
より有用な糖尿病治療薬と見做されていましたが、
低血糖のリスクを高めるような薬は、
長期的には却って生命予後に悪影響を与えたり、
心血管疾患のリスクを増加させることが明らかになり、
血糖を下げる作用よりも、
生命予後の改善や、
心血管疾患のリスクの低下が、
糖尿病治療薬の目標として重要である、
というように考えられるようになりました。

最近になり、
インクレチン関連薬(DPP4阻害剤とGLP1アナログ)と、
SGLT2阻害剤と呼ばれるタイプの糖尿病治療薬が、
心血管疾患のリスクや生命予後に、
良い影響を与えるという結果が相次いで報告されました。
より正確にはインクレチン関連薬で、
生命予後に良い影響が確認されているのは、
主にGLP1アナログで、
DPP4阻害剤ではそうした効果は確認されていません。

それでは、
インクレチン関連薬とSGLT2阻害剤では、
どちらが生命予後に対して優れた薬なのでしょうか?

直接比較の精度の高いデータは、
現状は発表はされていないので、
今回の研究ではネットワークメタ解析という手法を用いて、
これまでの個々の薬のデータをまとめて解析し、
その比較を行っています。

これまでに発表された236の臨床研究における、
トータルで176310名のデータをまとめて解析した結果として、
当該薬剤を未使用の場合との比較で、
SGLT2阻害害は総死亡のリスクを20%(95%CI; 0.71から0.89)、
GLP1アナログは総死亡のリスクを12%(95%CI; 0.81から0.94)、
それぞれ有意に低下させていました。
DPP4阻害剤との比較では、
SGLT2阻害剤は総死亡のリスクを22%(95%CI; 0.68から0.90)、
GLP1アナログは総死亡のリスクを14%(95%CI; 0.77から0.96)、
それぞれ有意に低下させていました。
そして、DPP4阻害剤はコントロールと比較して、
総死亡のリスクは有意に低下させていませんでした。

心血管疾患による死亡のリスクは、
SGLT2阻害剤では21%(95%CI; 0.69から0.91)、
GLP1アナログでは15%(95%CI; 0.77から0.94)、
コントロールと比較してそれぞれ有意に低下していました。

SGLT2阻害剤はコントロールとの比較で、
心不全のリスクを38%(95%CI; 0.54から0.72)、
心筋梗塞のリスクを14%(95%CI; 0.77から0.97)、
それぞれ有意に低下させていました。

有害事象については、
臨床試験を離脱するリスクは、
DPP4阻害剤やGLP1アナログと比較して、
SGLT2阻害剤が有意に高くなっていました。

このように、
未使用と比較して明確に総死亡のリスクや、
心血管疾患による死亡のリスクの低下が認められているのは、
現状はSGLT2阻害剤とGLP1アナログのみで、
DPP4阻害剤はそうした効果は証明されていません。
個別の疾患については、
特にSGLT2阻害剤の心不全リスクの抑制効果が抜きんでています。
その一方でSGLT2阻害剤は、
外陰部や尿路の感染症や頻尿、脱水などの有害事象があり、
そのために薬の継続が困難となることも、
他の薬剤と比較すると多いようです。

現状はこうしたデータも参考としながら、
個々の患者さんの治療のレシピを、
検討してゆくということになるのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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