「悪人」(台本・演出合津直枝) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
朝からレセプト作業をしていて、
午後は上野の「ローエングリン」に参戦する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
吉田修一さん原作の「悪人」を、
合津直枝さんが朗読形式に近い2人芝居に構成し、
美波さんと中村蒼さんが出演した舞台に足を運びました。
「悪人」は原作も読みましたし、
2010年の映画版も観ました。
原作は群像劇のような色彩が強くて、
映画ではヒロインとなっている、
深津絵里さんが演じる光代は、
原作では半ばくらいにようやく登場します。
ただ、映画版はそれを妻夫木聡さん演じる祐一と、
深津絵里さんの逃避行にかなり絞って描いていて、
映画としてはそれが成功していたと思います。
原作を読んだ時は全くそうは思いませんでしたが、
映画を観た時にはつかこうへいの「熱海殺人事件」との相似を感じました。
また深津絵里さんが抜群だったので、
印象としては他が消えてしまったという感じがありました。
今回の舞台は美波さんが光代を演じ、
中村蒼さんが祐一を演じる2人芝居で、
背後にモニュメント的なセメントの塔がある以外は、
セットは何もなく、
光代と祐一の出会いから物語は始まって、
祐一の独白として殺人の顛末は語られ、
ラストは他の関係者が祐一と光代に宛てた手紙を、
交互に読むという形で終わります。
その手紙の中に、
「あの人は悪人だったんですよね」
という原作でも映画でも決めになる台詞が入り、
映画ではカットされていた、
光代がバスジャックされるバスに直前で乗らなかった、
という話や、
祐一が付き合った風俗嬢に、
お弁当を作る話などが入っています。
中村蒼さんは原作に合ったビジュアルと雰囲気で、
映画の妻夫木さんより祐一という役には、
合っているという感じがしました。
ただ、抑えた芝居で終わってしまうので、
もっと演劇的な見せ場があると良かったのに、
と言うようには感じました。
一方の美波さんは情緒的な熱演で、
なかなか良い芝居だったと思います。
ただ、正直魅力という意味では、
映画の深津絵里さんにはかないませんでした。
演出はシンプルな「文学と演劇の間くらいの舞台」
という趣向だと思うので、
その意味では悪くなかったと思います。
ただ、この物語は充分「熱海殺人事件」として成立するので、
もっと爆発的な感じがあっても良いし、
もっと演劇に大きく振れても良かったのではないか、
というように感じました。
祐一が光代の首を絞めるところで、
もっと大々的に泣かせの長台詞を入れて、
最後絶叫調になって音効をガンガン盛り上げても、
おかしくはないと思いますし、
そこまでしなくても、
もっと演劇にして欲しかったな、
というのが正直な思いでした。
これは2人芝居のシリーズのようですが、
ちょっとタレントさんのお稽古的な感じになっていて、
それを超えようという熱意を、
あまり感じない企画であることは少し残念でした。
ただ、原作はリスペクトされていて、
変な改変などはないので、
その意味では原作のファンには、
嫌な思いはさせずに、
思い出を反芻出来るような作品にはなっていたと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごしください。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
朝からレセプト作業をしていて、
午後は上野の「ローエングリン」に参戦する予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
吉田修一さん原作の「悪人」を、
合津直枝さんが朗読形式に近い2人芝居に構成し、
美波さんと中村蒼さんが出演した舞台に足を運びました。
「悪人」は原作も読みましたし、
2010年の映画版も観ました。
原作は群像劇のような色彩が強くて、
映画ではヒロインとなっている、
深津絵里さんが演じる光代は、
原作では半ばくらいにようやく登場します。
ただ、映画版はそれを妻夫木聡さん演じる祐一と、
深津絵里さんの逃避行にかなり絞って描いていて、
映画としてはそれが成功していたと思います。
原作を読んだ時は全くそうは思いませんでしたが、
映画を観た時にはつかこうへいの「熱海殺人事件」との相似を感じました。
また深津絵里さんが抜群だったので、
印象としては他が消えてしまったという感じがありました。
今回の舞台は美波さんが光代を演じ、
中村蒼さんが祐一を演じる2人芝居で、
背後にモニュメント的なセメントの塔がある以外は、
セットは何もなく、
光代と祐一の出会いから物語は始まって、
祐一の独白として殺人の顛末は語られ、
ラストは他の関係者が祐一と光代に宛てた手紙を、
交互に読むという形で終わります。
その手紙の中に、
「あの人は悪人だったんですよね」
という原作でも映画でも決めになる台詞が入り、
映画ではカットされていた、
光代がバスジャックされるバスに直前で乗らなかった、
という話や、
祐一が付き合った風俗嬢に、
お弁当を作る話などが入っています。
中村蒼さんは原作に合ったビジュアルと雰囲気で、
映画の妻夫木さんより祐一という役には、
合っているという感じがしました。
ただ、抑えた芝居で終わってしまうので、
もっと演劇的な見せ場があると良かったのに、
と言うようには感じました。
一方の美波さんは情緒的な熱演で、
なかなか良い芝居だったと思います。
ただ、正直魅力という意味では、
映画の深津絵里さんにはかないませんでした。
演出はシンプルな「文学と演劇の間くらいの舞台」
という趣向だと思うので、
その意味では悪くなかったと思います。
ただ、この物語は充分「熱海殺人事件」として成立するので、
もっと爆発的な感じがあっても良いし、
もっと演劇に大きく振れても良かったのではないか、
というように感じました。
祐一が光代の首を絞めるところで、
もっと大々的に泣かせの長台詞を入れて、
最後絶叫調になって音効をガンガン盛り上げても、
おかしくはないと思いますし、
そこまでしなくても、
もっと演劇にして欲しかったな、
というのが正直な思いでした。
これは2人芝居のシリーズのようですが、
ちょっとタレントさんのお稽古的な感じになっていて、
それを超えようという熱意を、
あまり感じない企画であることは少し残念でした。
ただ、原作はリスペクトされていて、
変な改変などはないので、
その意味では原作のファンには、
嫌な思いはさせずに、
思い出を反芻出来るような作品にはなっていたと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごしください。
石原がお送りしました。