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中年期の運動の心不全予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
心不全に対する運動の効果.jpg
2018年のCirculation誌に掲載された、
中年以降の運動習慣が、
その後の心機能に与える影響を検証した論文です。

40から50代の時期において、
事務仕事などで殆ど運動をしないことが、
その後の心機能の低下に結び付き、
心不全のリスクとなることは、
多くの疫学データからほぼ明らかな事実です。

この場合に生じやすい心臓機能の変化は、
左室の拡張能の低下です。

左室というのは、
心臓のポンプ機能の中心として、
全身に血液を送り出す働きを持っていますが、
その機能は大きく、
縮む力(収縮機能)と広がる力(拡張機能)とに分けられます。

心臓の働きが低下する心不全は、
進行すればその2つの機能のいずれもが低下しますが、
その初期の段階においては、
収縮機能のみがもっぱら低下する場合と、
拡張機能のみがもっぱら低下する場合とに分けられます。

拡張能の低下は収縮能の低下よりも、
簡単に測定することが難しいのですが、
加齢や糖尿病などで発生する心不全は、
その多くが拡張能の低下から始まると考えられています。

僕自身も大学の医局時代に、
心エコーの拡張能の指標を測定して、
糖尿病の状態やコントロールとの関連を、
調べるような臨床試験をしていたことがあります。

さて、運動には、
心機能の低下を予防するような、
効果があることが知られています。

それは、中年以降からの運動でも、
有効なものなのでしょうか?

今回の研究はその点にフォーカスを絞ったもので、
運動習慣のない45から64歳の健康成人61名を対象として、
クジ引きで2つの群に分けると、
一方は運動プログラムを定期的に行ない、
もう一方はそのままの生活を継続して、
2年間の効果を比較検証しています。

運動はその時期により時間は強度は異なりますが、
最大心拍数の95%に達するインターバルトレーニングを含み、
週に5、6時間は運動する結構ハードな内容です。

その結果、
運動群ではコントロール群と比較して、
最大酸素摂取量が増加すると共に、
心臓の拡張機能の改善が認められました。
勿論コントロール群ではそうした改善は認められませんでした。

このように、
40代以降からの運動が、
心機能の改善に繋がり心不全を予防する、
という知見は非常に興味深く、
勿論身体に無理を掛けないように慎重な対応は必要ですが、
運動の効能は今後より大きく注目されることになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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