「愛を綴る女」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当します。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
マリオン・コティヤールが主演のフランス映画、
「愛を綴る女」を観て来ました。
これはイタリア人作家による「祖母の手帖」という作品が原作ですが、
映画を観た後で興味を持って読んでみたところ、
舞台をフランスに置き換えたばかりではなく、
ほぼ別の作品と言って良いほど改変されていたので、
ちょっと驚きました。
原作は祖母、両親、自分という3代のエピソードを、
人間の心と愛の不思議を縦軸にして、
散文詩的に描いたもので、
そのうちの父方の祖母のエピソードのみを抽出して、
その祖母を主人公に構成されているのが映画ですが、
そのエピソード自体も大きく変更が加えられていて、
ディテールはイタリア映画みたいなのですが、
全体の印象はハリウッドの文芸映画のようで、
どんでん返しということでもないのですが、
クライマックスにちょっとした仕掛けのある、
トータルにはかなり不可思議な映画になっていました。
人気者のマリアン・コティエールが演じる、
原作の「祖母」は、
幻想と現実との区別が不可分で、
多くの男性と平然とふしだらな行為に及ぶ一方で、
純粋な愛と言う架空の幻想を追い求めるような性格です。
男性とのトラブルを繰り返して悪評も立ってしまうので、
心配した母親が、
真面目一徹の男やもめの中年男を夫にしますが、
主人公は夫を愛していないと公言してはばかりません、
夫は性欲のはけ口として性風俗に通いますが、
途中から主人公は風俗嬢と同じ行為を、
夫にするようになります。
この奇妙で倒錯的な関係が続く中、
主人公は尿路結石の痛みに苦しみ、
温泉療養に山の中の療養所に入ります。
と、そこで傷病兵の男性と運命的な出会いをし、
恋に堕ちた後で、
主人公は子供を身ごもるのです。
2人は別れ、主人公は愛していない夫の元に戻りますが、
息子は生まれピアニストに成長します。
コンクールのために訪れた町は、
かつて愛した傷病兵の住んでいたところであることを知った主人公は、
彼との再会のために町を彷徨います。
映画はその場面から始まり、
回想に入り、
そして後半で再び同じ場面に戻ると、
その後に意外な真相が待っています。
僕は仕掛けのある話が好きなので、
この設定自体は嫌いではないのですが、
やや唐突で作品の流れに合わない感じがしたのと、
写真の件などがかなり強引で不自然なので、
本当に原作でも同じような話なのだろうかと思って、
原作を読んでみると、
前述のように話は大きく違っていました。
原作にも同様の一種のオチはあるのですが、
もっと繊細で文学的なもので、
壁の中から祖母の手帖と1通の手紙が見つかって、
それで真相が明らかになる、
というロマンチックな趣向になっています。
写真の話などは勿論ありません。
小説が映画になって大きくその趣きを変えることは、
勿論しばしばあることですが、
今回はどう考えても改悪と言って良いもので、
原作通りに3代のクロニクルとして映画化しても、
悪くない作品になったように思うので、
この大味な改変は非常に残念に感じました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当します。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
マリオン・コティヤールが主演のフランス映画、
「愛を綴る女」を観て来ました。
これはイタリア人作家による「祖母の手帖」という作品が原作ですが、
映画を観た後で興味を持って読んでみたところ、
舞台をフランスに置き換えたばかりではなく、
ほぼ別の作品と言って良いほど改変されていたので、
ちょっと驚きました。
原作は祖母、両親、自分という3代のエピソードを、
人間の心と愛の不思議を縦軸にして、
散文詩的に描いたもので、
そのうちの父方の祖母のエピソードのみを抽出して、
その祖母を主人公に構成されているのが映画ですが、
そのエピソード自体も大きく変更が加えられていて、
ディテールはイタリア映画みたいなのですが、
全体の印象はハリウッドの文芸映画のようで、
どんでん返しということでもないのですが、
クライマックスにちょっとした仕掛けのある、
トータルにはかなり不可思議な映画になっていました。
人気者のマリアン・コティエールが演じる、
原作の「祖母」は、
幻想と現実との区別が不可分で、
多くの男性と平然とふしだらな行為に及ぶ一方で、
純粋な愛と言う架空の幻想を追い求めるような性格です。
男性とのトラブルを繰り返して悪評も立ってしまうので、
心配した母親が、
真面目一徹の男やもめの中年男を夫にしますが、
主人公は夫を愛していないと公言してはばかりません、
夫は性欲のはけ口として性風俗に通いますが、
途中から主人公は風俗嬢と同じ行為を、
夫にするようになります。
この奇妙で倒錯的な関係が続く中、
主人公は尿路結石の痛みに苦しみ、
温泉療養に山の中の療養所に入ります。
と、そこで傷病兵の男性と運命的な出会いをし、
恋に堕ちた後で、
主人公は子供を身ごもるのです。
2人は別れ、主人公は愛していない夫の元に戻りますが、
息子は生まれピアニストに成長します。
コンクールのために訪れた町は、
かつて愛した傷病兵の住んでいたところであることを知った主人公は、
彼との再会のために町を彷徨います。
映画はその場面から始まり、
回想に入り、
そして後半で再び同じ場面に戻ると、
その後に意外な真相が待っています。
僕は仕掛けのある話が好きなので、
この設定自体は嫌いではないのですが、
やや唐突で作品の流れに合わない感じがしたのと、
写真の件などがかなり強引で不自然なので、
本当に原作でも同じような話なのだろうかと思って、
原作を読んでみると、
前述のように話は大きく違っていました。
原作にも同様の一種のオチはあるのですが、
もっと繊細で文学的なもので、
壁の中から祖母の手帖と1通の手紙が見つかって、
それで真相が明らかになる、
というロマンチックな趣向になっています。
写真の話などは勿論ありません。
小説が映画になって大きくその趣きを変えることは、
勿論しばしばあることですが、
今回はどう考えても改悪と言って良いもので、
原作通りに3代のクロニクルとして映画化しても、
悪くない作品になったように思うので、
この大味な改変は非常に残念に感じました。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。