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コーヒーの生命予後改善に人種差はあるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
コーヒーと死亡リスク.jpg
今年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
コーヒーの摂取と死亡リスクとの関連についての論文です。

コーヒーはカフェインを含み、
常用性のある飲み物ですが、
その一方で抗酸化作用のある生理活性物質を、
多く含むという報告などもあり、
また最近ではコーヒーを飲む人の方が、
総死亡や心血管疾患のリスクが低下する、
という報告が複数存在しています。

その代表的なものは、
2012年のNew England…誌の論文で、
以前記事でご紹介したことがあります。

40万人以上の健康調査において、
コーヒーを沢山飲む人の方が、
1割程度総死亡のリスクが低下した、
という結果になっています。

日本の疫学データも2015年に論文化されていて、
例の有名なJPHC研究の解析ですが、
矢張り総死亡のリスクが1から2割低下した、
とする結果になっています。

こうした知見からは、
コーヒーには何らかの健康保持作用が、
あるのではないかということが示唆されますが、
その実態は必ずしも明らかではありません。

また、これまでの大規模な研究はその多くが白人種もので、
上記のように日本でのデータもありますが、
コーヒーの死亡リスク低下作用に人種差があるかどうかも、
明確なものとは言えません。

今回の研究はアメリカの国立癌研究所の主導によるもので、
ハワイとロスとカリフォルニアにおいて、45から73歳の、
白人種以外にアフリカ系アメリカ人、ハワイの先住民、
日系アメリカ人、ラテンアメリカ人種をトータルで185855名登録し、
平均で16.2年の経過観察を行って、
コーヒーの摂取と死亡リスクとの関連を検証しています。

観察期間中に58397名が死亡し、
喫煙などの関連する因子を補正した結果として、
コーヒーを飲む習慣のない人との比較において、
毎日1杯飲む人は12%(95%CI;0.85から0.91)、
2から3杯飲む人は18%(95%CI;0.79から0.86)、
4杯以上飲む人は18%(95%CI;0.78から0.87)、
それぞれ有意に死亡リスクが低下していました。

この結果にはカフェインを含むコーヒーと、
カフェインレスのコーヒーでは差はなく、
ハワイの原住民ではコーヒーの摂取と、
その後の死亡リスクとの間に有意差がありませんでしたが、
それ以外の4人種については、
個別にも同様の傾向を示していました。

具体的な死因としては、
心疾患、癌、呼吸器疾患、脳卒中、
糖尿病、腎臓病のそれぞれにおいて、
コーヒーの摂取量が多いほど、
そのリスクが低い傾向が認められました。

このように、
コーヒーの摂取量が多いほど、
死亡リスクが低いという現象は、
今回も確認され、
ほぼ人種差に関わりなく同様の現象が認められました。

コーヒーには有害な作用もないとは言えませんし、
どれだけ沢山飲んでも良いとは言えませんが、
適度なコーヒーの摂取が決して健康の悪い習慣ではないことは、
ほぼ確認されたと言っても良いのではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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