4種降圧剤少量カクテル療法の効果 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のLancet誌に掲載された、
少量の降圧剤を複数組み合わせて使用する、
新しい治療法の効果についての論文です。
興味深い試みですが、
例数は21例と非常に少ないので、
パイロット研究とでも言うべきものです。
手法自体は厳密な方法が取られています。
高血圧の治療のガイドラインは、
カルシウム拮抗薬やACE阻害剤、利尿剤などの単剤で治療を開始し、
通常用量まで増やしても血圧がコントロールされない場合に、
別個の作用を持つ薬を組み合わせて使うことが推奨されています。
しかし、実際には単剤で高血圧症の患者さんが、
良好なコントロールに至ることは、
それほど高い確率ではありません。
また単剤でその用量を増やすと、
2倍にしても効果は2倍にはならない一方、
副作用や有害事象の頻度は高まることがしばしばあります。
これまでの降圧剤の臨床試験をまとめて解析したデータによると、
降圧剤を通常用量で使用した場合の80%の効果が、
その半分の量でも得られています。
そして、複数のメカニズムを持つ降圧剤を併用すると、
その相乗効果が得られやすいことも分かっています。
それでは、
複数の降圧剤を最初から少量ずつで併用すれば、
個々の薬剤の量は少なくても相乗効果で降圧作用は高まり、
かつ薬剤の有害事象や副作用は少なくて済むのではないでしょうか?
これは勿論逆の考え方もあるのです。
少量では効果のあるものもないままで終わる可能性があり、
複数の薬を少量ずつ使うことで、
予期せぬ副作用や有害事象が増えるという可能性もあるからです。
今回の研究はオーストラリアにおいて、
未治療で外来血圧が収縮期140mmHg以上、
拡張期血圧が90mmHg以上もしくはその両方である、
高血圧の患者さんトータル21名を、
本人にも治療者にも分からないようにクジ引きで2つの群に分け、
一方は偽薬を使用し、
もう一方は4種類の降圧剤を、
通常量の4分の1量でブレンドしたカプセルを処方します。
クロスオーバー法と言って、
まず4週間の治療を行ない、
それから2週間のウォッシュアウト期間をおいて、
今度は両群を入れ替えてもう4週間の治療を行ないます。
カクテルされた4種類の降圧剤は、
ARBのイルベサルタン37.5mg、
カルシウム拮抗薬のアムロジピン1.25mg、
利尿剤のハイドロクロロチアジド6.25mg、
そしてβ遮断剤のアテノロール12.5㎎です。
これはオーストラリアの常用量の4分の1量ですが、
日本の常用量ではほぼ半量くらいです。
その結果、4種類の降圧剤の少量カクテル療法により、
4週間の治療で収縮期血圧が平均で22mmHg、
拡張期血圧は13mmHg有意に低下していました。
極めて少数例の検証なので、
これだけで4種併用療法が単剤の治療より優れているとは、
とても言い切ることは出来ませんが、
概ね単剤の治療効果より高く、
副作用や有害事象も少ない結果であることは確かで、
これまでとは発想の違う高血圧治療の選択肢として、
注目には値する知見であるようには思います。
日本では昨年11月より、
テルミサルタン80mg、アムロジピン5㎎、ヒドロクロロチアジド12.5㎎という、
日本の常用量での3剤の合剤が、
ミカトリオ配合錠という名称で販売開始されています。
この組み合わせで2から3剤の処方を受けている方であれば、
一定の利便性はあるのですが、
その一方で常用量の合剤というのは、
調節が難しく血圧低下のリスクも大きいのですから、
最近の降圧治療の考え方からすれば、
如何なものかな、とは思うところです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のLancet誌に掲載された、
少量の降圧剤を複数組み合わせて使用する、
新しい治療法の効果についての論文です。
興味深い試みですが、
例数は21例と非常に少ないので、
パイロット研究とでも言うべきものです。
手法自体は厳密な方法が取られています。
高血圧の治療のガイドラインは、
カルシウム拮抗薬やACE阻害剤、利尿剤などの単剤で治療を開始し、
通常用量まで増やしても血圧がコントロールされない場合に、
別個の作用を持つ薬を組み合わせて使うことが推奨されています。
しかし、実際には単剤で高血圧症の患者さんが、
良好なコントロールに至ることは、
それほど高い確率ではありません。
また単剤でその用量を増やすと、
2倍にしても効果は2倍にはならない一方、
副作用や有害事象の頻度は高まることがしばしばあります。
これまでの降圧剤の臨床試験をまとめて解析したデータによると、
降圧剤を通常用量で使用した場合の80%の効果が、
その半分の量でも得られています。
そして、複数のメカニズムを持つ降圧剤を併用すると、
その相乗効果が得られやすいことも分かっています。
それでは、
複数の降圧剤を最初から少量ずつで併用すれば、
個々の薬剤の量は少なくても相乗効果で降圧作用は高まり、
かつ薬剤の有害事象や副作用は少なくて済むのではないでしょうか?
これは勿論逆の考え方もあるのです。
少量では効果のあるものもないままで終わる可能性があり、
複数の薬を少量ずつ使うことで、
予期せぬ副作用や有害事象が増えるという可能性もあるからです。
今回の研究はオーストラリアにおいて、
未治療で外来血圧が収縮期140mmHg以上、
拡張期血圧が90mmHg以上もしくはその両方である、
高血圧の患者さんトータル21名を、
本人にも治療者にも分からないようにクジ引きで2つの群に分け、
一方は偽薬を使用し、
もう一方は4種類の降圧剤を、
通常量の4分の1量でブレンドしたカプセルを処方します。
クロスオーバー法と言って、
まず4週間の治療を行ない、
それから2週間のウォッシュアウト期間をおいて、
今度は両群を入れ替えてもう4週間の治療を行ないます。
カクテルされた4種類の降圧剤は、
ARBのイルベサルタン37.5mg、
カルシウム拮抗薬のアムロジピン1.25mg、
利尿剤のハイドロクロロチアジド6.25mg、
そしてβ遮断剤のアテノロール12.5㎎です。
これはオーストラリアの常用量の4分の1量ですが、
日本の常用量ではほぼ半量くらいです。
その結果、4種類の降圧剤の少量カクテル療法により、
4週間の治療で収縮期血圧が平均で22mmHg、
拡張期血圧は13mmHg有意に低下していました。
極めて少数例の検証なので、
これだけで4種併用療法が単剤の治療より優れているとは、
とても言い切ることは出来ませんが、
概ね単剤の治療効果より高く、
副作用や有害事象も少ない結果であることは確かで、
これまでとは発想の違う高血圧治療の選択肢として、
注目には値する知見であるようには思います。
日本では昨年11月より、
テルミサルタン80mg、アムロジピン5㎎、ヒドロクロロチアジド12.5㎎という、
日本の常用量での3剤の合剤が、
ミカトリオ配合錠という名称で販売開始されています。
この組み合わせで2から3剤の処方を受けている方であれば、
一定の利便性はあるのですが、
その一方で常用量の合剤というのは、
調節が難しく血圧低下のリスクも大きいのですから、
最近の降圧治療の考え方からすれば、
如何なものかな、とは思うところです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本