テストステロン治療の冠動脈プラークへの影響 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
男性ホルモンのテストステロンを、
男性更年期を思わせる症状のある高齢男性に、
使用した時の心臓血管への影響についての論文です。
昨日は貧血への効果についての論文をご紹介しましたが、
それと一連のもので、
同じ集団に対して、
全部で7種類の介入試験を行っているもののようです。
そのそれぞれが別個の論文として発表されています。
男性ホルモンであるテストステロンと、
心筋梗塞などの心血管疾患との関連については、
相反する研究結果があって、
まだ一定の結論に至っていません。
テストステロンが低値であると、
メタボや心血管疾患の予後が悪化する、
という観察研究のデータがあります。
これからすると、テストステロンが低値の高齢者に対しては、
その補充を行うことで心血管疾患の予後改善に結び付く、
という可能性が想定されます。
しかし、実際に施行されたテストステロン補充療法の臨床試験においては、
有効性が示されなかった、と言うものが多く、
中には心血管疾患のリスクが増加した、
というものもあります。
しかし、それではテストステロンが低値の高齢者に、
補充療法を行うことでどのような心臓への悪影響があるのか、
というような具体的な点については、
殆ど明らかにはなっていません。
そこで今回の研究では、
アメリカの9か所の専門施設において、
年齢が65歳以上の男性で、
朝2回採血した血液のテストステロン値の平均が、
275ng/dLより低く、
性欲低下や体力や意欲の低下など、
男性更年期を疑わせるような症状のある170名を、
クジ引きで2つのグループに分け、
対象者にも実施者にも分からないように、
一方はテストステロンの外用剤を毎日使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
1年間の治療を行ない、
その前後で冠動脈CTにより、
冠動脈の動脈硬化を石灰化とプラークの容積で評価しています。
使用されている外用剤は、
1%の濃度のテストステロンのゲルで、
1日に5グラムを使用し、
定期的に血液検査を行って、
実薬群ではテストステロン濃度が、
若者の基準値である、
280から873ng/dLになるように調整します。
その結果…
石灰化していないプラークの容積の変化は、
テストステロン使用群で有意に大きくなっていました。
石灰化を含むトータルなプラークの容積も、
同様にテストステロン使用群の方が増加していましたが、
石灰化部分の容積については、
有意な差は生じていませんでした。
1年という短期間なので、
その間の心筋梗塞などの発症には、
両群で差は見られていません。
このように、
若干ではあるものの、
冠動脈の動脈硬化をテストステロンの使用は進める可能性があり、
このリスクは補充療法を行う際には、
常に考慮する必要がありそうです。
同じ紙面にもう1つ掲載されたテストステロン関連の論文では、
認知機能へのテストステロンの効果が検証されていて、
1年の使用においては、
明確な差は認められない、
という結果になっていました。
テストステロン濃度が低値の高齢者への、
その補充療法の有効性とリスクについては、
今回の一連のデータの解析などを踏まえて、
より的確な指針が作成されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
男性ホルモンのテストステロンを、
男性更年期を思わせる症状のある高齢男性に、
使用した時の心臓血管への影響についての論文です。
昨日は貧血への効果についての論文をご紹介しましたが、
それと一連のもので、
同じ集団に対して、
全部で7種類の介入試験を行っているもののようです。
そのそれぞれが別個の論文として発表されています。
男性ホルモンであるテストステロンと、
心筋梗塞などの心血管疾患との関連については、
相反する研究結果があって、
まだ一定の結論に至っていません。
テストステロンが低値であると、
メタボや心血管疾患の予後が悪化する、
という観察研究のデータがあります。
これからすると、テストステロンが低値の高齢者に対しては、
その補充を行うことで心血管疾患の予後改善に結び付く、
という可能性が想定されます。
しかし、実際に施行されたテストステロン補充療法の臨床試験においては、
有効性が示されなかった、と言うものが多く、
中には心血管疾患のリスクが増加した、
というものもあります。
しかし、それではテストステロンが低値の高齢者に、
補充療法を行うことでどのような心臓への悪影響があるのか、
というような具体的な点については、
殆ど明らかにはなっていません。
そこで今回の研究では、
アメリカの9か所の専門施設において、
年齢が65歳以上の男性で、
朝2回採血した血液のテストステロン値の平均が、
275ng/dLより低く、
性欲低下や体力や意欲の低下など、
男性更年期を疑わせるような症状のある170名を、
クジ引きで2つのグループに分け、
対象者にも実施者にも分からないように、
一方はテストステロンの外用剤を毎日使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
1年間の治療を行ない、
その前後で冠動脈CTにより、
冠動脈の動脈硬化を石灰化とプラークの容積で評価しています。
使用されている外用剤は、
1%の濃度のテストステロンのゲルで、
1日に5グラムを使用し、
定期的に血液検査を行って、
実薬群ではテストステロン濃度が、
若者の基準値である、
280から873ng/dLになるように調整します。
その結果…
石灰化していないプラークの容積の変化は、
テストステロン使用群で有意に大きくなっていました。
石灰化を含むトータルなプラークの容積も、
同様にテストステロン使用群の方が増加していましたが、
石灰化部分の容積については、
有意な差は生じていませんでした。
1年という短期間なので、
その間の心筋梗塞などの発症には、
両群で差は見られていません。
このように、
若干ではあるものの、
冠動脈の動脈硬化をテストステロンの使用は進める可能性があり、
このリスクは補充療法を行う際には、
常に考慮する必要がありそうです。
同じ紙面にもう1つ掲載されたテストステロン関連の論文では、
認知機能へのテストステロンの効果が検証されていて、
1年の使用においては、
明確な差は認められない、
という結果になっていました。
テストステロン濃度が低値の高齢者への、
その補充療法の有効性とリスクについては、
今回の一連のデータの解析などを踏まえて、
より的確な指針が作成されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本