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PTSDの新しい薬物治療の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
産業医活動などで都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
PTSDの新しい治療.jpg
JAMA Psychiatry誌に2024年12月18日付で掲載された、
PTSDの新しい薬物治療の有効性についての論文です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)というのは、
命に関わるような深刻なストレスを受けた後で、
それに伴って生じる精神症状のことです。

その特徴は、
侵入症状:ストレス時の体験がフラッシュバックされる
回避症状:ストレスに関わるものを遠ざけようとする
認知と気分の陰性変化:人生に過剰に否定的になり、気分が沈む
過覚醒症状:常に緊張し過敏になる
の4つとされています。

PTSDの治療は認知行動療法などの心理療法と共に、
抗うつ剤の一種であるSSRIによる薬物療法が有効とされています。

しかし、その薬物療法の有効性はあまり高いものではなく、
アメリカにおいてはセルトラリンとパロキセチンの、
2種類のSSRIがPTSDの治療に認可され使用されていますが、
メタ解析の論文によると、
42%の患者さんでは薬物治療に反応が見られなかった、
と報告されています。
特に過覚醒症状への有効性は低いようです。

最近抗精神病薬の一種であるブレクスピプラゾール(レキサルティ)に、
PTSDへの有効性があることが、
臨床試験において報告されています。

そこで、今回の第3相臨床試験では、
このブレクスピプラゾールとセルトラリンとを、
PTSDに対して併用した場合の有効性と安全性とが検証されています。

アメリカの86か所の専門医療機関において、
PTSDの患者さんトータル416例を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方はブレクスピプラゾール(1日2から3㎎)と、
セルトラリン(1日150㎎)を併用し、
もう一方は同量のセルトラリンに偽薬を併用して、
10週間の経過観察を行っています。

その結果、
セルトラリン単独群に対してブレクスピプラゾール併用群では、
PTSDの症状の有意な改善が認められ、
有害事象の増加も認められませんでした。
トータルな症状への有効率は、
セルトラリン単独群が48.2%に対して、
ブレクスピプラゾール併用群では68.5%でした。

このように、
今回の臨床試験においては、
2種類の薬剤の併用により、
PTSDへの治療効果が高まることが確認されていて、
今後その長期の有効性や安全性についても、
検証の進むことを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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