コレステロール降下剤の有効性比較(2024年英中の疫学データ) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Annals of Internal Medicine誌に2024年10月29日付で掲載された、
臨床的に広く使用されているコレステロール降下薬の、
代表的な薬剤2種類を実臨床データで比較した論文です。
スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
強力なコレステロール降下作用と共に、
抗炎症作用なども併せ持ち、
今では動脈硬化の予防薬的な位置づけとして、
幅広く使用されている薬です。
その有効性は特に狭心症や心筋梗塞などの、
心臓の血管の病気を持っている人の、
再発予防や予後の改善において最も認められています。
スタチンには多くの種類があり、
基本的な性質は同じですが、
個々の薬剤でその強さや副作用、有害事象には差がある、
という見解もあります。
そこで今回の研究では、
イギリスのUKバイオバンク、
中国のChina Renal Data System(CRDS)という、
英中を代表する大規模な疫学データを活用して、
代表的なスタチンである、
アトルバスタチン(商品名リピトールなど)と、
ロスバスタチン(商品名クレストールなど)の2種類の薬剤を、
実臨床で患者さんに使用した際の、
その予防効果と安全性を比較検証しています。
アトルバスタチンは脂溶性、
ロスバスタチンは親水性のスタチンで、
両者とも世界的に広く使用されているので、
この2剤を比較することは意義のあることなのです。
日本ではこの2種のスタチン以外に、
国産のピタバスタチン(リバロ)が比較的よく使用されていますが、
海外のスタチン関連の今回のような論文での引用はあまりなく、
今回の論文でも全く言及はされていません。
これは海外での使用頻度の低さによるものと思われます。
2023年のBritish Medical Journal誌に、
韓国における同様の疫学データが発表されていて、
それは虚血性心疾患に対して、
この2種類のスタチンを使用した4400名のデータを解析したものですが、
結論としては両者の臨床的有効性には明確な差はなく、
LDLコレステロールの降下率については、
ロスバスタチンがやや優れている一方で、
その有害事象として指摘されることの多い、
新規糖尿病の発症リスクについても、
ロスバスタチンがやや多い、
という結果になっていました。
https://www.bmj.com/content/383/bmj-2023-075837
今回はどうであったのでしょうか?
対象は心血管疾患予防のために、
どちらかのスタチンを使用した、
英中でトータル285680名の患者です。
メインの解析事項である6年間の生命予後については、
総死亡リスクが、英中いずれのデータにおいても、
アトルバスタチン使用群に対して、
ロスバスタチン使用群が有意に低くなっていました。
ただ、その差は英国データで-1.38%(95%CI:-2.50~-0.21)、
中国データで-1.03%(95%CI:-1.44~0.46)、
リスクの差は軽微なものでした。
心血管疾患リスクについても、
ロスバスタチン群でやや低くなっていました。
その一方で、新規糖尿病発症リスクについては、
アトルバスタチン使用群と比較して、
ロスバスタチン群がやや高くなっていました。
今回のデータは昨年の韓国データともほぼ一致するもので、
人種差や地域差などを超えて、
今回の2種の薬剤の差は事実と考えて良いようです。
つまり、中等量以上の使用
(概ねアトルバスタチンで1日20㎎、
ロスバスタチンで1日10㎎以上)
において、
スタチン治療の有効性はロスバスタチンがやや優り、
糖尿病などの有害事象についても、
ロスバスタチンがやや強い、
という違いです。
今後もスタチン治療は、
この2種類の薬剤を基本として考えるのが、
現状は妥当と考えられ、
患者さんのリスクなどに勘案して、
どちらを選ぶのかを個別に考慮するのが、
適切な方針と言って良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Annals of Internal Medicine誌に2024年10月29日付で掲載された、
臨床的に広く使用されているコレステロール降下薬の、
代表的な薬剤2種類を実臨床データで比較した論文です。
スタチンはコレステロール合成酵素の阻害剤ですが、
強力なコレステロール降下作用と共に、
抗炎症作用なども併せ持ち、
今では動脈硬化の予防薬的な位置づけとして、
幅広く使用されている薬です。
その有効性は特に狭心症や心筋梗塞などの、
心臓の血管の病気を持っている人の、
再発予防や予後の改善において最も認められています。
スタチンには多くの種類があり、
基本的な性質は同じですが、
個々の薬剤でその強さや副作用、有害事象には差がある、
という見解もあります。
そこで今回の研究では、
イギリスのUKバイオバンク、
中国のChina Renal Data System(CRDS)という、
英中を代表する大規模な疫学データを活用して、
代表的なスタチンである、
アトルバスタチン(商品名リピトールなど)と、
ロスバスタチン(商品名クレストールなど)の2種類の薬剤を、
実臨床で患者さんに使用した際の、
その予防効果と安全性を比較検証しています。
アトルバスタチンは脂溶性、
ロスバスタチンは親水性のスタチンで、
両者とも世界的に広く使用されているので、
この2剤を比較することは意義のあることなのです。
日本ではこの2種のスタチン以外に、
国産のピタバスタチン(リバロ)が比較的よく使用されていますが、
海外のスタチン関連の今回のような論文での引用はあまりなく、
今回の論文でも全く言及はされていません。
これは海外での使用頻度の低さによるものと思われます。
2023年のBritish Medical Journal誌に、
韓国における同様の疫学データが発表されていて、
それは虚血性心疾患に対して、
この2種類のスタチンを使用した4400名のデータを解析したものですが、
結論としては両者の臨床的有効性には明確な差はなく、
LDLコレステロールの降下率については、
ロスバスタチンがやや優れている一方で、
その有害事象として指摘されることの多い、
新規糖尿病の発症リスクについても、
ロスバスタチンがやや多い、
という結果になっていました。
https://www.bmj.com/content/383/bmj-2023-075837
今回はどうであったのでしょうか?
対象は心血管疾患予防のために、
どちらかのスタチンを使用した、
英中でトータル285680名の患者です。
メインの解析事項である6年間の生命予後については、
総死亡リスクが、英中いずれのデータにおいても、
アトルバスタチン使用群に対して、
ロスバスタチン使用群が有意に低くなっていました。
ただ、その差は英国データで-1.38%(95%CI:-2.50~-0.21)、
中国データで-1.03%(95%CI:-1.44~0.46)、
リスクの差は軽微なものでした。
心血管疾患リスクについても、
ロスバスタチン群でやや低くなっていました。
その一方で、新規糖尿病発症リスクについては、
アトルバスタチン使用群と比較して、
ロスバスタチン群がやや高くなっていました。
今回のデータは昨年の韓国データともほぼ一致するもので、
人種差や地域差などを超えて、
今回の2種の薬剤の差は事実と考えて良いようです。
つまり、中等量以上の使用
(概ねアトルバスタチンで1日20㎎、
ロスバスタチンで1日10㎎以上)
において、
スタチン治療の有効性はロスバスタチンがやや優り、
糖尿病などの有害事象についても、
ロスバスタチンがやや強い、
という違いです。
今後もスタチン治療は、
この2種類の薬剤を基本として考えるのが、
現状は妥当と考えられ、
患者さんのリスクなどに勘案して、
どちらを選ぶのかを個別に考慮するのが、
適切な方針と言って良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-11-11 08:06
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