アスピリンによる肺気腫の進展予防効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
昨年のChest誌に掲載された、
アスピリンによる肺気腫の進行予防効果をみた論文です。
肺気腫というのは、
末梢の気道に繋がる肺胞の壁が破壊され、
肺の機能が失われてしまう病気で、
一旦気腫性の変化の起こった肺胞は、
原則として再生することはありません。
現状では主に喫煙の影響として発症する、
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態の1つとして理解されています。
初期の肺気腫はレントゲンは肺機能の検査でも判断は難しく、
通常高解像度のCT検査における、
「肺気腫様変化」でその有無が判断されます。
この肺気腫の原因は、
必ずしも全て分かっている訳ではありませんが、
肺胞に分布する毛細血管の血流障害と、
その部位の炎症性の変化が関連していると想定されています。
こうした臓器を栄養する血管の損傷と炎症は、
心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患とも共通する部分があり、
血小板の機能の亢進が、
その進行に結び付くと考えられています。
そこで1つの可能性として考えられることは、
血小板の機能を抑制して、
脳梗塞や心筋梗塞の再発予防に使用されている、
低用量のアスピリンが、
肺気腫の進行抑制にも有効なのではないか、ということです。
今回の研究はMESA研究という、
動脈硬化性疾患についてのアメリカの大規模な疫学研究のデータを、
一部別個に解析したもので、
登録の時点で45から84歳の心血管疾患のない4257名の、
胸部CTを撮影して軽度の肺気腫様変化を計測し、
その中央値で9.3年の観察期間中に、
複数回の検査を行って肺気腫の進行を評価しています。
その結果、
アスピリンを週3日以上継続的に使用している人は、
未使用の人と比較して、
CTにおける肺気腫様変化の進行が、
有意に抑制されていました。
肺機能に異常のある患者さんではその効果はより明確で、
喫煙者でも非喫煙者でも、
その効果には変わりはありませんでした。
このデータは肺気腫で治療中の患者さんを対象としたものではないので、
本当にアスピリンの使用が肺気腫の進行を抑制する、
というようにはまだ言えませんが、
多くの病気の進行や再発予防効果が確認されているアスピリンに、
また新たな知見が加わった、
というようには言えそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
昨年のChest誌に掲載された、
アスピリンによる肺気腫の進行予防効果をみた論文です。
肺気腫というのは、
末梢の気道に繋がる肺胞の壁が破壊され、
肺の機能が失われてしまう病気で、
一旦気腫性の変化の起こった肺胞は、
原則として再生することはありません。
現状では主に喫煙の影響として発症する、
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態の1つとして理解されています。
初期の肺気腫はレントゲンは肺機能の検査でも判断は難しく、
通常高解像度のCT検査における、
「肺気腫様変化」でその有無が判断されます。
この肺気腫の原因は、
必ずしも全て分かっている訳ではありませんが、
肺胞に分布する毛細血管の血流障害と、
その部位の炎症性の変化が関連していると想定されています。
こうした臓器を栄養する血管の損傷と炎症は、
心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患とも共通する部分があり、
血小板の機能の亢進が、
その進行に結び付くと考えられています。
そこで1つの可能性として考えられることは、
血小板の機能を抑制して、
脳梗塞や心筋梗塞の再発予防に使用されている、
低用量のアスピリンが、
肺気腫の進行抑制にも有効なのではないか、ということです。
今回の研究はMESA研究という、
動脈硬化性疾患についてのアメリカの大規模な疫学研究のデータを、
一部別個に解析したもので、
登録の時点で45から84歳の心血管疾患のない4257名の、
胸部CTを撮影して軽度の肺気腫様変化を計測し、
その中央値で9.3年の観察期間中に、
複数回の検査を行って肺気腫の進行を評価しています。
その結果、
アスピリンを週3日以上継続的に使用している人は、
未使用の人と比較して、
CTにおける肺気腫様変化の進行が、
有意に抑制されていました。
肺機能に異常のある患者さんではその効果はより明確で、
喫煙者でも非喫煙者でも、
その効果には変わりはありませんでした。
このデータは肺気腫で治療中の患者さんを対象としたものではないので、
本当にアスピリンの使用が肺気腫の進行を抑制する、
というようにはまだ言えませんが、
多くの病気の進行や再発予防効果が確認されているアスピリンに、
また新たな知見が加わった、
というようには言えそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。