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肺炎と心不全との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
心不全と肺炎との関連.jpg
先月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
肺炎と心不全との関連についての論文です。

肺炎というのは、
細菌やウイルスによる肺胞の炎症で、
感染症の1つですが、
日本人の死亡原因の第3位を占めていて、
特に高齢者では重症化のリスクが高いと考えられています。

肺炎は基本的には急性の病気で、
治れば特に後遺症を残すようなことは少ないと考えられます。

しかしその一方で、
1回肺炎になった人は、
その後他の病気に罹ったりする可能性が、
長期に渡って高い、
という疫学データが複数存在しています。

中でも関連が深いと思われるのが心不全です。

高齢者では肺炎をきっかけとして、
心不全が悪化するようなケースが多く報告されています。
心臓と肺とは一体として結び付いている臓器ですから、
これは当然とも言えるのですが、
その影響が数年間というような長期に渡り持続した、
というような報告もあり、
肺炎と心不全との関係は、
単純にそれだけのものでもなさそうです。

今回の研究はカナダにおいて、
複数の医療機関で心不全の既往のない肺炎の患者4988例を登録し、
年齢や性別などをマッチさせたコントロール23060例と比較して、
中央値で9.9年という長期の経過観察を行っています。

すると、
心不全の発症率は肺炎群では全体の11.9%に当たる592例に対して、
肺炎を起こしていないコントロール群では、
全体の7.4%に当たる1712例で、
肺炎を起こすとその後の心不全の発症率は、
起こしていない場合の1.61倍と有意に高くなっていました。
(95%CI;1.44から1.81)

この肺炎後の心不全の増加は、
肺炎罹患後90日でも1年以内でも高く、
10年近い観察期間を通して持続的に高くなっていました。

年齢が65歳以下においても、
肺炎後の心不全のリスクは1.98倍と有意に増加していて
(95%CI;1.55から2.53)、
65歳以上と比較すると、
勿論発症率自体は低いのですが、
その相対的なリスクの増加は、
むしろ65歳以下の方が高くなっていました。

つまり、年齢に関わらず
肺炎に罹患した後は長期に渡り、
心不全のリスクが高くなる可能性があります。

そのメカニズムは不明ですが、
肺炎後は心不全のリスクとなるような生活習慣を避け、
定期的な健康チェックを行うことが、
現状では健康を守るために、
重要なことだと言って良いようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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