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川瀬直美「光」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
光.jpg
河瀬直美監督の新作が、
今ロードショー公開されています。

永瀬正敏さんが視力低下に苦しむカメラマンを演じ、
水崎綾女さんが、
映画の音声ガイドの制作を携わる女性を演じて、
感覚や思い出、家族を喪失した者同士が、
その欠落を補うように、
惹かれ合う様を描きます。

非常に個性的で河瀬さんしか描きようのない世界で、
安易な感情移入は受け入れてくれませんし、
ただただ見続けるしかない、
という感じの映画です。

主人公の水崎さんの母親は認知症で、
幼い頃に失った父親の記憶が、
強い喪失感となって心に傷を残しています。
そんな彼女が視覚障碍者のための音声ガイドの、
台本を作る仕事をしているのですが、
対象となっている映画は、
藤竜也演じる老人が、
自分の認知症の妻の介護に絶望して…
というような内容です。
主人公はその仕事を続ける中で、
病気で視力を失いつつあるカメラマンの永瀬さんと出会い、
そこに喪失した父親の面影を見て、
次第に惹かれ合うようになります。
そして、完成した音声ガイド付きの映画が、
試写上映される場面で映画は終わります。

基本的にはハッピーエンドのラブストーリーなのですが、
カメラマンの永瀬さんが、
非常に屈折して攻撃的でひねくれた性格なので、
とても感情移入するような気分にはなれません。
ただ、これはかなり意図的なもので、
その証拠には音楽の入れ方なども、
観客の没入を拒否するように作られています。
「簡単に分かったような気になるなよ」
ということかも知れません。

全編露出オーバーの映像で、
逆光も矢鱈と多く、
しかも主人公達のどアップばかりが連続する、
という特殊な絵作りです。
それが全て成功しているとも言えないのですが、
夕暮れを見るために出かけた主人公2人のシルエットが、
逆光で滲むように赤く染まるところなどは、
なかなか幻想的で凄いと思いますし、
永瀬さんの視力がなくなるという恐怖も、
リアルに表現をされていたと思います。

面白いかと言われると、
そうも言えないのですが、
目を離せない他にはあまりない映像体験であることは確かで、
川瀬直美節は健在だ、
という気がしました。

好きな方にはお勧めしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。