ウコン抽出物による急性肝障害 [科学検証]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2023年のthe American Journal of Medicine誌に掲載された、
ウコン(ターメリック)抽出物の、
肝障害リスクについての論文です。
ウコン(ターメリック)はショウガの仲間の多年草で、
その根が香辛料として、
カレーなどに広く使用されています。
その黄色い色素の成分であるポリフェノールのクルクミンは、
抗炎症作用や抗酸化作用などが報告されています。
特にデータが多いのは抗炎症作用についてで、
膝の関節炎に効果があったとする報告が、
複数論文化されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32926799/
日本ではウコンは二日酔いに効果があるとして、
栄養ドリンクなどで広く使用されています。
これも抗炎症作用が背景にあると想定されますが、
あまり科学的な検証が行われている訳ではないようです。
ただ、ウコンが二日酔いに効くという宣伝から、
ウコン自体が肝臓に良い成分であるかのように、
一般に受け止められるようになっていることは事実で、
この点は問題が大きいように思います。
実際にはその点はむしろ逆で、
ウコンは健康食品やサプリメントの中では、
薬剤性肝障害を起こす可能性の高い成分なのです。
たとえば、2005年の「肝臓」誌に掲載された、
「民間薬および健康食品による薬物性肝障害の調査」によると、
医療機関から集められた、
健康食品などによる薬剤性肝障害の事例89例のうち、
最も多かったのはウコンで、
事例は29件、全体の24.9%という高率でした。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/46/3/46_3_142/_article/-char/ja/
ウコンの摂取は圧倒的にアジアで多いのですが、
アメリカにおいてもそうした事例は報告されており、
そのうちの10例をまとめているのが、
今回ご紹介した論文です。
アメリカの事例は、
関節炎の民間療法としてウコンが使用されて発症した事例が多く、
そのため患者の多くは中年以降の女性です。
肝細胞の好酸球主体の炎症が、
サプリメント内服後1から4か月程度の期間をおいて、
発症していることが多いようです。
その多くはウコンの摂取中止により回復していますが、
劇症化して死亡に至った事例も報告されています。
ウコンは非常に吸収が悪く、
そのため比較的大量に摂取しても、
身体に大きな影響は与えない、
と想定されていたのですが、
ブラックペッパーに含まれるピぺリンが、
ウコンの吸収を数十倍高めることが分かってから、
ブラックペッパーを添加した製品が流通し、
それがアメリカでの被害の拡大に結び付いているのではないかと、
上記文献では考察されています。
いずれにしても、
肝機能が悪いような人が、
お酒を飲んだ後でウコンを摂取する、
というようなケースは、
実際には急性肝障害のリスクを高める行為なので、
ウコンをサプリメントやドリンク剤で摂ることは、
肝障害のある人にとっては禁忌であると、
そのくらいに考えておいた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業などの予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2023年のthe American Journal of Medicine誌に掲載された、
ウコン(ターメリック)抽出物の、
肝障害リスクについての論文です。
ウコン(ターメリック)はショウガの仲間の多年草で、
その根が香辛料として、
カレーなどに広く使用されています。
その黄色い色素の成分であるポリフェノールのクルクミンは、
抗炎症作用や抗酸化作用などが報告されています。
特にデータが多いのは抗炎症作用についてで、
膝の関節炎に効果があったとする報告が、
複数論文化されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32926799/
日本ではウコンは二日酔いに効果があるとして、
栄養ドリンクなどで広く使用されています。
これも抗炎症作用が背景にあると想定されますが、
あまり科学的な検証が行われている訳ではないようです。
ただ、ウコンが二日酔いに効くという宣伝から、
ウコン自体が肝臓に良い成分であるかのように、
一般に受け止められるようになっていることは事実で、
この点は問題が大きいように思います。
実際にはその点はむしろ逆で、
ウコンは健康食品やサプリメントの中では、
薬剤性肝障害を起こす可能性の高い成分なのです。
たとえば、2005年の「肝臓」誌に掲載された、
「民間薬および健康食品による薬物性肝障害の調査」によると、
医療機関から集められた、
健康食品などによる薬剤性肝障害の事例89例のうち、
最も多かったのはウコンで、
事例は29件、全体の24.9%という高率でした。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/46/3/46_3_142/_article/-char/ja/
ウコンの摂取は圧倒的にアジアで多いのですが、
アメリカにおいてもそうした事例は報告されており、
そのうちの10例をまとめているのが、
今回ご紹介した論文です。
アメリカの事例は、
関節炎の民間療法としてウコンが使用されて発症した事例が多く、
そのため患者の多くは中年以降の女性です。
肝細胞の好酸球主体の炎症が、
サプリメント内服後1から4か月程度の期間をおいて、
発症していることが多いようです。
その多くはウコンの摂取中止により回復していますが、
劇症化して死亡に至った事例も報告されています。
ウコンは非常に吸収が悪く、
そのため比較的大量に摂取しても、
身体に大きな影響は与えない、
と想定されていたのですが、
ブラックペッパーに含まれるピぺリンが、
ウコンの吸収を数十倍高めることが分かってから、
ブラックペッパーを添加した製品が流通し、
それがアメリカでの被害の拡大に結び付いているのではないかと、
上記文献では考察されています。
いずれにしても、
肝機能が悪いような人が、
お酒を飲んだ後でウコンを摂取する、
というようなケースは、
実際には急性肝障害のリスクを高める行為なので、
ウコンをサプリメントやドリンク剤で摂ることは、
肝障害のある人にとっては禁忌であると、
そのくらいに考えておいた方が良いようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2024-10-30 07:17
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