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新型コロナと他疾患の予後比較(2022年から24年アメリカの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
COVID-19と他の感染との重症化比較.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2025年1月27日付で掲載された、
同時期に流行した新型コロナと季節性インフルエンザ、RSウイルス感染症の、
重症度を比較した論文です。

今は所謂風邪症状を呈するウイルス感染症の流行期で、
多くの種類のウイルス感染症が流行しています。

その中には簡単に検査で診断が可能なものもあり、
健康保険の診療では、
検査などの診断は困難なものもあります。

季節性インフルエンザウイルスによる感染症と、
COVID-19ウイルスによる新型コロナ感染症、
小児や高齢者に呼吸器症状を起こすRSウイルス感染症は、
抗原検査である程度診断が可能な、
冬に流行するウイルス感染症の代表です。

それでは、実際に今この3種類のウイルス感染症に罹患した場合、
最も重症化し易いのがどのウイルスでしょうか?

新型コロナウイルス感染症は、
確かに2020年から21年くらいの時期には、
季節性インフルエンザやRSウイルス感染症よりも、
重症化のリスクが高い感染症でした。

ただ、その後徐々に症状は軽症化し、
実際の診療での印象としては、
インフルエンザ感染よりも、
患者さんの症状は軽いことが多いと思います。

これは新型インフルエンザによる感染症など、
他のウイルス感染症でも同じですが、
人間の側に免疫のない状態で、
新種のウイルス感染が流行すると、
感染自体も爆発的に広がりますし、
その重症度も高く、予後も悪いことが通常です。
しかし、それから数年が過ぎて、
ほぼ全員が一度は感染を経験するかワクチンによる免疫を得て、
感染拡大も爆発的なものではなくなると、
流行自体は定期的に起こるものの、
その重症度は軽いものとなることが多いのです。

今回の研究はアメリカにおいて、
退役軍人の医療保険のデータを活用することで、
2022年の秋から2023年の春のシーズンと、
2023年の秋から2024年の春のシーズンの、
2つの時期に流行した、
新型コロナウイルス感染症、季節性インフルエンザ感染症、
RSウイルス感染症の、
3種類の感染罹患者の重症度の比較を行っています。

その結果は以下のようになっています。

まず2022年から2023年のシーズンでは、
3種類のウイルス感染の罹患者は68581名が同定されていて、
内訳は9.1%の6239名がRSウイルス感染症、
24.7%の16947名が季節性インフルエンザ感染症、
66.2%の45395名が新型コロナウイルス感染症でした。
2023年から2024年のシーズでは、
全体で72939名の患者が同定されていて、
13.4%の9748名がRSウイルス感染症、
26.4%の19242名が季節性インフルエンザ感染症、
60.3%の43949名が新型コロナウイルス感染症でした。

対象者の性質上、
年齢の中央値は66歳で、男性が87.0%でした。

重症化の指標として、
30日以内の入院のリスクを比較してみると、
2023年から24年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症では16.2%、
季節性インフルエンザ感染症では16.3%とほぼ同一であった一方、
RSウイルス感染症は14.3%と入院リスクは低い傾向が認められました。

30日以内の死亡リスクの比較では、
2022年から23年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が1.0%、
季節性インフルエンザが0.7%、RSウイルス感染症が0.7%と、
その差は僅かではあるものの、
新型コロナウイルス感染症で生命予後が悪い傾向があり、
2023から2024年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が0.9%、
季節性インフルエンザが0.7%、RSウイルス感染症が0.7%と、
これも微妙ですが、
新型コロナウイルス感染症がより軽症化していることが示唆されました。

ただ、180日以内の死亡リスクを指標とすると、
2022年から23年のシーズンでは、
新型コロナウイルス感染症が3.1%、
季節性インフルエンザが2.1%、RSウイルス感染症が2.1%と、
こちらもその差は僅かではあるものの、
新型コロナウイルス感染症で生命予後が悪い傾向があり、
2023から2024年のシーズンでも、
新型コロナウイルス感染症が2.9%、
季節性インフルエンザが2.3%、RSウイルス感染症が2.1%と、
その傾向は変わっておらず、
より長期の生命予後では、
他の2種の感染症と比較して、
新型コロナウイルス感染症の生命予後が悪いことが、
明確になっている傾向は認められました。

このように、
トータルには軽症化をしているものの、
冬に流行する風邪症候群のウイルスの中で、
生命予後において最も注意が必要であるのは、
2023から24年の時期においても、
新型コロナウイルス感染症であることは間違いがなく、
その診断や治療方針について判断する上で、
こうした検証が定期的に行われることは、
非常に重要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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