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クロムモリブデン「空と雲とバラバラの奥さま」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。
今奈良からの更新です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
クロムモリブデン.jpg
1989年に大阪で結成された老舗劇団クロムモリブデンの新作、
「空と雲とバラバラの奥さま」を吉祥寺シアターで先日観て来ました。

この劇団は初見です。
多くの公演を重ねていますが、
何となく観る機会を逸してしまい、
今更観るのもなあ、という感じになって、
これまで観ないで済ませてしまいました。

今回は丁度芝居でも観ようかなあという時に、
たまたま上演していたのでタイミングが合ったのです。

通常は結構シュールな作風のようなのですが、
今回の作品は1990年代の大人計画を思わせるような、
さびれた村でドロドロの人間模様が展開するというストーリーでした。

そもそもは婚姻という制度を、
考え直すという設定が、
元にあったようで、そうした要素も残ってはいるのですが、
どちらかと言えば因習に囚われた村で、
1人のよそ者の来訪者の悪意が、
村の秩序を粉々に破壊してしまう、という話です。

これをかなり抽象的でポップなセットで、
オリジナルな音効と共に、
やや様式的な部分のある演技で綴ってゆきます。

オープニングから中段までは、
語り口は分かりやすいですし、
役者さんの演技もまあまあなので、
ふんふんと思いながら観ていたのですが、
後半はあまり展開らしい展開がなく、
最後はビートの効いた音楽が大音量で鳴り響く中、
キャストが全員で行進しながら台詞を言う、という、
意味不明のちょっと誤魔化した感のある演出で、
何も解決しないままに終わってしまいました。

これには相当にガッカリしました。

総じて全てが中途半端な感じがありました。
セットも抽象なのか具象なのかはっきりしませんし、
衣装もリアルであるのか様式的であるのかはっきりしません。
役者さんの演技も決してリアルではないのですが、
統一された様式があるということでもなく、
個性を少し殺して芝居をしている感じですが、
それが効果的であるとも思えません。

まあこの劇団の作品としては、
今回はやや特殊な感じのものであったと推測されるので、
準備不足の面もあったのではないかと思いました。

個人的には特に後半はかなりきつい観劇で、
次を観るかどうかは、
難しい決断になるかなあ、という感想でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。

第20回健康教室のお知らせ [告知]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日は告知です。
それがこちら。
第20回健康教室.jpg
次回の健康教室は、
4月20日(土)の午前10時から11時まで(時間は目安)、
いつも通りにクリニック2階の健康スクエアにて開催します。

テーマは今回は「長引く咳の原因と治療」です。

長引く咳は非常に多い症状で、
患者さんにとっても診察をする医者にとっても、
悩ましい部分があります。

ただ風邪が長引いているだけだと思っていたら、
実は結核だったということもありますし、
咳は無理に止めるのが良くないという意見がある一方で、
高齢者では咳き込みのために肋骨や背骨が骨折する、
というような事態もしばしばあります。

今回もいつものように、
分かっていることと分かっていないこととを、
なるべく最新の知見を元に、
整理してお話したいと思っています。

ご参加は無料です。

参加希望の方は、
5月18日(木)18時までに、
メールか電話でお申し込み下さい。
ただ、電話は通常の診療時間のみの対応とさせて頂きます。

皆さんのご参加をお待ちしています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

デフィシル菌感染症再発に対する制酸剤の影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
デフィシル菌と酸抑制剤.jpg
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
デフィシル菌による偽膜性腸炎の再発に対する、
制酸剤の影響についての論文です。

クロストリジウム・デフィシル菌というのは、
嫌気性有芽胞菌という分類に属する細菌で、
破傷風の原因である破傷風菌や、
食中毒の原因となるボツリヌス菌などと、
同じ仲間に属する病原体です。

この細菌は人間の腸の常在菌で、
日本人の大人の1割は持っている、
という報告もありますが、
通常は人間には悪さをしません。

それが問題になるのは、
主に抗生物質の使用時で、
抗生物質の使用により、
大腸の正常な菌叢が乱され、
腸内細菌が死滅すると、
このデフィシル菌が異常に増殖し、
偽膜性腸炎という名称の、
下痢を伴う腸炎を起こします。

ポイントは抗生物質を使用していて、
下痢の症状が出現したら、
すぐに薬を中止することで、
軽症であればそれで腸内菌叢が正常に復すれば、
デフィシル菌の増殖も抑えられて元に戻ります。

ただ、
実際には全身状態が悪く、
抗生物質の使用が必須の患者さんで、
こうしたことが起こると、
免疫力の低下なども相俟って、
経過は遷延して重症化することも稀ではなく、
デフィシル菌の除菌のために、
再度抗生物質を使用することも已む無し、
という事態になります。

こうした場合に使用される薬剤の筆頭は、
バンコマイシンと呼ばれる抗菌剤ですが、
一旦は改善しても、
再発が多いことが知られています。

このデフィシル菌腸炎の再発のリスクの1つとして、
プロトンポンプ阻害剤やH2阻害剤などの、
胃酸を抑える薬の影響が以前から指摘されています。

以前ご紹介したメタ解析の結果では、
2012年の時点の報告で、
プロトンポンプ阻害剤の使用により、
デフィシル菌による腸炎のリスクが、
1.7倍程度増加するという結果になっていました。

ただ、
それほど精度の高い研究がない上に、
初発と再発の腸炎も区別されていないなど、
まだその結果は確定的なものとは言えませんでした。

今回の研究も、
これまでのデータをまとめて解析したものですが、
一度デフィシル菌による腸炎を来した患者さんの、
再発のリスクに対象を絞っている点と、
年齢や基礎疾患などの影響する因子を、
補正して解析しているという点が特徴です。

16の観察研究をまとめて解析した結果として、
トータル7703名の、
デフィシル菌による腸炎に罹患した患者さんのうち、
19.8%に当たる1525名が腸炎を再発していました。

制酸剤を未使用の患者さん3665名のうち、
17.3%に当たる633名が再発したのに対して、
制酸剤を使用している患者さん4038名のうち、
22.1%に当たる892名が再発していました。
解析の結果制酸剤の使用により、
腸炎再発のリスクは1.52倍(95%CI; 1.20から1.94)
有意に増加していました。
これを年齢や基礎疾患などの因子を補正して解析すると、
制酸剤による腸炎再発のリスクは、
1.38倍(95%CI; 1.08から1.76)と、
関連は弱くなったものの矢張り有意に増加していました。

解析された殆どの研究は、
プロトンポンプ阻害剤のみが対象となっていて、
一部の研究はH2ブロッカーとプロトンポンプ阻害剤が、
区別なく対象となっていましたが、
明確に腸炎の再発リスクが増加していたのは、
プロトンポンプ阻害剤のみでした。

このように今回の再検証においても、
デフィシル菌による腸炎再発のリスクは、
制酸剤、特にプロトンポンプ阻害剤の使用により、
有意に増加していました。
ただ、今回も対象となっているのは観察研究のみで、
その精度はそれほど高いものではなく、
関連する因子を補正すると、
その関連性は微妙なものになっていました。

そんな訳でこの問題を現時点で、
そこまで深刻に考える必要はないのですが、
特に偽膜性腸炎の罹患後には、
胃酸抑制剤の使用は必要最小限にすることが、
不要なリスクを増加させないために重要であることは、
間違いのないことだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ

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