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腸内細菌叢の発達における授乳の影響について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
授乳と腸内細菌叢.jpg
今月のJAMA Pediatrics誌にウェブ掲載された、
腸内細菌叢の発達における授乳の影響についての論文です。

赤ちゃんが生まれてから1歳になるまでの期間に、
その腸内細菌叢は大きな変化を遂げます。
そして、概ね3歳くらいまでには、
大人と同じようなバランスの細菌叢が成立すると考えられています。

この正常な腸内細菌叢の発達が妨害され、
菌叢に乱れが生じると、
それが1型糖尿病や炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎などの、
自己免疫による病気の誘因となると考えられます。

それでは正常な腸内細菌叢の発達を阻害するものは何でしょうか?

そのことを考えるには、
どのようにして正常な腸内細菌叢が生まれるのかを、
考える必要があります。

赤ちゃんの腸に最初に流れ込むものは母乳もしくはミルクです。
授乳の場合には赤ちゃんはお母さんの乳首を吸いますから、
母乳に元々含まれている細菌と、
乳輪近くの粘膜や皮膚にいる細菌が、
一緒に赤ちゃんの体内に入ることになります。

実際に母乳や乳輪周囲の皮膚から、
どれくらいの細菌が赤ちゃんの腸に入り、
それがどのくらいそこで定着することになるのでしょうか?

今回の研究ではアメリカにおいて、
生後すぐから1歳未満の乳児とそのお母さん228名を登録し、
お子さんが1歳までの経過観察を行っています。
このうち107組214名はお母さんとお子さんのペアで、
12人は赤ちゃんのみ、2人はお母さんのみです。

お母さんの母乳と乳輪周囲の皮膚、
そして赤ちゃんの便のサンプルを採取し、
そのRNAの分析を行なって、
菌叢を形成する細菌のパターンを解析します。

その結果、
赤ちゃんの腸内細菌叢を形成する細菌の27.7%は母乳から、
10.4%は乳輪周辺の皮膚から由来していることが明らかになりました。
母乳の摂取量が多いほどその影響は大きく、
離乳食が始まっても、
その母乳の影響は減弱することはありませんでした。

つまり、
出生から1歳くらいまでの腸内細菌叢の発達には、
少なからず授乳が影響を与えていて、
ミルクではその影響に変化が生じる可能性があります。

これをもって即ミルクが良くない、とは言い切れませんが、
人工乳での腸内細菌叢の発達の検証や、
母乳との比較などが今後是非施行されて欲しいところで、
今後のこの分野の知見の蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとって良い日でありますように。

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