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「ゴールド 金塊の行方」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ゴールド.jpg
主演のマシュー・マコノヒーの肉体改造も話題の、
スティーブン・ギャガン監督の「ゴールド 金塊の行方」
を観て来ました。

これは白井佳夫さんが褒めていて、
白井さんは相当屈折した方なので、
まともなヒット作は決して褒めませんし、
僕と大分嗜好は異なっているので、
何度も騙されてとても詰まらない映画を、
観てしまったこともあります。

これまで白井さんを信じて「大当たり」だったのは、
「ルパン三世カリオストロの城」と、
永島敏行と森下愛子のデビュー作の「サード」くらいで、
後は到底その評価に納得のいかない作品を沢山観ています。
(ルパン三世は封切り当時は、
たかがアニメ映画、という扱いで、
一般には大した評価はありませんでした。)

ただ、この「ゴールド」は久々の「大当たり」で、
寝不足での鑑賞だったので、
最初はばんやりと観ていたのですが、
途中からあまりに面白いので完全に覚醒し、
後半は本当にのめり込むようにして観てしまいました。

ネットの批評などで貶している方もいるので、
全ての方が面白いと感じる映画ではないようです。
ラストのオチなども、
素晴らしいと思うのですが、
詰まらないし読めてしまう、
というように悪口を言われる方もいます。

あんなに素晴らしいのにどうしたことかしら、
と思うのですが、
多分商売や人間関係で苦労したり汗を流したことがないと、
ニュアンスとして感じにくいところがあるのではないか、
というようにも思います。

万人向けの娯楽作品のようでいて、
結構滋味に溢れた大人の映画なのです。

主人公のマコノヒーは、
インドネシアで金塊を掘り当て、
一夜にした大金持ちの有名人となる、
粗野で愚かでそれでいて憎めない俗物を演じるのですが、
その入魂の演技は本当に素晴らしくて、
単純に面白い人物を演じていながら、
人間そのものの業のような愚かさと、
愚かしいからこその愛らしさを演じて、
間然とするところがありません。

彼の演技を観るだけで、
充分元は取れたという気分になる映画です。

またストーリーが抜群に面白く技巧的に出来ていて、
勿論「金塊の行方」は誰でも想像は付くのですが、
こういう話は定番で問題はないので、
そこに繋がる段取りの巧みさと、
伏線の張り方の巧みさ、
そして人間そのものが物語の「仕掛け」になるという、
クレヴァーな台本に感心します。

こうした「良く出来た話」は、
それだけで終わりがちなのですが、
この作品はそうではなく、
主人公、その恋人とビジネスパートナーでもある親友の、
3人のキャラクターが非常に繊細かつ奥行を持って描かれていて、
人間ドラマとしても一級品です。

ややごちゃごちゃして、
荒っぽい編集であり演出ではあるのですが、
語り口は古典的で滑らかなので、
スムーズに作品世界に入り込むことが出来ます。

今年観た新作映画の中では、
「はじまりへの旅」と共に、
今のところ最も気に入っている1本で、
是非にとお薦めしたいと思います。

一応実話を元にしているのですが、
概略が似ているというだけで、
事件の年代や設定も異なっています。
従って、あまり元ネタを検索したりはせずに、
予備知識なく鑑賞された方が、
面白いと思います。

破天荒な主人公を狂言廻しにして、
現代の社会のからくりのようなものと、
それに踊らされる人間という種の、
変えようのない本質的な愚かしさを、
愛情豊かに綴った傑作だと思います。

単館公開に近い寂しいロードショーですが、
皆さんも気に入って頂けたらとても嬉しいです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。