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脳へのアミロイドの蓄積と将来の認知症リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アミロイドの集積と認知症.jpg
今年のJAMA誌に掲載された、
認知症機能が正常で脳へのアミロイド沈着が認められた人の、
認知症への進展の有無を検証した論文です。

アルツハイマー型認知症においては、
認知機能が多角的に低下し、
日常生活に少なからずの影響が出て初めて、
そうと診断されます。
その前段階として軽度認知障害(MCI)があり、
これは認知機能のうちの一部が軽度に低下しているものの、
日常生活には支障のない軽度の状態があるとされています。

アルツハイマー型認知症においては、
脳細胞にβアミロイドという異常タンパクが蓄積していて、
それが病気の原因であるかどうかは、
まだ議論のあるところですが、
その診断において有用な指標であることは間違いありません。

アミロイドPETと言って、
放射能を使用してアミロイドの異常な沈着を、
検出する検査や、
髄液のβアミロイドの測定で、
このアミロイドの沈着は診断することが可能です。

通常軽度認知障害(MCI)の段階で、
既にアミロイドの沈着は生じています。

それではそれより前の時点、
認知機能は全く正常な段階ではどうでしょうか?

認知機能が全く正常であっても、
65歳から70歳の年齢のおよそ3分の1の人では、
既にβアミロイドの脳への沈着は始まっている、
ということを示すデータがあります。

それでは、
認知機能が正常でβアミロイドの沈着が始まっている人は、
将来的にどの程度が進行し、
認知機能の低下を来すのでしょうか?

この点については、
これまでにあまり明確なことが分かっていませんでした。

そこで今回の研究では、
アメリカとカナダにおいて、
認知機能が正常な445名の平均年齢74歳の高齢者を登録し、
その時点でアミロイドPETと髄液検査で、
βアミロイドの異常な沈着のある202名と、
沈着のない243名を比較して、
中央値で3.1年の経過観察を行い、
認知機能の低下とアミロイドの沈着との関連を検証しています。

その結果…

MMSEなど複数の認知機能の指標において、
登録時点でアミロイドの沈着のない事例と比較して、
沈着のある事例では、
認知機能の有意な低下が認められました。
ただその差はMMSEでは平均で0.56点と軽微で、
本当にそうした事例の多くが、
認知症へと進行するものかどうかは、
まだ確実とは言えないと考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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