コレステロール降下剤と脳内出血の関係について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のStroke誌に掲載された、
コレステロール降下剤(スタチン)の使用と、
脳内出血リスクについての解説記事です。
このやや分かりにくい問題を、
この機会にまとめておきたいと思います。
スタチンというのはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
コレステロールの降下作用のみならず、
抗炎症作用など動脈硬化の進行を予防し、
心血管疾患の発症を予防するような複数の作用を持ち、
抗動脈硬化薬としてその有効性は確立されています。
脳卒中、特に虚血性梗塞においては、
動脈硬化の進行を予防するような治療が、
脳梗塞の発症予防にも繋がることから、
積極的にスタチンを使用することが推奨されています。
ところが、
2006年から2008年に発表された、
SPARCLという臨床試験においては、
脳卒中を起こした患者さんにコレステロールを下げる治療をすると、
脳卒中全体は約16%低下しましたが、
その中身を見てみると、
脳内出血の発生は、
実はコレステロールを下げた方が、
却って増えている、という結果が得られたのです。
この試験の結果を受けて日本のガイドラインでは、
高血圧性脳内出血を起こした方では、
コレステロール低下療法は、
慎重に行なうべき、とされています。
その後の検討なども含めて考えると、
微小出血を併発するラクナ梗塞などを含めて、
出血性梗塞や脳内出血を起こした患者さんでは、
その後にスタチンを使用すると、
脳内出血の再発のリスクが高まる、
ということ自体はほぼ事実と考えて良いようです。
この事実が判明して以降、
スタチンを使用している患者さんが出血性梗塞や脳内出血を起こすと、
それが判明した時点でスタチンを中止する、
という治療が幅広く行われました。
しかし、病気の急性期にスタチンを中止すると、
患者さんの予後には悪影響が及ぶ、
という知見もまた複数報告されました。
急性期のスタチンの中止は、
一種のリバウンドのような現象を起こし、
その後の心血管疾患発症のリスクを高めてしまったのです。
スタチンには抗血小板作用があり、
それが使用継続時の出血リスクの増加にも、
関連がある可能性が高いのですが、
急な中断は血小板機能を活性化させ、
新たな血栓症の発症に結び付くことがあるようです。
このようにスタチンは単なるコレステロール降下剤ではなく、
抗血小板剤や抗凝固剤と、
同じ系統の薬と考える必要がありそうです。
トータルには、
血栓症のリスクが高い患者さんにおいては、
そのリスクを軽減し、
健康全般の予後を改善する効果が期待出来るのですが、
その一方で出血系の合併症のリスクは高めます。
現状心血管疾患のリスクが高い患者さんでは、
予防のためにスタチンは必須の薬ですが、
開始の時点で出血系梗塞や脳内出血の既往がある場合には、
その使用は出血再発のリスクを高めるので、
その使用は慎重に考えます。
ただ、スタチン使用中の患者さんが出血を起こした時には、
急性期(脳卒中ならリハビリ開始までの期間)は、
その使用は継続し、
病状が安定してから中止の判断はするべきなのです。
こうした急性期のスタチンの中止は、
血栓症のリバウンドのリスクを高めるからです。
今日は脳出血とスタチンとの関連について、
最新のレビューを元に考えました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のStroke誌に掲載された、
コレステロール降下剤(スタチン)の使用と、
脳内出血リスクについての解説記事です。
このやや分かりにくい問題を、
この機会にまとめておきたいと思います。
スタチンというのはコレステロール合成酵素の阻害剤で、
コレステロールの降下作用のみならず、
抗炎症作用など動脈硬化の進行を予防し、
心血管疾患の発症を予防するような複数の作用を持ち、
抗動脈硬化薬としてその有効性は確立されています。
脳卒中、特に虚血性梗塞においては、
動脈硬化の進行を予防するような治療が、
脳梗塞の発症予防にも繋がることから、
積極的にスタチンを使用することが推奨されています。
ところが、
2006年から2008年に発表された、
SPARCLという臨床試験においては、
脳卒中を起こした患者さんにコレステロールを下げる治療をすると、
脳卒中全体は約16%低下しましたが、
その中身を見てみると、
脳内出血の発生は、
実はコレステロールを下げた方が、
却って増えている、という結果が得られたのです。
この試験の結果を受けて日本のガイドラインでは、
高血圧性脳内出血を起こした方では、
コレステロール低下療法は、
慎重に行なうべき、とされています。
その後の検討なども含めて考えると、
微小出血を併発するラクナ梗塞などを含めて、
出血性梗塞や脳内出血を起こした患者さんでは、
その後にスタチンを使用すると、
脳内出血の再発のリスクが高まる、
ということ自体はほぼ事実と考えて良いようです。
この事実が判明して以降、
スタチンを使用している患者さんが出血性梗塞や脳内出血を起こすと、
それが判明した時点でスタチンを中止する、
という治療が幅広く行われました。
しかし、病気の急性期にスタチンを中止すると、
患者さんの予後には悪影響が及ぶ、
という知見もまた複数報告されました。
急性期のスタチンの中止は、
一種のリバウンドのような現象を起こし、
その後の心血管疾患発症のリスクを高めてしまったのです。
スタチンには抗血小板作用があり、
それが使用継続時の出血リスクの増加にも、
関連がある可能性が高いのですが、
急な中断は血小板機能を活性化させ、
新たな血栓症の発症に結び付くことがあるようです。
このようにスタチンは単なるコレステロール降下剤ではなく、
抗血小板剤や抗凝固剤と、
同じ系統の薬と考える必要がありそうです。
トータルには、
血栓症のリスクが高い患者さんにおいては、
そのリスクを軽減し、
健康全般の予後を改善する効果が期待出来るのですが、
その一方で出血系の合併症のリスクは高めます。
現状心血管疾患のリスクが高い患者さんでは、
予防のためにスタチンは必須の薬ですが、
開始の時点で出血系梗塞や脳内出血の既往がある場合には、
その使用は出血再発のリスクを高めるので、
その使用は慎重に考えます。
ただ、スタチン使用中の患者さんが出血を起こした時には、
急性期(脳卒中ならリハビリ開始までの期間)は、
その使用は継続し、
病状が安定してから中止の判断はするべきなのです。
こうした急性期のスタチンの中止は、
血栓症のリバウンドのリスクを高めるからです。
今日は脳出血とスタチンとの関連について、
最新のレビューを元に考えました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。